破滅
ミーナは、身体を引き摺りながらなんとか制御装置を離れ、「精霊の笛」の格納されているオリハルコン製の部屋の手前まで来ていた。
「訓練は…、役に立つもの…、ね。」
開いた扉を掴み、這い登るように身を預けつつ、ふらつく足で立ち上がる。
全身が少しずつ機能を取り戻し始めてはいるものの、全身に残る負傷は癒えることはない。
傷を治すための道具も既にあの幾何学模様の部屋のどこかに飛び散ったことだろう。
強制的に治癒力を上げるだけでも今はないよりもマシであろう。
暗器の力が全く使えなくなった彼女に残されたのは、青い宝石の埋め込まれた破壊石だけだった。
なんとか中に入ると白一色の室内にある祭壇の側に人影が見えた。
「あ、ああ、ら、ランチェ!」
逃亡生活を8年もかけて過ごしたかけがえのない友を発見する。
既に視力も低下したミーナは間違いなくその存在を感知した。
周りの様子を伺う限り、あの幾何学模様に犯されているところはない。
焦る気持ちとは裏腹に足取りは幼児の歩行のようにおぼつかない。
バランスを崩し、立て直しながらも祭壇の前まで来て、倒れ伏す。
ガッと顔を上げ、這うようにしながらも倒れているランチェの側に近づく。
「ランチェ、ランチェ…!」
身体は恐ろしいほどに熱い。
呼吸はしていない。
何が起こったのか?
こんな時にでも冷静な判断を自分が行なっていることに嫌気が差す。
息を吸い込むと、躊躇うこともなく人工呼吸を施す。
何度か繰り返していると、ランチェはガボッと血の塊を吐き出した。
内臓をやられている?
早く処置しないと…、青ざめた顔でミーナは真剣に正解を探す。
そうしているうちにオリハルコン製の壁がグツグツと沸騰するように波打ち始めた。
制御装置の部屋で充満した幾何学模様の呪詛がこちらに押し寄せようとしているのだと、直感で感じる。
マジで時間がない。
脇から首を掴み引きずるように祭壇の前にランチェを連れて来るとギュッと抱きしめた。
「勇気を下さい。」
そう呟くと立ち上がり、手に持った破壊石を握り締め、壁を融解させて伸びてきた幾何学模様に向けて投げつけた。
投げるとすぐに身を屈め、ランチェを守るように覆い被さり強く抱きしめる。
一瞬空気が凍える程に冷たくなったと感じた瞬間、物凄い光量の発光と共に爆発が全てを白く染め上げた。
「ネコ師匠、早く見つけて……、ランチェが死んじゃう!」
激しい爆風が巻き起こる中でミーナは最後の望みにかけるしかなかった




