謎の二人
通りの裏で息を荒げ、フードを被った二人組は、全力で駆け抜けたせいか、クタクタになりかがみ込んでいた。
背も高くガタイが良いフードの人物は走ってきた辺りをチラッと見上げる。
爆弾が落ちたような衝撃と爆音のために流石に多くの人が集まって来ていた。
「フライングか?」
「始まりの合図かと思ったよ。」
などと言う声も聞こえてくる。
しかし、大ごとにはなっていないらしい。
関心があってもただの余興だとか、街に配備されている軍の暴走くらいにしか受け止めず、目は笑っていないが、談笑している人も多い。
「異常だな。」
ボソッと呟くと、まだ肩で息をしている身体をしっかりと起こす。
もう一人の方はその体型からも分かるように運動不足なのだろうか、息も絶え絶えで、言葉すら発する事ができていない。
口からはゼイゼイとノイズの混じった音を発するのみである。
崩壊したはずの屋根は既に修復システムが働き元のままになっていた。
「軍も来ているようだが、確かに大ごとにはなっていないようだ。」
僅かに考え込むように街の雑踏を見つめていると、大きく溜め息を吐く。
「あの場にいたら、軍に突き出されていたかもしれなかった……、助かったと言うことか。」
すぐにその答えを否定する。
「否、助けられたのだろう。」
キリッと先程までいた高級な喫茶店をただ見つめ直す。
「は、はい。」
小太りのフードの男は足をカクカクとさせながら、ゆっくりと立ち上がった。
そちらを向き直り、ガタイの良いフードの人物は呟く。
「今は無理だろう。
次がある、必ず、出直すぞ。」
言葉が終わるまでにガタイの良いフードの人物は裏道を奥へ向かって歩き出す。
慌てて、小太りのフードの人物は己の横を通り過ぎ、しっかりとした足取りで進む者の後を追いかけようとする。
次第に街の喧騒は普段を取り戻していった。