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新たなる道

「その聖霊王とは?」


 マチルダも先の大戦でも中立派として、戦いに参加することも神に味方することもなかった存在だと聞き及んでいた。


 マチルダの持てる知識で聖霊王について分かり易く説明するのならば、神聖な力を持ったエレメントも邪悪な力を持ったエレメントも統べることができる能力者のことを意味する。


 火、水、土、木、金の自然な存在を統べる者を精霊の王と呼び、光、闇などの神聖な存在を含める王を統べる者が聖霊の王と呼ばれると言う説もあると、マチルダは教えられてきた。


 極端なものでは暴君と同一視する説もある。


 それ程の存在が師であると言うハイエルフにもツッコミたい気分にもなるが、マチルダは少し気が楽になっていた。


 兎にも角にも確かな事は聖霊の王に会う事が解決の糸口なのかもしれないと言う事だった。


「では、どうすれば、その聖霊王とやらに会えるというの?」


 リスティーは腕を組み、離れたところからその話を訝しげに聞きながら呟いた。


「うーん、分かんないのぁ、もう300年くらいはぁ会ってないもん。」


 舞い降りた手掛かりが一気に霞へと変わった瞬間であった。


 マチルダは再び肩を落とす。


「その聖霊王が手掛かりでござるな。」


 カシミアは神妙な顔をしている。


「だが、のぉ、手掛かりと言えど…。」


 マチルダの言葉も歯切れの悪い。


「カエ…、ジョルジュ殿に検索してもらうしかないでござろう。」


 カシミアも戸惑うばかりである。


 魔法医は突然ハッとした顔を見せて、四つん這いになるとGのような速度で奥のカルテ置き場に走っていた。


 みんなの頭に大きな?が漂っている。


 カルテの部屋からいろんな形のカルテが飛び出してくる。


「あったぁ〜ん!」


 艶かしい声が聞こえて来る。


 間髪入れすぎ、魔法医が四つん這いでその場に帰って来る。


 最早なんで四つん這いってツッコミは不要であった。


この奇怪な魔法医には慣れるしかないようだ。


「これよぉ〜ん、これぇっ。」


 マチルダの側まで来ると文字通り目の真先に差し出す。


「それでは、近すぎて見えないだろ⁈」


 呆れたような声でリスティーは冷静にツッコミを入れた。


 顔に貼り付くくらいに当たっているチラシを読めと言われても、当然読むに読めない。


 マチルダは手にとり、じっと目を凝らす。


「こ、古代語…、全く読めんのぉ。」


 泣き顔になって、リスティーに懇願の視線を送って来る。


「ぇえーっ、読めないのぉ〜ん。」


 ほっぺたを膨らませて軽く抗議する。


「もぉ〜、仕方ないなぁ〜わん。」


 ちょっと嬉しそうなお姉さん風の眼力でみんなを舐め回す。


 カシミアですら、速攻で面倒臭い人だと分かる露骨な程に病んだハイエルフである。


 じっとりと嫌な汗をかいて、リスティーは引き攣った顔で冷静でいるように努めていた。


「じゃぁあ、ぇえーっと、読むわねぇん。


 急募、求むセンスのある貴方。


 カッコいくスタイリッシュな仕事に憧れませんかぁ?


 迷った?迷ったら、もうその資格がある!


 簡単な仕事ですよぉ〜。


 そんな貴方の今の幸せが何倍にもなるから!


 望みのまま、最高の時る間を過ごせるわ。


 ご心配なく、応募の条件はないから!


 次の聖霊王は貴方!


 貴方が望む自分に!


 聖霊王事務局。」


「聖霊王事務局?」


 確かに誰もがツッコミを入れる訳だ。


「なんなのじゃ、この胡散臭いチラシは⁈」


 マチルダは胡座をかいて呟く。


「犯罪の香りがプンプンするでござる。」


 胸筋をピクピクさせながら、カシミアは真顔で言い放つ。


「そんなものに引っかかるなんて、サイコパスですね。」


 リスティーは嘆かわしいと言わんばかりに眼鏡を光らせる。


 魔法医の顔が固まっている。


「どうしたんです?」


 リスティーは数歩手前を行きつつ、さり気なく尋ねる。


「このチラシぃ、就職が決まったよって師匠が私に残した手紙に入っていたんですぅ〜ん。」


 驚愕の事実に全員凍りつくのであった。

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