鍵のかかった暗号
「それでは、インタビューを始めます。今日はお忙しい中時間を作って頂き、ありがとうございます。新聞部の部長、大橋がインタビュアーを努めさせていただきます」
「そんな、畏まってどうしたの?」私は困惑した表情で言った。
「えーいいじゃん、記者っぽくて」
「まぁ、別にいいけどさ……」
「今日は会長と、俺だけなんですか?」赤佐君が大橋の方を見て言った。
「そう。生徒会を代表して二人に話を聞きたいの」大橋が目を輝かせて言った。
赤佐君が、無言で納得したように頷くと、大橋が切り出した。
「それじゃ、始めるね。肩の力抜いて答えてね。今から私がする質問に赤佐君、緑さんの順番で答えてもらうから」
「分かりました」
「分かった!」
「そう、そういう感じで答えて」
Q1.生徒会に入ろうと思った経緯は?
赤佐:お世話になった先輩がすすめてくれたんです。それで入りました。
緑 :前任の会長に憧れて、立候補しました。あの立派な背中を追いかけた感じですかね。
Q2.普段はどのような活動をしているんですか?
赤佐:普段は……目安箱の中を確認して、要望にどう答えるか生徒会で会議してます。
緑 :あと学校行事が近づくと、実行委員たちと連携してより良い行事にになるよう務めています。
Q3.生徒会長として、苦労したことはありますか?
緑 :そうですね……生徒会の仲間や先生方に助けていただいてるので、今のところ苦労はないです。感謝しかないです。
Q4.先程、目安箱と言葉がありましたが、効果を実感したというエピソードはありますか?
赤佐:実感したと言うか……そういえば会長、覚えてますか?目安箱を置いて早々、不思議なことが起こりましたよね?
緑 :あぁ!あったね!でも、あの出来事があったから、目安箱に気枯れなく要望を書いて、入れてくれる人が増えたんだもんね。
大橋:その話、詳しく聞かせてくれる?
緑 :あれは……確か4月の中旬頃、私が目安箱を置こうと言い出して、急な提案だったから生徒会室にあった段ボールで目安箱を作ったの。それで、置いた次の週から不思議なことが起きた。目安箱の中に封筒が入ってて、中身は暗号が書いてある紙が1枚入ってたの。
1週間毎に目安箱の中を確認するんだけど、3週間連続で暗号が入ってる封筒が届いて、次の週が暗号じゃなくて絵が書いてあった。
大橋:ということは、合計3枚の暗号がきた。で、もう一枚の絵はどんな絵だったの?
緑 :図形の円と、鍵のイラストが書いてあった。あと、見た時は意味が分からなかったんだけど、
右に2回動かす 左に1回動かす 右に4回動かすって書いてあった。
大橋:ふーん。で暗号はどういうやつだったの?
赤佐:暗号は、これです。
(1週目)のも□りふ □⬅や↑
(2週目)ざ□ほあ゙ひや□ゆ □⬅や↓
(3週目)ひへとめに
大橋:それで、その暗号解けたの?
緑 :うん。赤佐君が解いてくれた。最初はイタズラかなって思ったの、目安箱置いたばかりだし。でも暗号のおかげで今の目安箱があるからこの暗号の紙は今でも大事に取っておいてあるんだ。どう解いたかは赤佐君に聞いて。
赤佐:最初は全然分かりませんでした。でも、最後に届いた紙のおかげで暗号が解けたんです。
この暗号は3つの暗号と、最後の紙が全て揃わないと解けない暗号だったんです。全て揃った後、俺は五十音表をノートに書きました。
暗号の文字をそれぞれ五十音表の文字の位置から動かせばいいんです
第1週目は、右に2回動かす
の →→ そ
も →→ の
□ →→ ひ
り →→ み
ふ →→ つ
□⬅や↑というのは、や行の上側の空白の事を言ってたんです。
同様に、他の暗号も五十音表を見ながら指定のように動かすと、
「そのひみつ だれもがみられる きけんせい」
と出てきます。先程、会長が急な提案で作ったからと言った目安箱は鍵が掛かっていない、箱の中を見ようと思えば誰でも見られる設計だったんです。この暗号を作って送ってくれた人は、暗号と解き方をわけて送ることで見られる危険性を回避しつつ、俺達に見られる危険性を知らせたんです。
図形の円と、イラストの鍵はダイヤル式の金庫を表していて、鍵が届くまでの1週目から3週目の暗号は鍵が掛かっていた状態だったってことだと思います。
暗号を解いた次の週に会長が、鍵付きの目安箱に変えてくれました。
大橋:凄いね……暗号を解くのも凄いけど、制作者の意図も分かっちゃうなんて。ちゃんとメッセージが届いて良かった、作ったかいがあったってもんよ。
緑 :え!あの暗号、大橋が作ったの?
大橋:そうだよ〜これでも新聞部の部長だよ。記者として、情報を扱うからには目安箱の相談内容が誰でも見られることはあってはならないって
思ったの。あくまで生徒会と相談者の問題だからね。
記事には、暗号をすぐ解く頭脳の持ち主と、意見をすぐ取り入れて実行してくれる良い生徒会って書いておくから。
赤佐:ありがとうございます。
緑 :って大島、今まで自分が考えた暗号の話を聞いてたんだね。変な感じだったでしょ?
大島:でも面白かったよ。ちゃんと伝わってるって分かって凄く嬉しかったし。それじゃあ、最後の質問するね。
Q5.最後に、生徒会から全校生徒に向けて一言下さい
赤佐:生徒会として、お役に立てるように全力で頑張ります。
緑 :生徒会をより身近に感じてもらえるような工夫をいっぱいしたいと思います。例えば学校ですれ違ったら、挨拶をするので返してくれたら嬉しいです。
赤佐君も言っていましたが、お役に立てるよう、行事でも生徒会が引っ張っていけるように頑張っていきますので、これからもよろしくお願いします。
大島:それでは、インタビューを終わります。今日は本当にありがとうございました。
「ありがとうございました」赤佐君が軽くお辞儀をした。
「緑さ……一言が長いよ」大島がぼやく。
「伝えたいことって、一言じゃ収まりきらないよ。これでも結構まとめた方なんだから」
赤佐君が、私と大島を不思議そう表情で見ていた。
「どうしたの?赤佐君」私は彼の方を見て言った。
「女子同士って名前で呼びあったりするもんなんじゃないかなって思って。あだ名じゃなくて、名字で呼び合ってるんで不思議だなと思ったんです。仲が悪そうにも見えませんし。ごめんなさい、人それぞれですよね」赤佐君は苦笑しながら言った。
「あぁ~」大島は笑顔で言った。「それはね……私と緑の名前が同じ“あんな”だからなの」
「“あんな”って呼び合うのも何か変な感じで。気付いたら私達名字で呼び合ってたの」私は大島の言ったことを、補足するように言った。
「あぁ〜なるほど!」赤佐君は笑顔で大きく頷いた。
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