事の始まり
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ツルカ・ラーデンは魔女である。
―事の始まりは、とある女性の祈りからであった。
脅威であった敵国や亜人達の度重なる襲撃により、祖国の土地は枯れ果てていった。それだけではない。飢えや疫病に苦しまされていた。
祈りが通じたのか、女性の前に現れた存在。この世の者とは思えないほどの美しい青年であった。
女性の懸命なる祈りに心を打たれたのか、青年は女性に万物の力を与えることにした。
青年は彼女に救済の旅に出よと告げる。
旅の道中で彼女は同志達と出会う。彼らも平和願っており、力を授かったという。
御力によって、祖国を救済した女性は。―後に救済の魔女と、そう讃えられることになる。
「―と、そのような偉大なる功績を残された魔女の血を引くのが、我々です。この力はわが国における誇りそのものなのですから」
「……はい」
「ですが、その魔女の最期は凄惨なるものでした。―信じていた仲間による裏切り。その裏切りにより、命が絶たれてしまったのですから。……わかりますね、あなたが今罪に問われているのは」
問われた人物は息を呑む。いたって平凡な少女が今まさに糾弾されていた。
豪奢な部屋の中央にて、少女と同じ頃の若者が、取り囲む形で席に着いていた。
「この国における大罪の一つ、それをあなたが行っているのだとしたら。我々はそれを看過できません」
「……私は」
ただ一人立たされ、そして多数の刺すような視線に少女は怯む。それでもだ。
「それでもあなたは。―かたり続けるのですか」
それでも、だ。彼女は退くわけにはいかなかった。
―自分の事の始まりは何だったのであろうか。
この緊迫した状況ながらも少女は思いを巡らせる。少女は視線の先を、ある人物に向ける。糾弾する側の人物の一人だった。
そう、事の始まりは。
少女が思い浮かべるのは、幼い日々のこと。十年は前だったか、そうではなかったか。
時は遡る。
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