表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
161/167

水着を着てみた。

 更衣室ということで、男女分かれることになった。ここまでやってきたのだ。ハイビスカスのヘアアクセは装着済みだ。あとは。

「……やっぱり、際どい気が」

 ツルカは覚悟をして水着を着た。控えめなフリルのビキニだ。決して海での服装としてはおかしくない。それでも、ツルカは恥ずかしかった。

『破廉恥です』

 今になって某模範生の言葉が効いてきた。ツルカは着てきた服に着替えたくなっていた。

「うむ。ツルカ殿、すまなかった。実際着てみるとわからぬものよ。際どいのう」

「……ビゼルさーん?今になって、そういうこというかなぁ?」

 勧めてきたビゼルまでもがそう言っていた。可憐なワンピースを着たビゼルがだ。ワンピース姿の。

「ビゼルさん?水着はどうしたの?」

「ひゅー」

 ビゼルは下手くそな口笛を吹いていた。誤魔化しているつもりだろうか。

「ええい、いうわ。わらわは水着は持ってきておらぬ。安心せい、こちらは防水加工じゃ」

「いや、安心するとかじゃなくて。水着、約束だったよね?」

 話が違っていた。当日、しかも海に到着した時点での判明だ。

「わ、わらわとて、頑張ろうとはしたのじゃ……。勇気を振り絞ろうとしたのじゃ……!それでも、わらわは、わらわは……」

 ビゼルは本気で泣き出しそうだった。頑張っていたのは誠のようでもあった。

「……そうだよね、似合ってるもんね。次こそは楽しみにしてるね」

「うう、ありがとうなのじゃ……」

 ツルカは幼子の手を引くように、更衣室から出た。―出てしまった。

「さあ、待たせてしまっているのじゃ」

「……うん」

 この切り替えの早さだった。ツルカはガチ泣きだと信じるしかなかった。信じたい気分だった。


 更衣室から海岸線に出ていく。売店の下で涼んでいた二人だ。すでに着替え終えていて、待っている状態だった。

「あ、来た来た―」

 彼女達に気付いたニコラスも。

「ニコラスと話していたんだよ。乗り物借りるかって―」

 売店から視線を戻したラムルも。硬直した。水着姿のツルカを見てだった。

「あわわ……」

 ツルカもまた固まってしまった。男子達の服装がまさにそうだった。

 半袖シャツに下だけ水着のラムル。防水パーカーに下は水着のニコラス。水着の定義ではある。ビゼルは違う。ビゼルは水着ではない。ツルカはただ一人、露出の高い姿となっていた。

「ご、ごめん……。そのうち慣れると思うから」

「う、うん……」

 ニコラスはまともに見られない状態だった。余計、ツルカは恥ずかしくなった。

「なに、ツルカ殿よ。おぬしくらいの女子は、ゴロゴロおるぞい。おぬしも似合っておる。彼女達もじゃ。皆、可愛いのじゃ」

「ビゼルさん……?」

 約束破りが言っている。ツルカは内心イラっとしていた。ただ、一理はあると思っていた。内心はそれぞれ違えど、彼女達は堂々としていた。ツルカが恥ずかしがったままでは、彼らも気まずいままだろう。

「ごめん、お待たせ!乗り物だっけ、うん借りたいよね」

「ほら、あの子。……な、顔は幼いのにな?」

「……な、だよな?」

 主に異性からの視線も気になるが、ツルカは気にしないようにした。幼い顔立ちなのは自覚している。このビキニはフリルが控えめでもあり、大人っぽいといえばそうだ。そのことを揶揄されていると、ツルカは思っていた。

「……」

「ひっ!」

 ラムルが一瞥すると、男達は退散していった。安心したツルカの元に、ラムルは近づいていった。

「着てろ」

「え……」

 ラムルは自分のシャツを脱いで、ツルカにかけた。彼女にとっては大柄のシャツとなった。上半身裸になったラムルは、より注目されるようになった。通り過ぎる人は皆、彼に目を奪われていた。ツルカもそうだ。あまりにも肉体美過ぎて、目をそらしてしまった。

「なんだよ。買ったばかりで、着たばっかだぞ。不満でもあるのか」

「ううん、そうじゃないんだ。……ありがと、ラムル」

「ああ」

 ラムルはさっさと顔を背けて、レンタルを物色していた。

「おお、ラムル君……」

「ひゅー」

 成り行きを見守っていたニコラスは安堵をする。ビゼルはというと、下手くそな口笛で囃し立てていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ