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試練

神社にて

 ワタシハカミデス


 「は?」


 思わず、といった感じで口から飛び出してしまった。

 まだ、自分は正気に戻っていなくて、パニック状態なのかと疑ってしまいそうになる。

 しかし、


 「信じられない?()()()()()()()()()()()()()()。」


 「っ!?」


 客観的に考えても妄想だと結論付けるしかなかった膨大な記憶。

 しかし、現状は間違いなく、どこからどう見ても高校生。

 違和感を確かめるために神原は、最後に覚えている場所であるこの神社を訪れた。

 

 「()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」


 何で、ナイフだとわかる?

 この場にはナイフも無ければ、神原は出血もしていないのに。

 

 ハッキリしていたのは、この女は神原のことを知っている。

 しかも一方的に。

 神原が妄想だと思っていたことの内容も。

 

 神様。


 神原の目の前にいる少女は確かに神原を助けてくれた、それは事実だ。

 正直、怪しさMAXなのだが、信じるにしろ信じないにしろ、どのみち神原が選べる選択肢はほとんどなかった。

 

 神と名乗った少女はその反応は慣れたものだとでも言うかのように、ニコっと笑って社の方へと歩き出した。

 少女が背中を見せた時、木の棒の様なものを背負っているのが見えて、それが刀の鞘であると気づく。

 クリーム色っぽい、白木造りで、いかにも神社とかに奉納されていそうな感じである。

 

 少女は賽銭箱の上に腰掛けると、手招きをした。

 来い、ということだ。


 刀を連想したことで、助けられて緩んだ警戒心が上がるが、神原は少女の目の前まで歩きだす。

 

 何と、質問すれば良いのだろう?

 少し悩んで、


 「・・・説明をたのめるか?最初から」


 演じているだけだとしても、とりあえず目の前の少女を〈神〉として扱う。

 その方が、話が早いだろうと神原は判断した。

 ただし敬語は使わない。

 まだ必要以上に心を許してはならない。


 「もちろん、ちなみに、私が本物の神だと理解しても敬語は使わなくて良いよ。」


 「・・・そいつは、どうも。」


 「では、これより、〈ルール説明〉を始めます。」

 

 「ルール?」


 「神原 真、あ、これから真君と呼ぶけれど、君は昨晩、見ず知らずの女性を守護し、凶刃に倒れた。実に英雄的だ、私も近代になって英雄を見ることになるとは思わなかったよ。」


 「・・・やっぱり、あれは事実なんだな?だとすると、俺は死んで、ここは死後の世界、とかなのか?」

 

 神原が考えた可能性③、『あの世』で見ている夢という説。


 「んー、半分くらい当たりって感じかな。ここはね、〈真君の記憶〉を下地に私がアクセスできる〈土地の記憶〉を加えて構成された世界だよ。」


 〈神原 真(自分)の記憶〉と〈土地の記憶〉

 何のことだか、さっぱりわからない。

 やはり、ただの不審者なのか、それとも、自分の頭はもう取り返しがつかない所まで来ていて、妄想が幻覚にでもなっているのか。


 「んー、真君の立場からすれば当然なんだけど、理解できないことが出て来るたびに疑心暗鬼にならないでほしいなぁ。それも試練の内なんだし。」

 

 そんなに顔に出ていただろうか。

 それとも、心でも読めるのだろうか。

 いや、それよりも、


 「試練?」


 「そう、これは試練なんだよ。平たく言えば真君は今、〈神隠し〉に遭っている。それも精神だけ。つまり、まだ、君は死んでない。」

 

 まだ、死んでいない、試練。

 つまり・・・?

 

 「でも、このままじゃ死ぬ。今この瞬間も血は流れているし、ちょっと壊れちゃいけないとこも壊れたしで、普通の方法で君の命が助かるのは難しい状況だよ、現在進行系でね。」


 「さっき倒れたのは・・・?」


 「現実の身体の痛みだよ。鳥居の中は神の領域だからね。一瞬にも満たないとはいえ、領域を跨ぐ時に身体に精神が引っ張られたんだろう。あ、そうだ、この水を持って行きなさい。ここに出入りするときに飲めばさっきみたいにはならないから。」


 いきなり、ぽいっとペットボトルが投げ渡された。


 「あれ、これって・・・?」


 「私の飲みかけとかじゃないよぉ?残念だったかなぁ?真君がうちの鳥居にぶん投げてくれた落とし物だよー???」


 「・・・もしかして、ちょっと怒ってます?」


 「べぇつにぃー。」


 渡されたのは、神原があの刃物男に投げつけて、惜しくも鳥居に命中したあのペットボトルだった。

 今の今まで、すっかり忘れていたが、もしかしなくてもメチャクチャ失礼だった・・・?


 「いや、あの、でもですね、あの時は慌ててたというか、緊急事態でしてね。その辺り考慮していただきたいなぁ、と思うんですけど・・・」


 敬語になっちゃったよ・・・。


 「うん、正直あれで寝てる所を叩き起こされてかなりイラついたけど。久しぶりに神罰とか考えちゃったけど。」


 神罰とやらが具体的に何なのか知らないが危ないところだったらしい。

 いや、もう十分バチは当たっている気もするが。


 「私が拾った時点で神の痕跡が残るから、そのペットボトルの水はこの神社の水と同じ効果を持つわ。さっき痛みをごまかしたあれね。」


 先程のぶっ倒れるほどの痛みが余韻も残さずスパッと消えたのは、あの顔面にぶちまけられた水に痛みを消す効能?的なのがあったからっぽい。


 「で、話を戻すけど、君は今、精神だけ神隠しに遭っていて、現在進行系で死にかけてる。生き残るにはこの神の与える試練をクリアするしかない。ここまでOK?」

 

 ・・・自分が危機的状況で、どうやら助けて貰っているというのは理解できた。

 だが、それなら聞かなければならないことがある。

 

 この後、空気が悪くなるかもしれないと覚悟して、言葉を発する。

 

 「・・・質問いいか?」


 「どうぞ」


 「なんで、あんたがあの女の人を助けなかった?神様なんだろ?自分の寝床の目の前だぜ?」

 

 責めるような物言いになっているのは自覚している。


 「言ったでしょ。寝てたって。それに、願われてもいないしね。神様に願わない望みは自分で叶えるモノでしょ?」


 気を悪くした風もない。

 あの状況に助けに入る義務なんか誰にもない、神原にも目の前の少女にも。

 でも、


 「じゃあなんで俺のことは助けたんだ?俺もあんたに願ってなんかいないし、そんな状況じゃなかった。」

 

 試練だとか言っているが、この少女は襲われている女の人よりも、勝手に飛び込んだ神原を選んで助けようとしている。

 

 「なんか良いことありますように。」


 「!」


 その言葉には、覚えがあった。

 気まぐれに、神社の前を通った時に、賽銭を投げたは良いものの、願い事が思い浮かばなくてそんな感じに祈ったことがなかったか?


 「思い出した?ランニングなのか、買い物帰りなのかは知らないけど、真君は気まぐれにでも神社に、お賽銭を落として、神に願っている。正直、もうちょっと具体的に願えって思うし、目に付いたら休憩がてらどこの神社にも入るみたいだから、あんまり信仰心とか感じられないけど・・・。」


 確かに、神原は神社に寄道したらお賽銭を投げて、手を合わせたりはする。

 だが、願い事を声にだしたりはしない。

 誰かに聞かれたら願いは叶わないとか、そんな迷信を信じる訳じゃなく、純粋に恥ずかしくて、声にだすほど必死ではないから。

 心の中でしか、言っていない願い事をこの少女は知っている?


 本当に神様だっていうのか・・・?

 

 「じゃあ!あの女の人は神様に一度も祈ったことがないから助けなかったのか!?」


 「いや?そんなことないよ?ただ、彼女を見捨てて、真君を助けたのは、神に祈ったことがあるかっていう理由じゃないだけ。というか、助けていない、〈神隠し〉だよ?」


 「どういう・・・?」


 「神様(わたし)の都合に決まってるじゃない。」


 思わず、一歩後ずさってしまった。

 そうだ、神隠しとは、神による誘拐のことではなかったか?

 

 「私はこの〈土地の記憶〉にアクセスできるから、直前まで寝てても見逃した経緯を見直せる。だから君が自分から首をつっこんで死んだのも君の選択だってわかってる。・・・いくら英雄的でもあれは自業自得だよ。個人的には嫌いじゃ無いけど、残念ながら神のルール的には仕事にまで発展しない。」


 なんか良いことは起こせない。


 「でも、最期の腹からの抜刀!あれは良かった!怨嗟の中に強固な〈意地〉があった!振り抜いた後に波のように怨嗟が引いていったのもポイント高いね!久しぶりに人の感情の爆発を見れて実に良い気分だった!」


 死に際に刃物男を刺し返したのを言っているらしい。

 あれは確かに意地だったし、火事場の馬鹿力的なものだったが、どうやら、あれがお気に召したようだ。

 興奮した様子で少女は続ける。


 「興が乗ったから一枚噛もうと思ってね。だけど願いを叶えるという形をとるのは難しい。だからこれは、この神を楽しませた褒美としての試練。もっと楽しませてくれるんじゃないかという期待をこめた、君にとっては延命措置としての神隠しだよ。救急車が到着するまでの心臓マッサージみたいなモノさ、神流のね。」


 神原には違いがよくわからなかったが、スタンスとしては、会社の支援は無理だけど、会社で学んだスキルを趣味に使うのはあり、みたいな感じでやっていることなのか?

 

「願いを叶えている訳じゃ無いから突然、傷が塞がったり、手術の成功率を100%にすることはできない。だけど試練をクリアできれば、別途でクリア報酬を与えることになるから、それで真君は生き延びることができる。」


 生き延びることができる。

 死んだと思ったあの瞬間が覆る。


 神原にとって今何よりも重視すべきなのは自分はまだ死なずにすむかもしれないということだ。

 嬉しい、という感情よりもホッと落ちついた、良かったという気持ちが強い。



 「実際、運が良かったんじゃないかな?この辺で自我を残して神様してるのって、もう私くらいで、他の神達は人の願いを聞く概念として自動(オートメーション)化してるっぽいから、この神社以外の場所だったら私は叩き起こされなかったし、目に止まることはなかった。」


 

 「・・・それって、結局、俺を助けてくれてるんじゃないのか?」


 「そうでもないよ。試練の点数しだいで真君は地獄行きだし。」


 「はぁっ!?」


 とんでもないこと言ってないか、おい!


 「君の選択は自業自得だったけど善悪でいったら間違いなく善だった訳だし、そのまま死んだらたぶん天国でバカンスしてから望んだモノに生まれ変われたんじゃないかな。」


 ・・・これ、どういう反応すれば良いのだろう。

 ほっといてくれたら天国に行けたけど、まだ死にたくはなくて、死なないための延命措置のリスクで地獄行きになるかもしれないって。

 

 「まあ、私の寝床で私の目を引くようなことしたのが悪いので、天国行き直行は諦めてちょうだいな。それに、個人的には嫌いじゃないって言ったでしょ?神的に言えば自業自得だけど、私的には君みたいな人は、報われるべきだと思ってる。だから本来はしない〈ルール説明〉なんてしてあげてるのよ?」


 大サービスなんだから、とでも言いたげだが、要は事務の窓口でイケメンかどうかで接客態度が変るお局みたいなものだろう。

 もし神原が悪人と判断されていたなら、たとえ面白い奴と判断されても、説明もなしで試練を受けさせれたか、そのまま死んで終わりだったということだ。

 この神は人を選んでいる。

 神原のように反射的に人を助けたりはしない存在だ。

 それは、覚えておくべきことだと思った。

 

 「・・・それで?結局、試練ってのは何なんだ?俺は何をすれば良い?」


 「〈越えられなかった自分〉を乗り越えること。」


 「〈越えられなかった自分〉?」


 「そう、神が人に与える試練の本質はいつだってこれよ。」

 

 過去、と聞いて自分の着ている高校の制服を見る。

 過去に卒業した高校生の自分を。

 嫌な、予感がする。


 「今という瞬間は未来に流れ、過去として置いていかれる。真君が高校生の姿になっているのは、その頃に人生で最も大きな後悔とかがあったからじゃないかしら?」


 後悔。

 越えられなかった自分。

 踏み出せなかった一歩。

 思い出したくないことを思い出してしまって、途端に気持ちが沈み込む。

 知らぬ間に両手が硬く握られて、拳ができていた。

 

 「・・・ふざけんなよ、誰だろうが触れちゃならねぇとこってのはあんだぜ、人間にはよぉ?第一、今更だろ。過去をやり直したところで過去が変るわけでもないんだ・・・。」

 

 踏み出せなかった一歩をこんなところで踏み出しても、所詮は夢だ。

 むなしいだけだ。


 「面白い見世物がみたいんだか知らねえけど、そんな意味の無いことやらせようとしてんのか?」

 

 ハッキリ言って、不快だった。

 何より、後悔なんて気分がわるくなる部分をほじくり返されるのは、堪らなく嫌だった。

 対象が()()ならなおさらだ。


 たとえ相手が神で自分の生死がかかっていても。

 見世物にされるのが死んでも許せない後悔が神原にはあった。


 「・・・あんた、(わたし)を嘗めてるの?」


 「なに?」


 「始まる前から失望させないでよ、お願いだから。良い?褒美ってのは享受しないと意味が無いの。美味しい料理を作っても、食べれなかったらそれは褒美たり得ないの。食器からお箸やスプーンも用意して始めてご褒美なのよ。」


 「おい、何言って・・・!」


 「君はまだ死んでない。試練の結果によっては生き残れるでしょう。で?神と呼ばれる者の試練を乗り越えて得るものがそれだけだと?そんな当然の前提だけだと?君は本気で言っているのかしら?」

 

 命びろいするための、プラチナチケット。

 一番の報酬は命。

 それが前提。

 当然だ、今一番欲しているものだからだ。

 今まさに、失いそうになっているモノが手元に残るかもしれない振って沸いた挑戦権。

 違った。

 それどころじゃない。

 こいつは、もっととんでもないチケットだった。

 

 「神の創りし世界で変えた過去は未来に追いつく。乗り越えた自分はそのまま世界に反映されるにきまってるじゃない。」


 生きて帰れるなんて前提に過ぎない。

 褒美とはその先にあるモノだ。

神の少女「夢オチとかねぇから気合い入れろ」

  神原(これもしかして、過去変えられるんじゃ?)

神の少女(よし!やる気になったな!)

  神原「(いや?ほんとか?)とりルール説明よろ」



文字数が増えた・・・。喜ばしいのか、まとめ方が下手なのか。恐らく後者なんだよなぁ。

WEB小説の強みはページの量とか幅に制限がないことではないかと思います。なので、なるべく文にスペースを作った方が読みやすくなるかなと思って書いているのですがどうなんでしょうね?

人によりそう・・・。

目標は変らず、物語の完走です。サボるな自分。

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