にゃんこちゃんはいつだってねらわれている。
楽しかったイベントの次は、日常が待っていた。七月の間に頑張ったものの、まだ消化はしきれてない課題達がツルカには残されていた。
「はあ、次は何を励みにしよう」
今日は仕事も休みだ。真昼間から課題に取り組んでいた。自室の机でツルカは項垂れていた。
再来年に控えた卒業式。それも本願だが、いかんせん先の話である。
「いやいや、やっぱ卒業式でしょ。充分楽しんだんだから」
もう甘えた事は言わない、ツルカは集中しようとしていた。
「あれ」
窓ガラスを叩くのは茶色い尻尾だ。彼だとツルカは立ち上がり、窓を開けた。
「ちょっと、ラムル!びっくりしたよ」
「びっくりとは何だ。入るぞ」
「うん、わかった」
今日は何てことない平日だ。それはともかく、ツルカは自室に入れることにした。
「お前は課題ばかりだなぁ。俺はな、ようやう勝ち取った休暇を楽しんでいるわけだが」
と、猫が寛いでいた。いつものように煽る。
「ラムル。ようやく勝ち取ったって言ってる時点で、ラムルも同じ穴のムジナだよ」
「くっ、ツルカめ……」
なんの勝負なのか。ラムルは悔しそうにしていた。
「ゆっくりしてってよ。ミルクでも出しておく?」
「まあ、気遣うな。俺はただ、こうして勤しむお前を見学してればいい」
殊勝なことを言っておいて、最終的には煽っていた。どこまでもだ。
「ラムルめ……」
ツルカがこうして懸命に課題に取り組むのを、ラムルは優雅に見ているつもりだ。ミルクを嗜みながら。いや、紅茶かもしれない。ツルカは腹立たしくなってきた。
「よし、休憩しよう。ラムル、お散歩に出かけよう?」
「は?ゆっくりしていいんじゃないのかよ」
「うん、お疲れなのはわかるから。それは帰ってから、いくらでもどうぞ」
「……お散歩って、お前は正気か。ここでか。俺にそれをさせる気か」
「いや、なんでそうなるの。って、ここまで普通に来たんじゃないの?」
寝そべったラムルは、顔だけ向けてきた。そんな彼に言われるのもツルカはモヤモヤした。
「俺は昔からの道筋だ。堂々と正門から入っている。俺だと造作もないからな。ただ……」
ラムルは深刻そうに話していた。体勢はそうではないが。
「……例の侵入口の件だ。あそこは解放された。だけどな、音が鳴るのはそのままだ。……つまりだ。通ったが最後、捕まってしまう。その後の安否は知られていない」
「……!」
ツルカは瞠目した。主にマルグリットが関与していた。マルグリットは可愛がるとは言っていた。彼女は無碍に扱ったりはしないと、ツルカは信じていた。
「って、ラムル。大丈夫だって。多分、マルグリット先輩だし。ちゃんと逃がしたりしてくれてるって」
「お前は、あの女の怖ろしさを知らないから。あの時のもおそらく―」
「ええ……」