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論理的に考えたらありえない。

学校→神社

 ・・・意識がハッキリしだしても、神原はしばらく動くことができなかった。

 動いた瞬間、あの耐えがたい腹の痛みがまた体中を駆け巡るのではないかと。

 

 「おーい、まっさん!もうすぐホームルームはじまるぜ。」


 なれなれしく喋りかけながら肩を叩きやがったバカのせいで、ビクっ!!と意に反して体が強張って(こわば)しまったが、腹の痛みは襲ってこない。


 ゆっくりと、目を開けて、体を起こした。

 どうやら、腕を枕にして、机に突っ伏す形で寝ていたらしい。

 机に座って居眠りをする時の基本の構えである。


 (・・・教室?・・・学校?)


 若干、光に目を細めながら、視界に広がったのは、見覚えがある〈教室〉だった。

 意味がわからなくて、目が驚いた時の猫みたいにまん丸になっていた。


 首を動かすと神原の肩を叩いたであろう〈()()〉と目が合う。

 ニヤニヤと笑っているそいつはすでに自分の席に移動している。

 神原がめちゃくちゃビックリしていると思って満足気だ。


 そして、確かにそいつは()()()()()そこそこ仲が良かった〈クラスメイト〉だった。

 他人のそら似とかではなく、まんま、である。

 よく見ると、他の生徒も神原の元クラスメイト達である。


 先生(これも見覚えしかない)が教室に入ってきて、生徒が各々の席に着いていく。

 神原はいよいよ、自身の正気を疑い、座った状態でフリーズしてしまった。

 



 ホームルームが終わるまで通信制限のかかったスマートフォンみたいになっていたが、ある程度の思考ができるくらいには再起動すると今の状況に対して考えられる可能性を列挙していく。


 可能性①

 夢落ち、妄想説


 神原 真が24歳で、刺されて死んだりしたのは全て神原の頭の中の出来事で、妄想。

 実際には17歳の高校生であるという説。

 頭の病院に受診を検討する必要あり。

 

 可能性②

 壮大な誰かの悪ふざけ説


 神原の知らない間に技術は超進化していてVRなり、特殊なセットやメイクなりでこの教室全体が神原を騙そうとしている説。

 首謀者の特定(制裁)の必要あり。


 可能性③

 死後or過去の世界説(異世界転生説)


 実際に神原は刺されていて、この教室はいわゆる、『あの世』もしくは精神だけ過去に移動したとする説。

 天国とか地獄とかは何だったんだ?


 (・・・普通なら①だ、実際に高校生なわけだし・・・だけど・・・)


 この現状が証拠のようなものなのだ。

 神原自身の身体は自分が実際に高校生の自分であると訴えてくる。

 何より、腹に刺し傷が無いのだから、24歳無職の〈悪夢を見ていた〉と考えるのが自然だ。


 しかし、あまりにもリアリティがありすぎた。

 

 細部が細か過ぎるのだ、この妄想は。


 何より自分が大人であるという自認が強烈だった。


 神原は大学時代の日々を思い出す。

 友人、バイト、酒、ゲームに漫画と旅行先の景色。


 社会人になってからはもうひどい。

 特に嫌いな先輩、逮捕された方が世のためになる上司、ある日突然辞めた同期、唯一まともに見えてやっぱりちよっと変だったマッチョな先輩。


 どんな人だったか?どんな流れで出会って、始めたことなのか?


 全てではないが、それでも思い浮かぶ。


 この膨大な記憶の全てが妄想?


 論理的に考えればそうだ、しかし感情は否定している。


 ①しかあり得ないと理解しているはずなのに、②とか③とかを考えてしまう。


 ここまでが、神原が机と椅子に座りながら考えていたことである。


 気づいたら教室には神原一人で、学校でしか生まれない喧噪を耳にいれている内に、この場所を懐かしんでしまっていた。


 とある女の子の姿を見て我に返ったが、一年とはいえ社会人まで人生を進めてしまった神原からすればこの場所はもう、そういう場所なのだ。


 懐かしくて、もっと見ていたい。


 でも・・・。

 

 学校を出た時点で、ネタばらしが無かったので誰かのドッキリ説は無さそうだった。

 同時に何となく思っていたことに確信が生まれる。


 神原 真にとってここはやはり通過したはずの場所だ。


 教室にいた時から、何となく居心地が悪い気がした。


 若者に混じっている異物感を自分で感じていた。


 神原 真の青春はすでにピリオドが打たれている。



 学校の外に出た瞬間、歩道の中をバイクで走っていたのが、ちゃんと車道に出て走りだしたような、通るべきところを通っている実感。

 

 (・・・でも、そうなると、現状考えられるのは・・・?)


 それはつまり、神原 真は・・・

 神原はそれについて深く考えるのを無理やり止めるように、


 「どれにしろ、だ。」


 と、わざわざ、声にだした。


 この状況が何であれ、問題は神原の〈胸の内〉なのだ。

 (とっかかりは最後に思いだせる場所の、あの〈神社〉しかない。逆にその場所に何も無ければ、妄想だろうがそうじゃなかろうが受け入れるしかないわけだ。)


 可能性①を感情で疑い、②を状況的に取りあえず否定した。

 残るは可能性③。


 しかし、可能性③の場合は他の可能性と違い、前提がある。

 神原は刺されて、恐らく死んでいる。

 それは進んで、認めたいことではなかった。

 




 ぐるぐると考えながらペダルを回すうちに、目的の場所に着く。

 


 神社の入り口に自転車を停め、鍵を掛けるか一瞬迷ったが結局掛けなかった。

 教科書は学校のロッカーに閉まってあるので、ノートと小さいペンケースしか入っていない軽めの鞄を自転車の籠から取り出し、肩に担ぐ。


 神原は鳥居の前に立ち、改めて神社の中を見渡した。


 入り口、つまり今神原が立っている真横の左右両方には狛犬が参拝客を迎えるというより、不審者を威嚇する番犬のごとく座っている。

 

 すぐ目の前に鳥居、そこを潜って中央を真っぐ石畳が走っており、右手側に手水舎(ちょうずや)がある。


 そして、石畳の先には小さな社とその前に置かれた賽銭箱。

 

 社の直前に石畳を挟むようにして設置された石造りの灯籠が大して暗くも無いのに社を照らしていた。

 

 敷地は小学校のプールとかより狭いのではないかと思うほどで、石造りの柵と木々が敷地を囲っている。


 見るからに普通の神社である。

 建材が新しめに見えるからか、寂れた印象がもあまりない。


 目に見える異常は見つけられない。

 

 初めて来た場所ではないはずなのに、変に緊張していた。

 妄想の可能性の方が高いとはいえ、この場所で自分は死んでいるからだろうか。


 鳥居を潜る。


 確か道の真ん中は神様の通り道だから、通っちゃダメなんだっけ?

 自転車とかバスの専用車線みたいだ。

 結構な頻度で忘れられる・・・いや、正しくは軽んじられるか?まぁ、そんな所も含めて。


 一歩。


 鳥居の中に踏み込んだ瞬間。

 

 (さむっ・・・?)

 ズシャっっ!!


 気温が下がったと思ったら、視界が一気に下に落ちた。


 「あ」


 腹が・・・、妄想だと思っていたはずの、腹の刺し傷。


 「・・・っ・・・ぐ」


 痛い。

 

 「あぁああああああああああああああああああああああああ!!!」


 叫びながら、地面で身をよじることしかできなかった。

 シャツや地面に血の赤色は見えないことから出血こそしていないようだが、そんなのことが慰めにならないの程の痛みが腹から全身へ駆け巡る。

 

 すると、突然、


 「お!、やっと来たか。」

 

 神原の叫び声を聞いてか、妙に軽い感じの女の声が聞こえた。


 ガタっ、ギぃ・・・バタンと立て付けの悪そうな音を鳴らして小さな社の中から人影が出てくる。

 人影は倒れている神原に駆け寄ったりはせずに手水舎にゆったりと歩いて行き、備え付けられている柄杓に蛇口から水を注いでいる。

 

 それから、ようやっと神原のそばまで来ると、遊びに来た友達にお茶でも出すかのように、柄杓の水を差しだし、


 「ほれ、飲みなさい」


 「きゅ・・・救急車・・・。」


 痛みでそれだけしか言葉を発せない。

 正直、馬鹿なんじゃないかと。

 ありがたいけど、まずやることが、どう考えても違うだろうと。

 

 「いーから!まず、飲みなさい!」


 まさに聞く耳持たず、と言った感じで神原の身体をひっくり返して、下顎を引っ張って、押さえつけ、


 バシャっ!


 と、顔面に水を叩きつけた。

 

 「ブッゥフゥっァ!!それは飲ませるとは言わないと思うんですけど!!」


 鼻やら口やらに飛び込んできた水の冷たさに神原は飛び起き、起きれたことに戸惑う。

 腹の痛みは嘘のように引いている、どころではなく、痛みの余韻すらない。

 引いたというより、消えた。


 思わずシャツを捲って、腹を確認してしまう。

 特に目に見える異常はない。


 「ちょっ!これ!いきなり脱ぎだすんじゃない!!」


 「あぁ、すいません。」


 反射で答えてしまった。

 何がなんだかわかっていないが助けてもらった形なので、一応まずはお礼を言わないとと思い、顔から滴る水を手で拭いながら顔を上げる。


 いきなり、上裸になろうとした(様に見えた)神原に頭上から呆れた視線を浴びせる少女は、神原の高校の女子制服を着ていた。

 侍みたいなポニーテイルで運動部っぽい雰囲気をしているが、生徒会とかのお堅い場所に居ても違和感のない落ち着きがある。

 ちょっと、顔が赤くなっているように見えるが、セクハラ扱いが怖いので気づかないフリをしよう。


(・・・ヤベェな・・・。)


 ・・・実のところ、神原は今、クラスメイトの顔と名前が半分ほど一致しない状態である。

 特に接点の少なかった人達が思い出せない。

 教室で目が覚めてから、クラスメイトと会話をするタイミングが訪れなかったため、まだ本人は気付いていなかったのだが、気づいていれば自分の頭の最新の状態が24歳時点であると思い至ったかもしれなかった。

 

 何が言いたいかというと、


 (知り合いかどうか、わからないい!)


 知り合いだった場合、初めましてとか言っちゃダメ。クソ無礼。


 「えっと・・・ありg  」

 

 とりあえず、お礼を・・・と言いかけたところで。


 「初めまして、神原 真」


 よし!初対面!と神原が心の中でガッツポーズする前に



 「私はこの神社の神です。ようこそ、そして、おかえり。」

 

 不審者?

文に矛盾とか違和感とか出てきそうで不安な感じですね。

気を付けているつもりですが、創りながら投稿しているのでコソコソと変更・修正したりしています。

ご容赦していただけると、助かります。


目標は変えないからな自分。

完走しろよ。

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