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マチルダの失態

「普通の人間に戻ったという事?」


 リスティーは松葉杖に寄りかかりつつ呟く。


 ここはカルテなどが山積みされ置かれている特殊な空間である。


 今では失われた秘術であるらしい。


ハイエルフの伝承では魔法で生み出された空間であるようだ。


 ジョルジュの口の中の空間と存在としては同じ亜空間である。


「うーむ、そうねぇ〜、はっきり分からないんだけどぉ〜、聖剣擬きがあった時の状態とは違うわねぇ、うふふ。」


 中腰の状態で妖艶に腰を振りながら、水晶の中を覗き込んでいる魔法医。


 右手で丸メガネの位置を調整するリスティーは、冷めた目で胡散臭いものを見るように水晶を眺めていた。


「でもねぇ、昆虫的な要素は消えてないわぁん。」


 その嬉しそうな声に怪訝な顔でリスティーが尋ねる。


「消えてないのか⁈


 何か影響は?」


「うーむ、繋ぎのぉ、聖剣擬きがなくなってるでしょうぅ?


奇跡が起こらない限りはねぇ、何も起こらないかもぉ〜。」


 頭を抱えて、リスティーはため息を吐く。


 傷に対しては活性化の治療を行なったものの、治りが著しく悪かったのは、その特殊な身体の構成のせいかもしれないと考えていた。


「無茶さえしなければ良いのだけれども…。」


 魔法医はそれを聞く由もなく、聖剣擬きの自分なりの解釈を述べていた。


 ドアにノックの音がして、呑気に魔法医がどうぞぉ〜と応えると、マチルダがドアから顔を覗かせた。


「本当に大丈夫かのぉ〜?」


 確かに前に軽い返答の後に気楽に入ると大手術中でてんやわんやだったを目撃して以来トラウマになっているのだ。


「取り込んではいないわ、どうぞ。」


 リスティーは苦笑いを浮かべながら、マチルダを招き入れる。


「水晶球のチェック中かのぉ?」


「ビンゴなのぉよぉ〜。」


 イマイチ不安な顔のマチルダにサムアップして背中で語る天然で呑気な魔法医を見るにつけて、マチルダはまだ馴染めていないなぁと心の中で吐露した。


「で、どうでした、ミーナの容態は?」


 リスティーがマチルダのスペースを開けるために松葉杖を使って二歩ほど下がる。


 それに合わせてマチルダも魔法医の後ろに近づいた。


「まだ目が覚めたばかりじゃからのぉ。


 傷の痛みはとれていないようじゃった。」


 マチルダの言葉にリスティーも魔法医の予想の通りで安心していた。


「なるほど、目覚めていたんですね……、それでは、取り出した破壊石のことも説明できましたか?」


「目覚めの時、少しフラフラしておったが、意識もハッキリしておった。」


 何か誇らしげである。


「故に破壊石を摘出した話をして、実物も見せておいたのじゃ。」


 ドヤ顔をして、マチルダは胸を張った。


「そうですね、破壊石はこちらで保管しておきましょう。


危険であることには相違ないわけですからね。」


 リスティーのその言葉にマチルダがハッとする。


 そして、一気に青ざめる。


 病室に置いて来たことを思い出したのだ。

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