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追放令嬢とユカイな仲間の開拓史  作者: 琥珀猫
第一章 侯爵令嬢、追放される
3/13

第3話 探せ!魔女の家!


 森に置き去りにされてから約半日。途中、1時間ほど休憩したがそれ以外はほとんど歩きづめでさすがに疲れてきた。

 

 「もう暗くなってきたし、これ以上進むのは危険ね。今日はこの辺で休みましょう。」


 辺りを見渡し、一際大きな樹の根元に陣取りポシェットを漁る。


 「まずは灯りはあるかしら…良かった!ランプがあったわ。それからお水と、お腹が空いたし食料は……っと、あっ!ドライフルーツ!それにフロランタン……この袋は…!パンが入ってる!」


 ランプで周りが照らされると心細さが和らいだ。

 水で喉を潤しドライフルーツを囓る。フルーツの爽やかな香りに凝縮された濃厚な甘味が疲れた身体に染み渡る。


 ホントなら焚き火でもした方が良いのだろう。野生の動物などは火を怖がると聞いたし、初夏であるこの時期でも夜はまだ肌寒い。


 一息つきつつぼんやりとそんなことを考えていると猛烈な眠気が襲ってくる。

 ポシェットに手を入れ、有るかは分からない毛布を探してみる。


 「……あるじゃない、毛布。とりあえず今日はもう寝ましょう。」


 心優しきあの2人の笑顔を思い出しつつ毛布にくるまる。暖かい。


 スカーレットは目を閉じ精神を集中して気を発する。

 (何者もこの安眠を妨げないで。)


 近くで鳴いていたフクロウが飛び立つ羽音を聞いたのを最後に、スカーレットは意識を手放した。


 

 

 朝日の眩しさに目が覚める。毛布のお陰でたいした寒さも感じず思ったより熟睡できた。


 「うーん、良く寝たわ~。でも、少し身体が痛いわね。」


 ゆっくり身体を起こし伸びをする。

 (スプリングの効いたベットで寝たわけじゃないのだから当たり前ね…。)


 ……パシッ!!


 スカーレットは両頬を叩き気合いを入れた。


 「まだ始まったばかりよ。泣き言を言う暇があるなら今は前に進みましょう。」


 水とパンで小腹を満たし、出発の準備を整える。


 スカーレットは考えていた。

 魔女の家を探すと言ってもこんなだだっ広い森を闇雲に歩き回って見つかるとは考えにくい。

 何か目印になるようなものを見つけなくては。

 この森のなかで生きていくのに必要なものを考える。


 やはり、それは、水だろう。


 飲料としても、生活用水としても、人が生きる上で水は外せない。

 魔女ならば魔法でどうにかなるかもしれないが、生きるための水全てを魔法で賄うのは非効率だし、そもそも魔女が住んでいたとは限らない。


 「水源を探しましょう。まずはそこからよ。」


 スカーレットは目を閉じ五感を研ぎ澄ます。聴覚に集中して辺りの音を聞く。

 風の音…木々の擦れる音…鳥の羽音…動物の足音……もっと小さい音を探していく。木の実の落ちる音……動物の呼吸………虫の羽音………石の転がり落ちる音…………!!!


 「聞こえた!水の流れる音。川があるのかもしれない。あっちの方ね。」


 微かに聞こえたせせらぎの音を頼りに、聞こえた方向へ歩き出す。

 時々立ち止まっては方角を確かめて、また歩く。

 途中で食べられそうな果実や虫除けに使える薬草などを採取しつつ歩き続けると、少しずつ、よりはっきり聞こえだす。


 「間違いなく川の流れる音だわ。もう、すぐそこね。」


 そこから30分ほど歩くと前方に少し開けた空間が見えてくる。

 思わず早足で歩き出した。


 「あった!!川だわーー!!」


 そこには幅6メートルほどの川が流れていた。水は澄んでいて魚が泳いでいるのが見える。なんとも気持ち良さそうだ。


 「これで水は確保できたわね。そしてまずは顔を洗うわ!」


 皮袋の水は無駄に出来なくて、朝、洗顔を諦めたのだ。

 嬉しくて、ざぶんざぶんと思う存分洗う。冷たい水が歩きづめで火照った顔に心地よい。


 「ぷはー!気持ちいい!生き返るわ!」


 本当は身体も流したいところだが今はひとまず我慢する。


 「まずは此処からどの方向に向かうかね。」


 アキレア大伯父様が小屋を見たのは何十年も前の事だから、川沿いに生活の痕跡が残っているとは考えにくい。

 でも、川の水を頼りに生活していたのなら、川からそう離れていないはずだ。

 

 そして、大伯父様は2日程歩いた辺りと言っていた。

 「確か10人ほどの部隊で移動したと仰ってたわねぇ。」

 大人数になればなるほど移動速度も落ちる。 

 大伯父様単身だったならもっと早くその小屋にたどり着いているはず。

 おそらく1日程度といったところか。


 森の入り口を背にして右奥方向が川の上流で、左手方向に流れていっているから……。


 ん??

 これはもしかして、この近くにあるんじゃないかしら。

 上流方向だと更に奥へ進むことになるから時間的にそっちではない。


 それならこっちと左方向へ進み、時々足を止めては視覚に集中して森の中を観察する。

 何度かそれを繰り返した時、木々の間に少し開けた空間があるのが見えた。


 逸る気持ちを押さえてそっちへ行ってみる。

 近付けば近付くほど、その一角だけ周りと一線を画しているのがわかる。

 その辺りだけ視界を遮るものがないのだ。


 「ここは……ホントにあったわ…。」


 ぽっかりと穴が空いたように開けているが、長らく放置されているのだろう雑草やらが、ぼうぼうと生い茂っている。


 そして、その中にひっそりと小さな小屋が建っていた。


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