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【完結】魔王を殺された黒竜は勇者を許さない  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!


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22.大きく命運を分ける決断

 勇者と魔法使いの到着が、交易都市セルザムの命運を分けた。といっても、多少寿命が伸びた程度の話だ。魔族の侵略がよその都市へ向いたことで、領主は胸を撫で下ろした。


 魔王は以前に話し合いと称し、勇者との戦いを避けたと聞く。きっと勇者には、何か特別な力が授けられているのだ。領主は笑顔で二人を持て成した。彼らを逃すと、魔族が襲ってくるかもしれない。


 魔王を本当に倒したと思っていないが、勇者達が魔族への牽制として役立つと認識した。長く逗留してもらえば、自領を守れる。王都は軍を集めて守備能力を強化していた。同じ手法が取れない地方都市にとって、勇者の世話で同じ効果が得られるなら安いものだ。


 ご機嫌の領主に、ゼルクは淡々と切り出した。


「大変お世話になりました。明日、出立します」


「へ?」


 間抜けな声が漏れ、皿の上にフォークが落ちる。半熟卵の黄身に直撃し、白いテーブルクロスにシミを作った。だが、領主はそんなこと気づきもしない。今、出ていくと言ったのか? 重要な発言を噛み砕いて理解し、慌てて引き留めにかかった。


「まさか、王都へ向かうのですか? まだ王宮との話し合いがついておりません。危険です」


 王都へ向かわれたら、この交易都市セルザムが襲撃される。震える声で説得にかかる。しかし、ゼルクとメイベルは首を横に振った。


「話し合いがつかないのは、僕達が出向かないからでしょう。魔王を倒した証拠を示せば、終わる話ですから」


「ええっと、そうだ。馬や服など、旅に必要な物を用意しましょう。ですから」


 もう少し滞在しろ。言葉を尽くして引き止める領主に、二人は顔を見合わせた。何か裏がありそうだ。単に抑止力として引き留められたとは思わず、芽生えた不審感が囁く。危険だから離脱しろ、と。


「有難いですが、急ぎますので」


 丁重に断られ、領主は青ざめて震える。食事どころではなかった。


 逃げる支度を……そうだ! いっそ王都まで逃げ込もう。その際の護衛を頼んだらどうか。目的地は同じなのだし、我々と同行することで、勇者達にも利益がある。


 新しい提案に、ゼルクは渋い顔をした。馬車が一緒では足が遅い。しかしメイベルは別の点に注目した。領主一行が一緒なら、検問も形ばかりだ。街道を通って安全に王都まで行ける上、衣食住の心配がない。こそっと耳打ちし、ゼルクは決断した。


「分かりました。ご一緒しましょう」


 この決断は、最悪の結末を招き寄せるキッカケとなった。別々に動くことを選んでいたら、この地に滞在していたら……? もしもが通用しない一方通行の流れに従い、世界は進路を定めた。


 滅びる者は滅びるべくして、己で道を選ぶ。「あの時、こうしていたら」は、生き残った者だけが口にできる特権だった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 小人、久しぶりに勇者一行を見つけたきゅ。勇者軍が途中で解散したから小人王国軍も歯軋りしながら魔王様の側で夜営したきゅお。 魔王様曰く、小人王国軍は寝ていても歯軋りしていたらしいきゅ。 小…
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