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ツルカ・ラーデンの優雅なる学園生活。

 時は現代へ。卒業まで残り2年までとなっていた。


 ツルカ・ラーデンの朝は早い。小鳥のさえずりで目を覚まし、ゆったりと身支度を整える。レースのカーテンが風に揺れる。爽やかな新緑の季節である。そよ風の中、椅子に腰かけて読書をたしなむ。

 そろそろ朝食の時間だ、食堂に向かうとした。今日の気分はクランベリー入りのパウンドケーキだ。専用バリスタの特製コーヒーと共に友人と談笑したあと、本校舎に向かう準備を始める。

 予習復習も問題ない。さあ、今日も学び舎で勉学に勤しむとしよう。

 そんな風に優雅な日々を過ごしていて―。


―嘘である。

 いや、一概に嘘とはいえない。ローゼ魔法学院に通う生徒なら、本来はこうあるべきなのである。だがツルカはどうだろうか。実際はこうであった。


「むにゃ……マンドラゴラが一体、二体。おまけに三体でコンボ。……うう」

 ツルカはどうかというと。

「ううー……」

 机に書物を並べたまま突っ伏して寝ていた。彼女は悪夢にうなされていた。昨日の授業のトラウマに苛まれていたのだ。

「はっ!」

 嫌なところで目を覚ました。寝ぼけた状態で周囲を見渡す。一般の学院生に与えられた簡素な一人部屋だ。

 トイレとバスルームが備え付けられているものの。あとはベッド、テーブル、クローゼット、鏡、そして簡易キッチンと冷蔵庫にあたるもの。暮らしに困らない程度はあった。部屋の壁紙も前の学生が変えたものからいじっていない。窓辺にある植物が彩を添えるかと思いきや、それは食用である。

「あー……。また寝ちゃった」

 寝間着に着替えるまでは記憶にあったが、それから課題を片付けている間に。いつの間におちていたようだ。

 眠気覚ましに窓を開ける。強風にさらされ、髪がさらに乱れた。打ちひしがれながらも、ツルカは身支度を始める。

「……ふわぁ」

 歯磨きをしながら、寝ぼけた自分の顔をみる。

 肩くらいで切り揃えられた、色素の薄い茶色の髪は生まれつきだった。今は寝ぼけ眼だが母親譲りの瞳も大きく、顔の造形自体は悪くはない。笑えば愛くるしくなくもない

 だがいかんせん垢抜けない。小柄なのもあり、よく人に埋もれていた。同じ小柄な女生徒でもモテる子はもちろんいるが、その事実に彼女は目を背け続けている。

 ツルカは軽く朝風呂に入る。ようやく目が覚めたようだ。

 思ったより時間が押していた。彼女は慌てて寮の食堂に向かう。寮の廊下を行き交う生徒の姿はまばらだ。大半の生徒が準備を終え、朝の各々の活動に精を出しているころだ。だが空いているならそれはそれでよかった。

 数少ない友人達にはすでに置いていかれていた。めげずにツルカは隅の方に着席する。

 余り物のパンを口にする。そして特製コーヒーをミルクと砂糖たっぷりでいただく。ほっと一息をつく。この至福のひと時だけが彼女に現実を忘れさせてくれた。

 自室に一旦戻り、課題の論文を忘れずに鞄にしまう。寝落ちしてしまったため、未完成の代物だ。別の授業の合間を縫って完成させることにした。本末転倒であった。

 指定のシャツとスカートをはく。そして黒地のローブを羽織る。一般生に与えられるそれは胸元に薔薇の刺繍がワンポイントとしてあった。

 部屋を出る前にもう一度ツルカは鏡をのぞく。そしていつものように自身の左耳にそっと触れる。姿は見えない、けれどそれは確かに存在しているのだ。

「よーし!」

 だからこそ彼女は頑張れる。そして気合を入れて笑顔を作る。

「いってきます!」

 さあ、今日が始まる。

お読みくださいましてありがとうございます。

さて、主人公の苗字はラーデンでして。ドイツ語から拝借したのですが、商会という意味らしいです。

それで、ラーデン商会って出てきまして。

昔の自分は何を考えていたのか問い詰めたいです。

一応、海外からの移住者で、そこの国ではラーデンは別の意味とか、そんな感じで考え直してます。


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