飛竜の正体。
ともかく、ラムルが乗り気でないのはわかった。ツルカは本来の目的だけ告げ、それでも断られたら一人で行くことにした。
「目的言ってなかったね。―飛竜ちゃんに会いにいかない?」
「……は?」
だらけた姿勢のラムルが起き上がった。
「あいつ、ここにいんのか。てっきり、城にいるかと思っていた」
「うん、裏山だからね。わかりにくかったかも。カイと一緒にいるよ」
「……そうか」
ラムルは玄関まで歩いていく。行く気になったようだ。
今日は比較的涼しい方だった。快適な温度で散歩をし、裏山に到着した。カイも誰の姿もなかった。いるのは飛竜だけだった。彼はツルカとラムルを翼を広げて歓迎した。
「……良かった、大事にされてんだな」
ラムルは心から安心し、笑顔となった。飛竜も猫の姿を舌で舐めた。そのくすぐったさにラムルはさらに笑っていた。
「くすぐったいっての」
飛竜の名を呼ぶと、嬉しそうに鳴いていた。
「そうだ、ラムル。飛竜ちゃんの名前って、誰が教えてくれたの」
「誰がって、こいつだよ。本人が教えてくれるって」
どうやら飛竜本人がラムルに教えたようだ。それを同胞達に伝えたのもラムルだろう。カイもまた聞きで教わったのかもしれない。
「そっか。―って、ラムルそれ。動物の言葉がわかるみたいだね」
「は?わかるけど?」
ラムルは当然のように言った。ツルカは一拍置いた後、驚いた。
「ええ!?いや、いろんな言語わかってるなって思ってたけど!そんな、動物の言葉までとか」
「俺らだって動物だろ」
「それは、うん。そうだね」
ラムル本人もどうしてかわかってもいない。いや、不思議とも思ったことないようだった。それがラムルの当たり前だった。
「そっか、そうだよね。ラムル、普通に話していたもんね。いいな」
ツルカも飛竜に近づいた。この飛竜のこと好ましく思っていた。話せたらどんなに素敵かと思ってもいた。
「……」
飛竜がじっとツルカを見ていた。ツルカも目を合わせて微笑んだ。こうしてだってコミュニケーションはとれる。ツルカはそれで良いと思っていた。
「―君は俺と話したいの」
「……?」
若干高めの、透明感のある少年の声だった。少なくともラムルの声ではない。ツルカもだ。
「俺はそうだった。ずっと話してみたかったんだ。―なら、こうすれば良かったんだ」
「!?」
飛竜が眩く発光した。あまりの光の強さに、ツルカは思わず目をつぶってしまった。
「……?」
光が収まったので、ツルカは恐る恐る目を開ける。
「……それがお前の正体か」
猫のラムルが構えている。ツルカも現れたその姿を目にした。
銀髪の美しい少年。彼が纏っていたのはガウンだった。ローゼだと黒色だが、彼のは深紅だ。だが、胸元にあるのは。―ローゼの校章だった。
「あなたは、誰なの」
「俺は―」
突然正体を現した謎の少年。ツルカはまだ知らなかった。彼が巻き起こす騒動を―。
お読み頂きまして有難うございました。
一区切りとなります。
まだ夏休みも残っているので、夏休み話は続いていくと思われます。おそらく。
いきなり新学期になっている可能性もなくもないです。
次にお会い出来る日を楽しみにしております。
改めまして有難うございました!