第4話 見つけた!これ、魔女の家??
ぽっかりと開けた場所にひっそりと建つ小さな小屋。
胸の位置まで生い茂る雑草が、放置されてからの月日の長さを物語っている。
「見つけた…。きっとこの小屋ね。」
これでもか!と伸びに伸びきった雑草をわっさわっさとかき分け進み、小屋の前に辿り着く。
木造の山小屋は、雨風にさらされたまま、なんの手入れもなく放置され続けたのだろう。木は朽ち、所々崩れ落ちて穴が空いている。窓硝子もヒビが入っていたり、曇っていて中の様子が窺えないほどだ。
此処からは見えないが、たぶん屋根も酷いことになっているのだろう。
中に入ろうとドアを引く。
ガチャガチャ。
「……開かない。」
訪問者を拒絶するかのようにビクともしないドア。
もう少し力を入れて引いてみる。
ガチャガチャガチャガチャ。
「………微動だにしない。」
更に力を入れて引く。
ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ…バキッッ!!!!!
「………………。」
スカーレットの手には根元から捥げたドアノブが握りしめられている。
「………やだ、想像していた以上のくたびれ具合。仕方ないわ、力業で開けるしかなさそうね。それはいいとして、無理矢理こじ開けて小屋ごと倒壊する、なんて事ないでしょうね。」
スカーレットは目を閉じ大きく息を吸う。
息を止めカッと目を見開いた次の瞬間、足蹴りでドアを蹴破った。
バキバキバキバキッッッ!!!
「あら~、強く蹴りすぎましたわ~。」
もともと酷く劣化していたわけだが、スカーレットの蹴りでドアフレームのみを残しそれ以外は無惨にも粉々に砕け散ってしまった。
「ホホホ……倒壊しなくて良かったわ~。……コホン。さあ、気を取り直していざ参りましょう。」
薄暗い小屋の中へ足を踏み入れる。
ミシッ……ミシッ……
1歩歩くごとに床が軋む。
入って左側に暖炉とキッチン、右側には棚やチェスト、部屋の真ん中にはダイニングテーブルが置いてあり、ここは居間だったようだ。
ざっと小屋の全貌を把握するべく居間を抜け更に奥へ進むと、左右に1部屋ずつ個室がある。
まず右側の部屋を開ける。建て付けは悪いが今回は蹴破らずに開いた。
ベッドとちょっとしたチェストが置いてあるだけのシンプルな寝室だ。
次は左の部屋。こちらもすんなりとドアは開いた。机に本棚……ここは書斎のようだ。
本棚に並んでいる本は埃を被っている。どんな本があるのか興味津々だが、今はひとまず我慢だ。
部屋を出て奥に目をやるともう一部屋あるようだ。
「ここは、納戸かしら?」
なにもない棚と、箒やはたき、斧なんかが置いてある部屋だった。
「これで全部ね。外から見たときはもっと狭いかと思ったけれど、中はそこまで狭く感じないわ。まぁ、劣化はかなりのものだけれども。」
見上げると何ヵ所か穴が空いていて空が見えている。床も踏めば穴が空きそうな箇所が何ヵ所も見てとれる。
とは言え、物に囲まれているというのは安心感がある。今日からとりあえずはこの小屋を拠点としよう。
「あと2時間ほどで日が沈みそうね。それまでに少しでも部屋のなかを整えましょう。」
スカーレットはいそいそと動き出す。
アキレア大伯父様、あの日話してくださった小屋を見つけましたわ。
まさかこんな形で見つけることになるなんて、あの頃は夢にも思っていませんでしたけど。
ただここは、残念ながら魔女の家ではなさそうなのです。
何故なら、釜が、あの泥のような何が入っているのか分からない謎の液体をぐるぐるかき混ぜるための大きな釜が、この小屋にはないのですもの。