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第67話 バディは大事って、はっきりわかんだね

 


 私が会長さんの元から離れてマナハスの元に向かうと、藤川さんと越前(えちぜん)さんもこちらにやってきた。


「えぇと、これからどうするんだい? ——というか、ここの扉って閉まってなかった感じ……?」

「ああ、そのことなんですけど、越前さんと藤川さんは、ここに残ってもらえますか? 私とマナハスで、学校の敷地内のゾンビを片付けようと思うので、二人にはここをお任せしたいんですけど」

「ああ、まあ、俺はそれで構わないよ。ここにはマユリも居るし……でも、君は大丈夫なのか? 彼女と二人だけで」

「ええ、ゾンビ相手なら二人で十分だと思います。こう言ってはなんですが、足手まといになる避難者の方達はここで安全に待機してるわけですから。それなら、二人いれば問題無いかな、と」

「ああ、なるほどね……確かに、それなら大丈夫かな……?」

「あの、火神(かがみ)さん、私もここに残るんですか……?」

「うん、なるだけ単独行動は避けたいからね。ここにも二人に残って欲しいんだ。残るのが越前さんと藤川さんなのは、まあ、家族がここに残っているのもあるし。あと、藤川さんの場合は、ここの出身でしょ?」

「はい、そうですけど……なので、私なら校内を案内できますがっ」

「それは、私も考えたけどね。だけど、この学校にはやっぱり学校関係者も多く避難してると思うんだ。それで、もし、その人達がゾンビになってたとしたら……藤川さんは、知り合い——いや、元知り合い、かな……まあ、それを撃つことになるかもしれない」

「あっ……」

「だから、まあ、藤川さんにはここに残ってもらった方がいいかなって。私とマナハスはこの学校とはなんの関係もないから、その点は問題ないし。それに、ここには藤川さんのお母さんもいるから、やっぱり離れるのは心配だろうと思って」

「……お気遣い、ありがとうございます。そうですね、確かに私じゃ足を引っ張るかもしれません……」

「まあ、今回はそういう配置がベストと思っただけだから、気にしないでね。それにここに残ったら、さっきの会長さんに色々質問とかされる気がするんだけどさ、その場合も、大人の越前さんと元から知り合いの藤川さんの方がいいと思ってね」

「えっ、俺っ?」

「そ、それは……私、常盤(ときわ)さんとはそんなに仲がいいというわけでもないので、どうでしょう……」


 まあ、むしろ知り合いの方が難しい場合もあるよね。さっきも変な宗教に入ったとか言われて心配されてたし。

 でもまあ、私とマナハスよりはマシなんじゃないかと思う。というか藤川さんもアレなら、もう後は越前さんに頑張ってもらうしかないね。当の本人は凄い困り顔してるけど。

 人選理由はさっき言った通りなんだけど、まあ、私がここに残りたくないって理由も多分にある。それは当然ある。


 まあ、ベストな割り振りじゃないかと思う。やっぱ、なんかあった時を考えれば、二人組であった方がいいとは本気で思っている。

 私だって、ここに来るまでにポカやらかしたし、あの時一人だったら普通に死んでた可能性ある。助けてくれるバディはやっぱり必要なのだ。

 あの経験が無かったら、うっかり効率重視の作戦を立てて、ここに最低限の一人を残して後は三人で手分けしてやろう、とか言い出していた可能性ある。ゾンビ程度なら一人でも対処できるでしょ、とか思って。


 ——ゾンビを舐めすぎでしょ。夜だから辺りは暗いし、相手も活性化しているというのに。


 そうだよ。ゾンビを舐めてはいけない。万全の準備——とまでやる時間はないけど、最低限必要な装備というか、用意しなければならない要素がある。それが用意できなかったら正直、探索は明日に持ち越した方がいいだろうと思うくらいのヤツ。

 出来ることなら、探索は今すぐにやったほうが安心して眠れるし、生存者を救える可能性も上がるだろう。

 ……それに、私としても、この体育館内で夜を明かさないために、校内のクリアリングは必須なんだよね。


 さて、それではその準備を……する前に一応、マナハスの意思を確認しておくか。

 私が勝手に校内探索行くって決めちゃったわけだけど、マナハスが嫌がるなら、その時は彼女にはここに残ってもらう。それは当然だ。

 しかし、そうなると私一人で行くことになるか……うむ、そん時は越前さんでも誘うか。ここにも二人置いとけば、彼もここから離れることを了承してくれるだろう。


「そういえば、マナハスの意思を聞いてなかったけど、どう? いける? 嫌なら別にここに残ってもいいよ、当然ね」

「……そん時は探索は無しにするのか? まさか、一人でも行くとか言わないよな」

「その時は、越前さんに頼もうかな」

「俺かい? ……まあ、俺は構わないよ。安全の為には必要だと思うし、ここに居れば、まあ、マユリも大丈夫だと思うし。二人残るなら、問題ないだろう。……そう考えたら、やっぱり俺が行くべきじゃないかな? 夜の探索は危険だ。本来なら、大人の俺が一人でやるべきなんじゃ……?」

「一人はダメですよ、危険過ぎます。あと、私が行くのは決定です。……ここに残りたくないんで」

「……ああ、君は交渉事は苦手だって言ってたもんね……俺は、あまりそうは思わないんだけど。さっきも、なんやかんやいって話をまとめていたし」

「……本当にそう思いますか?」

「……いや、まあ、少なくとも、俺たちを追い出そうという流れは無くなったみたいだし、それで十分じゃないか?」

「どうでしょうね。あの会長さんのことだから、まだ諦めてないかもしれません」

「あそこまでやったのにか? 一応、私らが来たお陰で噛まれてた人が二人も治ったわけだし、さすがに受け入れてくれんじゃないの? まあ、私らがめちゃくちゃ怪しいのはどうしようもないけど、それを差し引いても、メリットは大きい……と、思うん、だけど……」

「ちょっと自信無くなってるじゃん」

「いや、改めて考えたら、私ら怪しすぎるってか——やっぱ受け入れ渋るの当然な気がしてきた」

「ちょっと、マナハスは聖女様としてドーンと構えててよね。私たちの中で一番あの会長さんに対抗できるのがマナハスなんだから」

「いや、私かよ」

「あの会長さんは大人相手でも怯まなそうだし。越前さんでも、なんか——なぜ銃なんて持ってるんですか!? とか言われてやり込められそうで」

「ああ、そうだね……俺もそう思うよ。だから、あまり交渉事には期待しないで欲しいかも……やっぱり、俺が外に行くべきじゃないかな?」

「会長さんと話すのがそんなに嫌ですか……?」

「そんなことは、無いとは言えないかもしれないけど……」

「まあ、それもマナハス次第ですか。——んで、どーなの、マナハス?」

「ああ、行くよ。やっぱ、まだ校内にゾンビ残ってるのにここにいても、なんか休まらないし。生存者だってまだ残ってるから、助けた方がいいだろうし。それに……私も、あの会長さんと上手く話せる自信は無いしな」

「どうかな、マナハスならいける気がするけど」

「勘弁してくれ……無理だって」

「魔法使ったらめっちゃビビると思うよ、あの会長さん。うーん、つくづく、人間そのものを持ち上げられないのは惜しかったよね」

「おまえ……会長さんを魔法で脅かそうとするなよ」

「でも、ちょっとマナハスだって見てみたくない?」

「……いやいやダメだって」


 ちょっと考えとるやん、その間は。自分だって魔法使って人を驚かせるの楽しんでるんダロォ? さっきだって、治療してる時、実は結構、周囲の反応楽しんでたの私は気がついてたぞぉ。まあ、私も楽しんでたけどナ。


 ——ノリノリだったでしょ、自分も。


「じゃあ、そういうわけで、二人はここに残るということで。——ああ、それで、このゾンビ達を片付けないといけないんですよね……。まあ、普通に手作業で運んでいくしかないか……。越前さん、すみませんが手伝ってくれませんか?」

「ああ、それは構わないけど」

「私も手伝いますよ、火神さん!」

「そう? 別に無理しなくていいよ?」

「いえ、それぐらいは私、役に立ちますよ!」

「私も手伝うぞ」

「いや、マナハスは聖女様だからさ、地味な作業はしなくていいよ。てか、しない方がいいかなー」

「え、でも私だけ何もしないってのも……。——あ、んじゃあさ、コイツら魔法使って運べば良くね? それなら、なんかむしろ派手だし、いいんじゃないの?」

「魔法って、念力で持ち上げるってこと? あれってゾンビ本体は動かせないんじゃ無かったっけ?」

「まあ、そうなんだけど。でもそれは動いてるゾンビの事で、今のコイツらって気絶して動かないじゃん。それなら、いけるかもしれないって思ってさー」

「まあ、それでいけるなら楽だし、助かるけど……」

「とりあえず、試してみる?」

「うん、じゃあやってみて」


 と、ちょうどそこに会長さんが鍵を持ってやって来た。中野くんも一緒だ。


「あの、鍵を持ってきましたけど……」

「ありがとうございます。ちょうど今からこのゾンビ達を片付けるところだったので、ついてきてもらえますか?」

「わ、分かりました」


 さて、それじゃ聖女様の手を借りて、ぱっぱとコイツらを片付けますかね。


 

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