表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】魔王を殺された黒竜は勇者を許さない  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/77

16.一言一句違わぬ情報

 思わぬところから、勇者一行の情報が入った。獣人族の村の一つに、彼らが立ち寄ったのだ。偶然なのだろう。まったく警戒した様子なく、与えた小屋で情報を口にした。


 あの辺りは元々、獣人族の領地だ。彼らは捕食して暮らす狩人のため、広い森が必要だった。今回、勝手に開発された村や集落を焼き払ったことで、森は彼らの手に戻ってきた。


 過ごしやすいよう工夫して家を建て、集落を守っている。長であるバラム達、戦士が留守にしている状況で、さぞ焦っただろう。だが上手に戦わず、外へと帰した。その上、彼らの話をそっくり情報として送ってきた。


「バラム、獣人族は素晴らしいな」


「有り難きお言葉」


「一度、様子を見に帰ってはどうか。心配だろう?」


「大丈夫だと言われたのに帰れば、疑っているのかと妻に尻を蹴飛ばされちまう」


 からりと明るく笑うバラムだが、勇者が立ち寄った報告が入った時は半狂乱だった。すぐに第二報が届き、上手に誘導できたと告げられる。安堵して腰が抜けた彼は、そのまま情報待ちを始めた。


 ガブリエルは送られた情報に、しっかり目を通す。バラムも同じで、どこかに危険の兆候がないか。心配そうに眺めていた。獣人族は耳の良い者が多い。ウサギや鹿など、草食系の種族はもちろん。獲物を追う肉食系の種族も聴力は発達していた。


 使わせた小屋に近づく危険を冒さなくとも、かなり離れた距離から会話の内容を聞き取ることが可能だ。寄せられた情報はガブリエル達にとって有益だった。


 まず領主などの権力者が、勇者を尊重しなくなっていること。禍歌を人族の呪文と勘違いしている点、これは今後の作戦で役に立つ。ガブリエルが最も重要視したのは、神官が同行出来ない点だ。


 魔族は治癒魔法が使えない。代わりに個々の治癒能力が高かった。この点が、前回の戦いで大きく影響している。


 傷付いても回復に相応の時間が必要な魔族と違い、人族は神の加護とやらで一瞬で回復する。体力も含め回復できる神官の魔法は、非常に厄介だった。


 だが、今回は神殿が勇者に協力しない。治癒魔法を使えない魔法使いと、力押しの勇者だけ。元勇者一行だった戦士達と合流するつもりのようだが、ガブリエルは学んでいた。人族は己に不利な譲歩はしない。


 かつての仲間であれ、落ち目ならば今の恵まれた環境を捨ててまで、ついて行く理由はなかった。合理的と呼ぶべきだろうが、魔族との大きな違いだ。魔族は過去の恩を必ず返す。その上で同族や親交のある一族が危機に陥れば、損得を考えずに協力してきた。


 魔王城へ攻め込んだとき、後方支援を担当した商人は、存亡が懸かっていない戦いに参加するか? 王族を敵に回して、過去数年付き合った程度の友人のために全てを捨てる? あり得ない。


「崩壊していく様を見るのは、本当に楽しいな。魔族に被害がない戦いも悪くない」


 正面切って戦う方法もあるが、それではすぐに決着がつく。一瞬で焼き払い、楽にする気はないのだ。傷つき、泣き喚き、守った人々に追い詰められ、絶望の中で息絶えろ。そうでなくては、策を練った甲斐がない。


 黒い鱗を閃かし、小柄な竜はにたりと笑う。見た目以上に大きく感じさせる魔王に、獣人族の長は静かに頭を下げた。











新年のご挨拶を入れる予定でしたが、地震がありましたので自粛します。ご無事でありますように!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ