夏の計画を立てに行こう!
「ふぅ……」
夏休みに入ると、ツルカはバイトが増えていた。外出制限が緩くなることもあってだ。例年のことでもあった。まだ雨が降っていおり、傘をさしながら街中を歩いていた。
「ツルカちゃーん」
「ニコラス先輩」
向こうから傘をさしてやってきたのは、ニコラスだった。これからラムルも含めて会う予定だった。良い感じに出会えたので、二人で向かうことにした。
「そうだ、寄っていってもいいですか?知り合いの店がありまして」
「うん、いいよ」
ラムルの居住区の前に、ビゼルの商いの場所がある。声をかけていくことにした。
「あ、ビゼルさん―」
あの怪しい猫の覆面、十中八九ビゼルだ。今日も占い屋を営んでいた。そして、長蛇の列でもあった。
「あれ?もしかして、『ニャー姉さん』?」
「ニャー姉さん……?」
ニコラスが当然のように口にするが、ツルカはつい聞き返してしまった。
「うん。ここ通る度、僕気になってたんだけど。ほら、あの猫のやつとか。……目、動いてるんじゃないかなって!」
「……わかります。すごくわかります」
「だよね。でも、最近になって列も出来てきて。女の子が多いんだけど、みんなニャー姉さんって」
「そうなんですね。そっかぁ……」
占いの腕はどうであれ、賑わっているのなら何よりだ。会釈だけでもしておくことにした。
「む?」
ビゼル、いや、ニャー姉さんが気づいたようだ。覆面の目が動いていた。
「って、あの目やっぱ動いてるって」
「動いてますねぇ」
ニコラスがビビっていた。そんな彼を見て、ツルカはかえって冷静になった。もうそういうものだと思うことにしたようだ。ニャー姉さんに会釈をすると、彼女も頷いていた。通り過ぎる際、話し声が聞こえてきた。ニャー姉さんはしきりに頷いていた。
「うん、わかる。辛いよね、うん。好きになっちゃいけない人だよね。うん、辛いよね。でもね、そんな恋するあなたは。―とても綺麗よ」
「うう、ニャー姉さーん……」
キャラまで変わっていた。そこにいるのは、恋に悩める子羊の味方。我らがニャー姉さんだった。
ラムルの家に行くまでに、うらぶれた通りを通らなくてはならない。怪しい住民達がそこらにいた。
「ぼ、ぼ、僕はチキンだけど、君を置いて逃げたりしないからね……!」
「あの、ニコラス先輩。ラムルから聞いたんですけど、こちらから手出しはしない限りはってことらしいです」
足や声を震わせても、ツルカを守ろうとしているニコラス。その勇気は大変有難いものの、ツルカは安心させたかった。あと、自分がしっかりしないとという気持ちにもなっていた。
「……え、そうなの」
「はい」
「ぼ、僕という奴は……!見た目で判断するなんて……!」
事実を知ったら知ったで、ニコラスは落ち込んではいた。ツルカはほらほらと促した。