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生徒達のストライキ。

 この日も、その前日も。ラムルが訪れることはなかった。ニコラスがやはり伝えてくれたのだろう。魔力のこともニコラスが補ってくれている。

「……元気なんだよね」

 ラムルとは会えずじまいだ。ツルカは自室の窓辺に立っていた。彼の来訪はやはりなかった。あの罠もそうだが、ツルカが店で働いている時もだった。ビゼルと違って、容易に会いにいけるわけではない。

「……」

 ツルカはモヤつく心を認めながらも、テスト勉強を再開することにした。


 勉強に明け暮れて、迎えたのが期末テストだ。努力した者に結果は伴う。何気にビゼルの言葉が励みになったツルカは、それはもう勉強に勤しんだ。時にはハルトにも頭を下げて、教えを乞うた。

「……んー!終わった、終わったぁ」

 全行程を終え、ツルカは自室で羽を伸ばしていた。今日くらいは、とことん休むと決めたのだ。買っておいたとっておきのジュースで一人乾杯していた。

「……」

 気になることは多々ある。魔女会議も結局は夏休み前日に行われることになった。その時のニコラスの気まずそうな顔も印象的だった。

「マルグリット先輩……」

 テスト期間中ということもあっただろうが、マルグリットの単独行動が目立っていた。寄り添おうとしていた模範生達を避けているようだった。

 テストは終わった。ツルカ自身に疑惑が深まることもない。至って平和な毎日だ。ツルカはそれでも心から浮かれることなど出来なかった。


 テストも終わり、その次のイベントは卒業式だ。さらに、卒業生が主役の舞踏会もある。学院内の大型ホールで開催されるそれは、楽団なども招いで盛大に行われるものだ。参加者は限られているものの、生徒一同心をときめかせるイベントだった。

 目下の卒業式の準備期間となっていた。模範生主導で行われるものだ。大抵は権利譲渡された模範生なのだが、現模範生は皆現役だ。第一であるマルグリットが中心となって、主に七回生らと協力しながらあたっていく。そのはずなのだが。


「ストライキ!?」

 ツルカは今日も秘密の洞窟に訪れていた。ニコラスに魔力の補給をしてもらい、いつもの雑談をしていた時だった。

「……うん。うちの学年がね」

 ニコラスが落胆しながらそう言っていた。マルグリット主導なのが気にくわなかったのだろう。

「それでも、僕らはそうはしなかった。だって、当然じゃないか。当然なんだけど……」

 ニコラス模範生達はそうではなかった。マルグリットの力になろうとしていたが。

「……『彼』がね、マルグリットさんと揉めるに揉めちゃって。変な空気になっちゃって。マルグリットさん、ガチギレでこわいし」

 思い出したニコラスがガタガタ震えていた。余程の言い合いだったのだろう。

「ああ……」

 マルグリットとやり合う模範生が誰か。ツルカはすぐに思い浮かんだ。あの柄のよろしくない彼だろう。

「でもそれって、売り言葉に買い言葉的な」

 仲間意識があるのは百も承知だ。あのガラ悪模範生も、本意ではなかった。ツルカはそうとらえていた。

「うん、僕もそう思う。皆、もちろん彼もね。マルグリットさんにバレないように、本日の仕事やることにしたんだけど。よくないよね。明日にはまた話そうってなって」

「そうだったんですね……」

 マルグリットは話にならない状態のようだ。お互い頭を冷やすことにしたのだろう。

「とりあえず、僕の分もやらないと。立て看板係なんだ」

「ニコラス先輩。手伝ってもいいですか?」

「え、いいの?助かる!」

「はい……」

 ニコラス達もストライキのあおりをくらっている。それでも不満そうにすることなく、ただマルグリットのことを心配していた。魔女会議で敵対さえしてなければ、心から素晴らしい先輩と思えるのに。ツルカは残念な思いだった。

 洞窟の外に出ると、雷鳴がとどろいていた。豪雨でもあった。ツルカは傘をさそうとしていたが。

「よっと」

 ニコラスが宙に手をかざすと、薄い膜のようなものがかかった。雨水を弾き飛ばしていた。

「わあ、ありがとうございます」

「どういたしまして」

 ニコラスのおかげで濡れることもなく、校舎に戻ることが出来た。

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