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第66話 おらっ、今夜のパーティー会場はここですかっ!?

 


 体育館の中に唐突に侵入して来たのは……ゾンビだった。


 ……えっ、なんで? なんでフツーに入ってきてるの? 騒ぎすぎた? てか扉は? 閉めてた……よね、あれ、私は閉めてないけど、中野くん……?

 いや、今はそんなことを気にしている場合じゃない。


 私はすぐにその場を飛び出してゾンビの元に向かう。

 同時に、体育館内の人たちが、パニックを起こしたように一斉にゾンビから距離を取ろうと、体育館のステージ側の方へ移動し始めた。

 ゾンビはその動きに釣られて動き出そうとしたが、私が目の前に来たことでこちらに反応して止まる。しかし、それは一瞬のことで、すぐに私に向かって襲いかかってきた。


 私はゾンビの飛びつきを後ろに大きく飛びのいて(かわ)す。

 そうしながらチラリと横を見れば、拳銃を構えた越前(えちぜん)さんと藤川さんがこちらに移動してきていた。——が、私は手を挙げて二人を制する。それから、その手に抜き身の刀を出現させる。刀はすぐに紫電を纏い、バチバチと放電し始める。

 この場で普通に殺すのは、ちょっとやめた方がいいかな、という判断だ。なので、まだスタンに慣れていない二人には手を出さないでもらう。


 ゾンビはさらに私に襲いかかってくる。その動きは普通に速い。一般的な人間の動きと大差ない。——やはり、夜だから動きは速いのか。

 そんなことを考えながら、私はその飛びつきを躱すと同時に攻撃している。頭部を打たれたゾンビは、すぐに動きを停止させた。


 ふう、と一息付いたのも束の間、出入り口の方からはさらに追加でゾンビ達がわらわらと現れている。

 私はそいつらが体育館内に広がり出す前に決着をつけるべく、一気に距離を詰める。

 ちょうど脳内で流れ続けていた例のOPソングはサビに突入していた。——いくぜっ、ゴーセイントゴー!


 私は襲い来るゾンビ達の攻撃を、躱しざまに反撃していく。連中の間をすり抜けていくように止まらずに進む。地味に体育館の床に靴下だと滑るのだが、その滑りすら利用して、私はスルスルと移動しながら連中を倒していった。

 私はそのまま、出入り口の前まで進んでいく。そうして確認してみると、やはり扉は開いていた。

 ドアに近づいていくと、開いているドアの間からまさに今、新たに一体のゾンビが内部に入ってこようとしていた。

 そのゾンビの頭を私は軽く小突いて追い返すと、すぐに扉を閉める。


 さて、これで一先(ひとま)ずは大丈夫かな。ちょうど脳内ソングも終了したので、私は落ち着いて思考を巡らせる。

 てか、なんでこの扉開いたんだ? 鍵掛けてたんじゃなかったの? いや、私らが入ってきた時に開けたけどさ、その後は……


 扉を確認してみたら、こちらから閉めるためのツマミのようなものは付いてなかった。あれ、ならどうやって閉めるんだ?

 ただ、普通に鍵穴はあった。という事は、鍵を使わないと内側からも閉められないのか。

 それで、鍵はどこなんや。とりあえず鍵も閉めてから戻らないと意味ないしなぁ、どうしよ。


 と、そこにマナハスが登場した。


「マナハ——聖女様」

「二人きりの時は聖女様はヤメろし。……ゾンビは全部倒したみたいだな」

「二人は?」

「一応、倒したゾンビを見張ってるよ」

「そう」

「コイツら、どうやって入ってきたんだ? 扉は閉まってた……よな?」

「とりあえず、マナハス、この扉の鍵、閉めてくれる?」

「え? ……ああ、これやっぱ鍵が必要なのか。うむ……」


 ガチャ、と音がして鍵穴が回転した。……なるほど、ここに入る時にマナハスが鍵を開けるのに時間かかってたのは、ツマミ的なのを捻るだけじゃ開けられなかったからか。

 ん、てことはマナハスの念力って、鍵無しで鍵穴を開けられるってこと? それはなんか凄いな。めっちゃ悪よ——便利だね。


 ——今、悪用できるって言おうとしたわよね。


 まさか、聖女様がそんなことするわけないでしょ。まあ、二人の時は聖女ではなくただのマナハスだから、そん時ならいいよね。誰も見てないからね。


 しかし、鍵を閉めたけど結局はまた出て行くつもりだし、あのゾンビの気絶体たちも外に出さなきゃだよね。放っておくわけにはいかないし、始末するにしても、人目につかない外に出してしまいたいし。

 ま、とにかく会長さんのところに戻るか。さっきは話が途中になっちゃったし、一言(ひとこと)、外に出るってちゃんと伝えておかないとね。


 私は会長さんのところに戻る。

 会長さんは中野くんと共に、ステージまで下がったみんなの先頭にいた。私が近づいていくと向こうもこちらにやってきたが、しばしの距離で止まった。


 彼女に話しかけようとしたら、彼女の視線が露骨に私の右手に向かう。——あ、刀をしまうの忘れてた。

 ま、いいか。てか、どうせこれから使うし、このまま装備しとくかな。

 私は鞘も呼び出して刀を収めると、それをベルトに差しておく。

 さて、気を取り直して会長さんに話しかけよう。


「あの——」

「あなた……何なのっ?! 今、鞘が……! ——いえ、そもそもなぜ刀なんて持って……いや、藤川さんも銃なんて持ってたわ。……これは、一体、どういうことなの……?」

「……まあそれはともかく」

「それはともかくっ!?」

「少なくとも、さっきので私が戦える事はお分かりいただけましたよね?」

「それは……分かった、けど……」

「私と聖女様なら、外に出ても大丈夫です。我々が不在の間はあの二人がいるので、二人に任せればここの守りも大丈夫でしょう。——それで、あのー、ここの出入り口の鍵について、ちょっとお聞きしたいんですけど……」

「……鍵? 鍵はあなた達が勝手に開けて入ってきたんでしょう……?」

「いや、まあ、そうなんですけど……鍵は、今はどこにあるんでしょうか?」

「鍵は、勝手に誰かが使わないように別室でまとめて管理してますけど。——ちょっと待って、あなた達が入ってきてから、誰も鍵を閉めてないわよね……!?」

「……中野くん?」


 私は、とりあえず中野くんのせいにならないかと思って、彼の方に話を振った。


「えっ、ええ!? 俺っ!? あ、いや、確かに俺、鍵を取りに行こうとこっちに戻ってきて……」

「それで?」

「いや、なんかその話を切り出す前に色々あったから……その……」


 忘れてたんすね。ま、しゃーないか。色々あったからね。

 つーか私も、鍵がどうとか全然意識してなかったし。てっきりツマミがついてて回したら閉まると思ってたし。うっかりマナハスは鍵のことなんてなんも考えないで行っちゃったし。中野くんも途中でその事忘れちゃってるし……。

 ま、まあ、結局なんの被害も無かったからいいよね。


「……まあ、忘れちゃったのはしょうがないですよ。結局、被害も無かったし、切り替えていきましょう、中野くん」

「ええぇ! これ、俺が悪いんすかぁ……?」

「……中野くんにも責任はありますけど、元はと言えば、あなた達が勝手に入ってきたからでは……!?」

「……まあ、我々にも責任が無いとは言えないでしょうね。しかし、そこは些細な行き違いということで……。鍵の管理については、当然こちらはまったく把握していなかったので……ええ、今後はこのようなことがないように気をつけなければいけませんね」

「……はぁ、もう……って、それじゃ今も鍵は開いたままなの——!?」

「あ、それは大丈夫です。さきほど、聖女様に閉めてもらったので。——それで、これから外に出るに当たっては、鍵は誰かに管理してもらいたいのですが。出入りの際に、いちいち聖女様に奇跡を使ってもらうのも(はばか)られますので」

「……本当に、外に行くつもりなんですか……?」

「はい。行くのは私と聖女様の二人だけなので、皆さんに迷惑はかけませんよ。——ただ、出入りの手配だけお願いしたいんですけど」

「それは中野くんがやってくれますよ。ですよね、中野くん?」

「あ、はい、やらせていただきます……」

「よかった。それなら鍵の準備をお願いします。こちらも準備したらすぐに出発するので」

「そうですか……あ、あの! 本当に外に行くなら、私——」

「ああ、あのゾンビ達については大丈夫です。出る時についでに外に運び出しますので」

「——あ、そうですか、ありがとうございます……あ、いや、あの——」

「それじゃ鍵の件、よろしくお願いしますね。——準備があるので、私はこれで」

「……あっ」


 そう言って、私はそそくさとその場を離れる。

 なんか会長さんが言いたそうにしていたけれど、今は質問に答えている暇はないので、すんません。


 私はマナハスの元に向かいながら——さて、外に出る前に絶対に準備しておきたい物があるんだけど、あるかなぁ——なんて考えていた。



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