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追放令嬢とユカイな仲間の開拓史  作者: 琥珀猫
第一章 侯爵令嬢、追放される
5/13

第5話 追放令嬢、掃除にチャレンジ!

 

 スカーレットは納戸らしき部屋にあった箒を握りしめている。


 「確かこれで汚れを掃きだすのよね。」


 侯爵令嬢だったスカーレットはもちろん掃除などしたことはない。

 したことはないが、なに事にも好奇心旺盛なスカーレットは、侯爵家のメイドたちが掃除している様子を何度も観察したことがある。


 「1番状態の良かった部屋は書斎だったから、ひとまずあの部屋の掃除ね。」


 暗くなるまであまり時間がない。

 今夜休める場所の確保が優先だ。


 書斎へ行き改めて中の様子を観察する。天井も床も埃はあるが穴が空いた箇所もなく、この部屋だけ明らかに状態が良い。


 窓を開けてみるとすんなりと開いた。

 

 「お掃除は何度も見たことがあるけれど実際やってみるのは初めてね。私に上手くやれるかしら~、少し緊張しますわ~。」 


  スカーレットは表情を引き締めて、箒を握り直す。


 「汚れは上から下へ落としていくのが掃除の基本だとマーガレットが言っていたわ。」

 

 箒で天井の埃を落としていく。状態が良いとはいえ、長らく放置された埃は積もりに積もっていてどんどん落ちてくるーーーそれはもう、滝のように。


 「きゃあ!なにこれ!………ブホォッ!ゴホゴホッ!ゴホゴホッ!」

  

 這這の体で一旦小屋から離脱する。


 「ゴホゴホ……。息が詰まって死ぬかと思いましたわ。掃除とはこれほどまでに過酷なものだったとは……。メイドの皆さんは日々命懸けで侯爵家を清潔に保ってくださっていたのね。すごいわ皆さん、本当にありがとう。」


 多少の明後日感はあるが、自身の生きてきた環境にスカーレットなりの感謝を感じつつ現実に向き合う。


 「こんなことで死ぬわけにいかないわ。」


 ポシェットへ手を伸ばしスカーフを2枚取り出し、頭と口元に巻く。これでなんとか身を守れるだろう。 

 

 書斎へ戻り掃除を再開させる。

 目に入らないよう気をつけて作業し、時々咳き込みつつもどんどん埃を落としていく。床に溜まったゴミを外へ掃き出す。

 

 「水拭きもしたいわ。」


 小屋の中から水が汲めそうなものを探す。朽ちた木桶が見つかったが使い物になりそうにない。

 他に何かないか探していくとキッチンから鉄の大鍋が出てきた。所々錆びてはいるが水を汲むにはじゅうぶんそうだ。


 川から水を汲んできて水拭きを始める。

 雑巾がないので代わりになるものをポシェットから探すと新品のタオルが出てきた。

 勿体ないがこれを使おう。

 

 タオルを水に浸す。


 「…………それで、ここからどうすれば……。」


 とりあえずビシャビシャのタオルで床を拭いてみる。床にこびりついた汚れも少しずつ落ちていく。落ちてはいくのだが……


 「水浸しだわ。」


 当たり前だ。


 「これで乾くのを待つのかしら……。いえ、それではいつになるか分からないし、そもそも木が傷んでしまうわね。」


 スカーレットは考える。

 

 幼い頃より皇太子妃候補として厳しい教育を積んできた。教育内容はそれはもう多岐に渡り、14歳の頃にはもう、"学ぶものなし"と言われるほどの才女であったスカーレット。

 その頭脳をフル回転させ、今、そのずぶ濡れの床をどうするべきか考える。


 「乾いたタオルで拭く……でも、また新しく出すのは勿体ないし避けたいわ。それなら……そうだ、このびしょ濡れのタオルを絞ればいいのよ!」


 正解を弾き出したスカーレットは、びしょ濡れのタオルをぐるぐると団子のように丸め両手で挟んで力いっぱい握り潰す。


 そう、お掃除初心者のスカーレットには捻って絞るなんて上級者の技は思い付かない。

 

 いいのだ、絞れれば!


 「よしっ!これで乾拭きしていくわ。」

 

 水を絞ったタオルで手当たり次第に拭いていく。水を含めばまた絞り、何度もそれを繰り返ししっかり拭き終わった頃には、気がつくと外は少し薄暗くなってきていた。


 汚れた水を小屋の外に捨て、鍋とポシェット、汚れたタオルを持って川まで走る。


 鍋に水を汲みタオルを洗っていく。

 汚れたタオルを洗い終えたら、次は自分だ。

 

 掃除で汚れてしまった身体を少しでも清めたい。

 川の水で顔を洗う。

 髪も洗いたいが、夜の肌寒さで風邪を引いては元も子もないのでやめておく。

 

 鍋に水を汲んで小屋で体を拭こうかと思ったが、面倒なのでここで済ませてしまおう。

 

 被っていたスカーフを川で良く洗い、頭と、髪を拭く。着ている服をはだけさせ順々に体を拭き、拭いたそばから新しいタオルで水気をぬぐっていく。

 

 ポシェットに入っていたカジュアルなワンピースに着替えるとずいぶんさっぱりとした。


 脱いだ乗馬服を一旦ポシェットへしまい、洗った鍋に水を汲んで小屋まで戻る。

 すっかり日が沈み、辺りは暗くなっていた。

 

 部屋に戻ってランプを灯し書斎の椅子に座り一息つく。水とパン、川を探している途中で見つけた果物で夕食にする。


 お腹を満たしながら明日の事を考える。


 日が昇ったら出来るだけ早く作業に取りかかりたい。天気が良ければ髪もしっかり洗いたいし、乗馬服も洗濯したい。屋根の状態も確認しなければならないし、そう!ポシェットの中身も確認したい。

 とにかく、やることがいっぱいなのだ。


 「今日も良く動いたわ。頑張った、私。明日からもやりたいことが山積みだし早く寝ましょう。」


 毛布にくるまり床に寝転ぶ。目を閉じるとあっという間に眠りに落ちた。


 


 


 


 


 


 

 

 

 

 


 

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