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第68話 作品タイトル『聖なる光に集う、呪われし死者たち』

 


 さて、それではマナハスの聖女パワーでゾンビをお片付けってわけですけど、どうだろう、上手くいくかな。

 実際、一体ずつ運ぶのとかだるいから、成功して欲しいんだけど。


 すると、鍵を持ってここまで来てくれた会長さんが、床に倒れているゾンビらを見ながら口を開いた。


「あの、この……人たちは、死んでいるんですか?」

「ええ、彼らはすでに死んでいます」

「……殺したんですか」

「ん? あ、いや、私は気絶させただけですけど」

「え?」

「あー、まあ、ややこしいんですよね、そこのところは。——まあどっちにしろ、外に運んだら(とど)めを刺すつもりなので、私が始末することに変わりはないですね」

「殺してしまうということですか……? あの、彼らを元に戻したりとかは……その、彼女の力では……」

「それは、会長さんも聖女様の奇跡を信じてくれたってことですか?」

「いや、それについては……すぐに結論は出せません」

「まあ、聖女様の奇跡とて万能ではないということです。さすがに、死者の復活までは、不可能ですね」

「……死者の復活、ですか? 治療とかではなく?」

「……会長さんは、あの者たちの——ゾンビの体を調べたことはありますか?」

「いえ、無いですけど……」

「調べてみれば分かりますけど、彼らはすでに死んでいるんですよ。死体なんです。それが動いているんです」

「死体……?」

「ええ、呼吸も脈拍もないですし、体は冷たくて、死体と言う他ない感じなので。ですから、彼らに対して殺すという表現を使うのは適切ではないかもしれないですね。——まあ、それじゃなんと言えばいいのかと言われても、困るんですけど……」

「……では、聖女と名乗る彼女の力でも、彼らはどうにもならないのですか……?」

「はっきりと言っておきますけど、無理ですね。ああなってはもう、退治するしかありません」

「……そうですか」

「信じられないですか?」

「それは……そうですね、あなたにそう言われたからと言って、すぐには信じられないですよ。現に、ああして動いているのを見たら、とても、死んでいるだなんて。……あの、その、元に戻すのは不可能だってのは、どういう根拠から判断しているの?」

「……聖女様がそう判断されたので、我々はそれを信じるのみです。確認してみれば、確かに彼らに生命反応はありませんし、彼らが死人だとするならば、元の人間に戻らないのは、むしろ自然なことではないですか?」

「それは、そうかもしれないですけど……でも、それならなんで、ああやって動いているの……?」

「——世の中には、人間の理解が及ばないことが数多くありますが、あなたの問いはまさにその筆頭ですね」

「……つまり?」

「我々にも分かりません。……ただ、真っ当ではないおぞましい力が働いていることは確かでしょう。あれほど邪悪と表現するに相応(ふさわ)しいモノも他にありませんよね」

「その点には私も同意しますけど、……!」


 会長さんとおしゃべりしているうちに、マナハスが始めたようだ。


 マナハスは杖の先にある光輪(こうりん)を飛ばした。

 光輪は、体育館の床に倒れているゾンビ達の上を順に巡っていく。

 そして、光輪が上に来たゾンビの体は、光輪に引かれるように浮き上がり、まるで見えない糸で光輪からぶら下がるようにその下に浮き従う。

 そうして、まるで“てるてる坊主”か何かのように、光輪の動きに合わせて床のゾンビが次々浮き上がっていき、光輪の元に(つど)った。


 その様相は……確かに、手作業で運ぶのとは比較しようの無いくらい衝撃的だろう。

 一つの光の輪の下に集う顔色の悪い死体達——趣味の悪い現代アートか何かかな? 悪い夢に出てきそうなモチーフが完成しちゃってるよ。

 ……ま、まあいいか。これでいっぺんに楽に運べるんだからね。——おっと、マナハスのスタミナゲージが減っていっている。途中で落とすのは色々とやばいから、とっとと外に放り出しちまおう。


「な、何よ、これ……ちょ、ちょっと! ここで変な儀式を始めないで下さいよっ……!」

「外に運び出すだけですよ。では、鍵をお願いします」

「……中野くん、お願いね」

「ええっ!? 俺、アレについて行かないといけないんすか……っ!?」

「行きましょうか、中野くん」


 そうして、私とマナハスと中野くんは体育館の出入り口まで向かう。

 途中、中野くんは「俺、生け贄とかにされないですよね……?」とかなんとか言ってたけど、私がにっこりと微笑み返すだけで何も言わなかったら、露骨に顔を青ざめさせていた。


 ——もうっ、中野くんで遊びすぎでしょ。


 扉についたので、中野くんに鍵を開けてもらう……はずだったが、なんか手を震えさせてなかなか鍵が刺さらなかったので、仕方なく私が代わりに鍵を開けて扉を開いた。


 すると、扉の向こうで待機していたゾンビが襲いかかってくる——が、抜刀と同時に斬り捨てる。

 ここはもう外なので、スタンは必要無いし、コイツがいる事はすでにマップで把握していた私には驚きも無い。

 他にも周囲には数体のゾンビが居たが、すべて一刀の元に排除する。

 私の戦いを見たからか、背後から中野くんの悲鳴のような声が聞こえる。いや、これは横を例の趣味の悪いアート作品が通過したからかな。もしくは、その両方かな。


 マナハスが運んできたゾンビたちをその辺りに放り出す。そして、中野くんに言って扉を閉めてもらう。

 ま、一応、中野くんの前ではマナハスもまだ聖女モード入ってたから、彼が居ない方が話しやすい。


 履く暇の無かった靴を取り出して、マナハスに渡しつつ自分のも履きながら、私はマナハスに話しかける。


「あ、靴……あったんだな」

「回収してたから。——あー、なんか普通に運べたみたいだね」

「ああ、そうだな。見た目はアレだったけどな。まあ、気絶して動かないようになってたからかな? 元々、ゾンビって体が死体だから邪魔な動きが少ないっぽいし、それで気絶してたら完全に動かなくなるから、なんか運べたわ」

「なるほどね。うん、さて、それじゃ、このまま行こうか? ——あ、いや、その前に一つ用意しときたいものがあったんだった」

「用意? 何を?」

「まあ、ちょっと探してみるから……その間マナハスは、ここのゾンビ達を回収して片付けといてくれない?」

「うーん、ま、確かに、これはな……」


 体育館の入り口の周りには、結構な量のゾンビの死体が散らばっているのだ。

 さっきマナハスが持ってきた分以外にも、ここにきた時に襲ってきて倒したやつとか、まだ回収してなかったし。先に中入りたかったからね。

 生存者を助けてここに連れてくるにしても、このゾンビ達はどうにかした方がいいっしょ。


「運んできた奴らはまだトドメ刺してないけど、それは私がやっておいたがいい?」

「……いや、私がやるからいいよ。別に私は弾を使うわけでも無いし、何の問題もないぜ」

「……そう。それなら、頼むね」


 もうゾンビを殺すのに対しては大丈夫ってことかな、マナハス。まあ、ここに来るまでにすでにだいぶ倒してるしね。

 つーか、一番倒してるのがマナハスなんじゃないだろうか。特に魔力弾で大量にぶっ飛ばしたやつが大きい。あれは酷かったもんね、色々と。

 さて、それならゾンビはマナハスに任せて、私は準備するか。



 私が準備したいものとはつまり、暗闇で視界を確保する方法、である。

 もはや辺りは真っ暗で見えなくなっている。視界を得るためにライトを使っても、照らせる範囲に限りがあるし、ゾンビも呼び寄せることになる。

 なので、出来ればライト以外の方法を見つけたいと思っていた。


 まあ、なんかショップとか探せば、暗視装置みたいなやつとかあるんじゃないかなーと考えたのだ。

 ショップの品揃えは、基本的に戦いに関するモノって感じなんだけど、暗視装置はその範疇(はんちゅう)に入ると思うので。

 後はスキルの方に、もしかしたら暗視の能力みたいなものがあるかなー、とも考えた。

 だけど、スキルはインストールの手間があるしポイントも結構かかりそうだから、装備で(まなか)えるなら、とりあえずはそっちがいいかなと思うところだ。


 なので私はまず、ショップを探してみる。

 暗視装置、暗視ゴーグル……場合によっては、暗闇でも見えるようになる薬——とかってパターンもあるかな……?

 まあ、いつ効果が切れるか分からない薬よりは、ゴーグル的なやつがいいかなぁと思うんだけど。


 ——でも、考えてみれば、ゴーグルもなんか動力源とか必要じゃないの?


 あー、確かに。普通に考えたらバッテリーとかあるよね。うーん、その辺どうなってるのか……まあ、まずはあるかどうかなんだけど——あ、コレじゃね?

 あったねゴーグル。効果は——暗闇でも見えるようになる、と……コレだな。

 値段もそれほど高くはないね。さて、どんなもんかは使ってみないと分からないですけど、バッテリーについてだけは買う前に確認しておきたい。


 ——ふむ、なるほど。これMP使うんか。

 どうやら起動している間、MPを消費していくらしい。別売りで電池みたいなのでもあるのかと思ったら、自前の青ゲージで使えるわけね。

 ……いや、別売りの電池的なのもあるみたいだぞコレ。それを使えばMP消費無しでも使えるのか。ふーん。


 どっちがいいんかね、コレは……。

 うむ、まあ、私的には、バッテリーまでポイント使って買うよりは、MPで済ませてしまいたい。でもMPの燃費が良くないようだったら、バッテリーも買わざるを得ないよなぁ。

 ま、使ってみてどれくらいの消費具合なのか見てみるしかないか。よし、とりあえずマナハスと二人分購入じゃ。


 そうして購入した暗視装置をさっそく取り出してみる。

 コイツの見た目は……アレだな、なんかレーザービームとか出そうなゴーグルだね。


 ——何よソレ。


 X-MENのサイクロップスが付けてるやつ。あんな感じ。


 ——ガチでビーム出るやつじゃない。


 まあ、実際はアレ、ゴーグルというよりあの人自体がビーム出す能力者で、ゴーグルはそれを制御しているだけ、みたいな感じだったと思うけどね。


 ——細かい解説おつ。


 さて、それじゃさっそく付けてみますかね。



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