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出発前のトラブルあるある②

「とりあえずさ、列車の中で寝てなよ。指定席だからさ、ゆっくりできるよ」

 事前にニコラスがチケットを手配してくれていた。待ち合わせ自体は余裕をもって設定していた。予定の列車も当分は来ない。

「ニコ坊、助かるのじゃ。窓の席かのう?」

「うん、そうだよ。四人で座れるようにとったからね」

「じゃったら、わらわは窓側なのじゃ!」

 ビゼルは威勢よく手を上げた。元気が良かったので、誰も反対することもなかった。

「なんだよ、ビゼル。子供かよ。そんな窓側くらいで、なあ?」

 なんかソワソワしている人もいた。わかりやすかった。

「ラムル君も窓側にしなよ。僕、通路側でいいからさ」

「うん、私も」

 微笑ましかったので、誰も反対しない。海を心待ちにしている二人に譲ることにした。

「じゃあ、ホームで待ってようか。切符を出して―」

 そう言いかけたところで、ニコラスが固まった。顔を青くしながら、口をパクパクさせていた。

「……はは、ごめん。僕、寮に忘れてきちゃった。本当にごめん!自腹切って買い直してくる!」

 ニコラスはこの世の終わりみたいな顔をしていた。ラムルが軽く背中を叩く。

「俺も言えた身じゃないけどな。取りに戻ればいい話だ。まあ、取りに行けって話だ」

「ニコ坊。誰にだって過ちはある。人とは過ちを経て、成長するものじゃ。わらわ達は待っておるぞ」

 遅刻組は気にしないようにと説いた。ニコラスはそれこそが有難かった。

「ツルカちゃんもごめんね。急いで取りに戻るから」

「いえいえ、そんな。お願いしてもいいのならですし」

 ニコラスは本当に箒を借りることになった。彼ならば、すぐに飛び立てるだろう。それに、誰にだって過ちはある。ビゼルも言っていた。

「そうです。忘れ物だって―」

 今度はツルカが青くなった。汗も頬を伝う。これは何かをやらかした顔だった。

「……あれ、ツルカちゃん。忘れ物?」

 早速疑惑をもたれていた。それでもツルカは何でもないと、主張するも。

「おーい、ツルカ?正直に言えって」

「何でもない、何でもないって」

 目つきの険しいラムルからも、何でもないと言い続けようとするも。

「はよせい。あながち水着じゃろう。ならば、取って参れ」

「い、いや水着とか」

「いいや、水着じゃ。あらかた水着を試しに来て、色々と対策を練っていたのじゃろ―」

「やめて、ビゼルさん!」

 ビゼルに図星を突かれた。ツルカの昨夜の秘め事を、ビゼルは見事に暴いたのだ。対策とは言い過ぎだが、心の準備はしていた。実際に水着を着て、慣れようとしていたのだ。そして寝間着に着替えて、―水着を椅子にかけたままにしていた。

「別に水着はなくてもよくて……」

「……まあそうだよな。今の恰好で十分だろ」

 ラムルは擁護するも、ビゼルはそうはさせなかった。

「ツルカ殿。せっかくの勇気じゃろうて。ときに大胆に弾けようと、張り切っておったろうに!まだまだあるぞ―」

「わかった、ビゼルさん!取りに戻るから!あの、私あとから追いかけるから、先に行ってくれたら」

 ビゼルは何が何でもツルカに水着を着せようとしていた。あの服屋でのやりとりを暴露しかねなかった。大胆に弾けたい思いもあったツルカは、取りに戻ることにした。

「ほら、ツルカちゃん。今なら間に合うからさ。二人乗りでいこう!」

「ありがとうございます……」

 かくして、ツルカとニコラスは忘れ物を取りに戻ることとなった。ツルカは箒での二人乗りは初めてだった。といっても、ニコラスだ。模範生でもある彼だ。安全運転には違いないとふんでいた。が。

「じょ、女子と二人乗り。女子と二人乗り。いや、しっかりするんだ僕!」

「ニコラス先輩……?」

 ニコラスがやたらと緊張していた。不安のまま乗ったのが良くなかった。

「うわあああああ!」

 ふらつく飛行から、宙がえりまで。命の危機を感じつつも、箒に乗って学院に戻ることとなった。

 ツルカは酔いに耐えながらも、自分の部屋に戻って水着を掴み、そのまま階段を駆け下りていった。特別寮のニコラスとも落ち合い、箒で帰ることとなった。帰りの運転は安定していたので、スムーズに向かうことは出来た。

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