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愛くるしいアンチ英雄は聖剣に呪われながらも神殺しを探してます。  作者: 艸加 有栖
呪いのぬいぐるみと気まぐれチビ魔女のドタバタ冒険譚
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追いかけて

「さて、どうしたもんだ。」


 城の地下から脱出し、地上に戻って来たばかりのマ・カロンは警備の手薄さに時既に遅しを悟り、思案をしていた。


 殆ど衛兵の姿すら見当たらないこの閑散とした状態は異様と言ってよかった。


 早朝とはいえ、人の気配が殆どしないのは大都市に似つかわしくない。


 それどころか都市の住人は戸をガッチリと閉め切り、震えている。


「テンパっているのは分かるが…、しかし、誰かが大暴れでもしたら、止められないぜ。」


 どこに向かったのも正確には分からない。


 最早追いつくとも思えない。


 ジョルジュとの通信も繋がらない。


 虚無の干渉があることは火を見るよりも明らかだろう。


 邪魔立てしてもらっては困ると言うことか?


 アイツらの本来の目的は何だ?


 姿を消した者たちは連れて行かれたとすると盾代わりか、生贄か。。。


 生贄がいるのは、何かを復活させるのか?


 さもなくば召喚するのだろうか?


 将軍が望むもの…。


 王の復活?


 王を復活させるために虚無が協力するか?


 ヤツらが得をする事がなければ、一捻り出来る人間を使う必要があるのか?


 「神殺し」が関わっているとしたら、どうなんだ?

 何がどう関わっているんだ?


 善意があるとは思えないしな、企みがないはずはない。虚無が得たい物とは何だ…、命…、あり得ない。


 「神殺し」の特性に関係しているのか?


「まあ、追いかけるしかないってこった。」


 どこに行ったかが分かっても時間の問題は解決できない。


「確か、元町長の話だと、魔の森ってのがあるって言ってたな。」


 ジョルジュの複製品からこの地方の地図を取り出すと、ざっと広げる。


 大都市の北西に魔の森「滅びの森(と記載されている)」の表記がある。


「賭けでしかないが、王の軍が亡くなったと言うこの森が一番怪しいだろうな。」


 さっと地図を仕舞い込むと、東か南だろうと可愛らしい顔で空を見つめる。


 痕跡を本気になって探し始める。


どの門を使ったかくらいは進軍を行なった痕跡を見つけ出すのにそれほど時間は要しなかった。


 痕跡から判別するに東の城門から北東に向かったんだろうなと推測できた。


 警備すらいない状況のため難なく城門を越えることも出来た。


 ほとんど開けっ放しに近い状態であれば、苦もなく逃げ出すことが出来よう。


兵が全て出払い、もぬけの殻にするのも非常識な感じだ。


 地面には大ムカデの歩いた跡がハッキリ残っている。


 この後を追えば確実に追うこともできよう。


 しかし、移動手段だと天を仰ぐ。


「いやっはー、エブリワン、大天使のメダちゃんさまであ〜る!」


 ピンクのジョルジュもどきが突然目から光を放つと、上空にゴリマッチョの六枚羽の天使が現れる。


とは言え、映像のようだ。


「辛気臭い顔は、ノン、ノン!」


 悍ましいほど煌びやかで鬱陶しい。


「心の底からハッピーを求めるであ〜る!」


 呆れ顔のマ・カロンが丸めた地図で肩を叩きながら、一人盛り上がる大天使メダさまの話を聞いている。


「まった〜、ノリが悪いのであ〜る!」


「悪いが、あんたの部下ではないからなあ。」


 マ・カロンの冷めた言葉に傷付く大天使。


「うん、もう、ラッキー逃げちゃうのであ〜る!」


 筋肉ポージングをしながら言われてもなあって顔でマ・カロンがため息を吐く。


 とは言え、今の状態では全力疾走してもとても間に合うはずもない。


「ああ、空でも飛べれたらなぁー。」


 ちょっとだけ大きな声で独り言つ。


「そのポジティブ、いただきました、であ〜る!」


 一陣の風が吹く。


 バタバタと忍者装束が棚引く。


「ピピッ。」


 幻聴が聞こえる程に疲れているのかと首を振りながら目線を下ろすと、そこには、期待に満ち溢れた表情のレッサーバードが立っていた。


「ピピ、ピピッ!」


 幻覚ではないようだ。


「お、おお!元気だったか!無事か?」


 2日前にあった時よりも僅かに大きくなったようだ。


 二人は熱い抱擁をする。


 クチバシでグリグリと頬を突かれても、マ・カロンはやけに、ご機嫌だった。


 暫しの抱擁の後、マ・カロンはレッサーバードの頭を撫でながら嬉しそうに呟く。


「逃げなかったのか?」


 無垢な瞳でマ・カロンを見つめる。


 まっすぐな瞳で見つめられる事が何となくくすぐったいように少し身をよじる。


「ピピッ、ピーッ。」


 そうだよとでも言っているんだろうと、マ・カロンは解釈した。


「あ、そうだ。


 また、乗せてくれないか!


 急ぎなんだ、頼む!」


 キョトンとした顔でマ・カロンを見ていたレッサーバードがクルッと背を向けた。


 そして、羽を軽くパタパタさせてみせた。


「乗って、いいのか…?


 おし、有難い!」


 マ・カロンはガッツポーズから、パッと飛び上がり、レッサーバードの首の根元に跨った。


「ピッピピッピー!」


 嬉しそうに鳴くと、マ・カロンの方に顔を向けた。


「悪いが、もう一つ活躍してくれ。


 相棒、この跡を追いかけてほしい。」


 コクリと頷いて、レッサーバードは加速姿勢に入った。


 慌ててマ・カロンは相棒の首に捉まる。


 体が青白く光り始め、土煙が上がり始める。


「ピーッ!」


と一声大きく叫ぶと、一瞬にしてその場から消え去った。


「そのポジティブ、実に素っ晴ら〜しいのであ〜る!」


 大天使は満足そうにハンカチを振りながら、感動に咽び泣き、天空へと消えていった。


 荷車のない身軽な身となったレッサーバードが信じられない程の速度で大ムカデの行進した跡に沿って走り始めた。


 希望の光はこの相棒の出現で再び繋がった。


 マ・カロンは僅かな希望に縋り付くように懸命にレッサーバードの首近くにしがみ付いた。

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