事の始まり③
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ツルカ・ラーデンは魔女である。
―事の始まりは、とある女性の祈りからであった。脅威であった敵国や亜人達の度重なる襲撃により、祖国の土地は枯れ果てていった。そして、飢えや疫病に苦しまされていた。
その祈りが通じたのか、女性の前に突如現れた人物。この世の者とは思えないほどの美しい青年であった。懸命なる祈りに心を打たれたのか、青年は女性に万物の力を与えることにした。
麗しい青年は彼女に救済の旅に出よと告げる。旅の道中で彼女は同志達と出会う。彼らも平和願っており、力を授かったという。
御力によって祖国を救済していった。自国に平和をもたらした中心人物の女性は、後に救済の魔女と。そう讃えられることになる。
「―と、そのような偉大なる功績を残された魔女の血を引くのが、我々です。この力は我が国における誇りそのものなのですから」
「……はい」
「ですが、その魔女の最期は凄惨なるものでした。―信じていた仲間による裏切り。その裏切りにより、命が絶たれてしまったのですから。……わかりますね、あなたが今罪に問われているのは」
問われた人物は息を呑む。豪奢な部屋の中央にて、いたって平凡な少女が今まさに糾弾されていた。少女と同じ頃の若者が、少女を取り囲む形で席に着いていた。ただ一人立たされ、そして多数の刺すような視線に少女は怯む。それでも。
「この国における大罪の一つ、それをあなたが行っているのだとしたら。それを看過することは出来ません」
「……私は」
「それでもあなたは。―騙り続けるのですか」
それでも、だ。彼女は退くわけにはいかなかった。
―自分の事の始まりは何だったのであろうか。
この緊迫した状況ながらも少女は思いを巡らせる。少女は視線の先を糾弾する側の人物の一人に向ける。そう、事の始まりは。
ツルカ・ラーデンと名乗る少女、本名は鶴村佳弥乃だった。
日本で暮らしていた彼女だが、幼馴染の代わりとなって異世界へ招かれてしまう。深い森で出逢ったのは、亜人達。そして、褐色肌の少年だった。
褐色肌の少年は亜人達からも崇められており、神も同然だった。名はラムル、幼いながらも尊大な人物だった。
集落に迎えられたツルカは、慣れない環境の中でも生きていく。反発し合う二人だったが、月日を経て、心を通わせていく。お互いがかけがえのない存在となっていた。
集落を離れることになり、居合わせてしまったのは。―『大罪人』の処刑だった。
ツルカは知らなかったのだ。自分が今いる場所の事を。何が一番大切で。何が一番禁忌であるのかを。だからこそ、彼女は最大な罪を犯してしまう。
―自分が魔女であると騙ってしまったのだ。
『無事学園を卒業するまで。―魔女であると騙り続けてみせよ』
ある青年が救いの道を示した。ツルカは名門ローゼ学園の扉を叩くこととなった。
幸いだったのは、ラムルからの魔力の供給が行われたこと。だが限りはある。節制を重ね、時には根性で乗り切る。ツルカはそうして学園生活を過ごしてきた。
六回生の春。平穏だった日々も脅かされていく。
ツルカはついに。魔女を騙った者として『魔女会議』の招集を受けることとなってしまった。
あやうく処刑決定かと思われたが、無事、魔女として『証明』することができた。
―卒業するまで。ツルカ・ラーデンは魔女を騙り続ける。
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