ユ︰Endless Field Online
まったり不定期予定
「雄夜! 雄夜! このゲーム一緒にやりたい!」
専業主夫の俺が夕飯を作っているところに、仕事帰りの妻、真紀奈がスマホ片手に飛び込んで来る。
ちょっと待ってと一声かけて、買い足してもらったシチューのルゥを鍋に入れて蓋をした。今日のメニューはキャベツと鶏肉のクリーム煮モドキ。
一段落したところで差し出されるスマホを手に取ると、そこには最近広告でチラホラ見かけるVRMMO、『Endless Field Online』の公式ページが表示されていた。
「これやりたいの?」
「うん」
「MMOかぁ……」
かわいい妻の頼みは基本的にききたいが、人嫌いな部類に入る俺はMMOが得意じゃない。……真紀奈もそれは知ってるはずなんだけどな?
と、思っていたら「大丈夫!」と真紀奈はゲームの説明を始めた。
『Endless Field Online』
βテスター間では通称エフォと呼ばれているそのゲームは、自動で無限生成されるオープンワールドが売りの最新VRMMOだ。
そんな仕様、ゲームが重くなって仕方ないと思うのだが、最近業界でブレイクスルーがあったとかで快適なプレイが可能になったらしい。
自動に無限生成されるとはいえ、ゲームマスターAIの管理によってダンジョンやイベントも生成されるというから、やる事が無い未開の地が延々と増えるというわけでもないそうだ。
ゲームのストーリーとしては、『とあるファンタジー世界の王国が、たまたま繋がった広大な異世界へ入植を開始した』というもの。
広大なフィールドに、最初は街がひとつしかない状態で始まるらしい。
そしてこのゲームの特徴のひとつ。
「戦闘メインでやりたい人は最初の便利な街に拠点有りで開始なんだけど。開拓メインでやりたい人は、街からすごい遠い所に家を建てるところから始められるんだって」
このゲーム、広告にも頻繁に出てくる煽り文句が『無限生成されるオープンワールドファンタジーで、果てしない開拓を始めよう!』なのだが。
もう一つ、同じ広告でもたまーに出てくる裏のキャッチコピーがある。
それは『お前がNPCになるんだよ!』だ。
街をスタートにする戦闘メインのプレイヤーは、周囲の敵を倒しながら活動範囲を広げていく事になるわけだが。最初の街が唯一の街だと明言されているのだから、先へ進もうと次の街なんてあるわけがない。
そこで、遠方を開拓している他のプレイヤーが生きてくる。
開拓を進めてNPC用の家を作ると、そこにNPCが住み着くのだ。そうして発展させて、村や街を育てて行くことができる。
戦闘組は、そういった街が到着地点になるというわけだ。
開拓プレイヤーも最初の街との行き来は可能だから、買い物に困るようなことにはならない。
「つまり、開拓メインで二人でやりたいってことか」
「そうそう」
それならまぁ、いいか。
自拠点に他プレイヤーが立ち入れるかどうかも設定できるみたいだし。
「ならいいよ、やろう。はい、お皿持ってって」
「やったぜ愛してる!」
はしゃいで皿を運ぶ真紀奈の後から、パンを乗せた皿とスプーンを持ってついていく。
……うん、なんだかんだやると決めたら面白そうで楽しみだ。
正式なサービス開始はもう少し後なんだっけ。
後で情報集めないとな。