起点
邪神竜の尻尾を防いでいた右手で尻尾を掴み取った挙句、大鉈を握る左手に力を込める。
左肩のガードが弾け飛び、筋肉が盛り上がる。
更に胸部の鎧が弾け飛び、体が更に膨れ上がると、連鎖的に体を覆っていた残りの鎧は砕け散った。
その身体は既に数倍は優に超えて巨大化していた。
幾何学模様の闘気がそうさせたのか、煩悩に突き動かされる巨人へと身も心も変貌を遂げていた。
邪魔なものを捨て去るように右手で掴んだ尻尾を投げ放つ。
自由を得た尻尾でまた攻撃を加えようと、構えてみるが時すでに遅い。
今までの速度が嘘のような俊敏さで一瞬で間合いを詰め、邪神竜の尻尾の根元に移動すると、大鉈を振りかぶり、何一つためらう事なく一気に振り下ろす。
将軍の一振りは、いとも簡単に鱗の鎧ごと、邪神竜の尻尾を切断する。
苦悶の咆哮を上げ、のたうち回る邪神竜をゴミでも見る様に見据えている将軍。
そこにはもう絶対者という存在はなかった。
バーサーカーと成り果てた将軍にどれほどの心が残っていようか?
植え付けられた宿命を煩悩へと上書きされた将軍は淡々と任務を果たしていく。
やっとマ・カロンは立ち上がる。
今更、瘴気の結界を壊し、虚無の力に支配された将軍を止める力も時間もなかった。
やるべき事はそんな事ではない。
立っているのがやっとだ。
マ・カロンは限界を超えた身体を酷使しながら、マチルダ達の所へ歩み出す。




