第47話 これがっ、まっふふぉぉぉううう!!
ゾンビの始末と回収がすべて終わったので、私(と越前さん)はマナハスたちの元へ向かった。
そうして、マナハスたち三人が集まっているところに再び集まった、パーティーメンバー全員+マユリちゃん。
さて、マナハス達の様子を見てみれば……なんだか、マユリちゃんがマナハスを見る目が変わっているようなのですが。
どうもマユリちゃんがマナハスに向ける好感度が増している気がする。なんだろう、マナハスってば、なんかいい感じの魔法とか成功させたんかな。
とりあえず、二人の練習の進捗はどんなもんか聞いてみよう。
「や、店内の掃除は終わったよ。それで、二人の方はどんな感じ?」
「あ、はい、お疲れ様です、火神さん。私の方は、黄色いゲージを使って走るっていうのを試してみたんですが、中々上手くいきません……。力を引き出せなかったり、できても制御できなくて転んじゃいます……でも、バリアのお陰で怪我はしてないんですけどね」
「私はアレだ。輪っかを飛ばす攻撃、できるようになったぞ。それからアレだ。青ゲージ——魔力か? これ使う方もやってみた。——いや、攻撃じゃなくて。防御用の魔法というか……攻撃は試せないから他を試してみたら、なんか、魔力で盾を作るみたいな? そんなやつを成功させたんだよね。——で、これさ、どれくらいのもんか試してみたいから、ちょっとその刀で攻撃してみてくれない? ま、軽くね、最初はね」
へえ、魔力の盾ねぇ。面白い。防御の技もあるのか。安全の為には防御技も大歓迎だよ。マナハスにはしっかり使いこなしてもらいたいね。
強度については私も気になるところだから、試すのは構わないけど。実際、どんなもんなんだろうか。私の斬撃は恐竜くんにも効くくらいだから、なかなかのもんだと思うんだけどね。
——実際は奇襲とか以外、ほとんど弾かれてなかったっけ。
……まあ、最終的には倒したから、効果はあったってことさ。
それで、藤川さんの方は上手く走れなかったか。私も最初にやった時は中々バランスとるの大変だった。まあ、そう言いつつ、割とすぐ慣れたけど。ただ、この辺は個人差あるんでしょうね。
ま、藤川さんと越前さんは銃だから、身体能力については正直、必要無いと思うし。ゾンビ相手ならね。だからその辺は追々、慣れていけばいいんじゃないかな。
「オッケー、それじゃ盾とやらを出してみてよ。強度実験といこう」
「よし来た」
そう言って、マナハスは杖を両手で握り集中する。
しばらくの後、「はっ!」という掛け声と共に、杖を突き出す。
すると、マナハスの杖の前方に、青っぽい半透明の板のような物が出現した。
——これが盾か……。へぇ、中々カッコいいじゃないの。
私が繁々と眺めていると、マナハスが少し焦ったように、
「いや、これ発動中ゲージ両方減っていくからさ、なるだけ早よやってくれ……」
ああ、MPとSPの両方減るのか。多分SPのが先に尽きるだろうけど、つまり、発動時間はSPが尽きるまでで、どれだけの回数使えるかはMP量による、と。
それじゃ、消える前に攻撃しませんとな。
そりゃあ——!
私は右手に持ったままの刀を、半透明の壁に打ちつける。——まずはスタミナによる強化無し。
ガキンッ——!
これは、あっさり弾かれる。
なら次はこれはどうだ! うおらぁ!
私はスタミナにより身体能力を強化して、再び刀を打ちつける。
ガキッッ——!!
しかし、これも弾かれる。
ふっ、中々やるな……だがこれは、どうだっ!
私は刀にもパワーを纏わせて、強化した身体能力でそれを打ちつける。
バチィィィン——!!!
と、甲高い音が鳴ったが、これも弾かれた。
マジかっ! 魔力の盾つよっ!!
すると次の瞬間、フッ——と目の前の半透明の壁は消失した。
これは……いや、違うな。スタミナが切れたから消えたんだろう。私の攻撃によって消えたわけではない。
ちなみに、パーティーメンバーのステータスは表示しようと思えば、私の視界にも表示できたりする。つまりは各人の三色のゲージが私の視界にも今出ている。
これは、リアルタイムで変動する様子を本人以外に私も確認出来る。さっきも私の攻撃を受けきった後にスタミナが切れてたから、私の攻撃はちゃんと防ぎきっていたということだ。
でもこれ、この魔法の盾……今の私の本気の攻撃も防げるんだったら、かなり使えるんじゃないの。——流石に、MPも消費する技は強力だったか。
私は未だにMP使う技といえば、スタンモードくらいだし。アレはむしろ、相手を傷つけないようにダメージを無くすためにMPを使う技だからなー。他の使用例といえば、精々、アイテム取り出したりとかに使うくらいだし。
「いやー、全部防がれたね。中々強いじゃん、この青い盾。これは使えるんじゃない?」
「だなっ! まあ、長い間は持たないんだけどね。黄色いゲージがなくなるからさ。あと、これ出してる間は動けないんだよなー。集中してないと消えそうになるから。うーん、でも、慣れたら出したまま動いたり出来ないかなー」
「そこら辺は練習だね。盾がこの性能なら、攻撃の方も気になるところだけど……それは後で試そうか」
「そうだな。ここじゃ試せないわ。店壊しちゃうかもだし」
「それじゃ、もう一つの……輪っかを飛ばすやつってのは、どんな感じなの? それも見せてよ」
「おう、いいぜ! 何かにぶつけたわけじゃないから威力は分からんけど、多分強いぞ!」
「ふふっ、何ソレ?」
「いや、何か強そうなんだよ、見た目が」
そう言って、マナハスは杖を構える。すると光りだす輪っか。何やらパワーが溜まっているような……これは私が刀にパワーを込める時と一緒だな。
なるほど、アレにパワー込めて飛ばせるなら、そこそこのダメージにはなるだろう。謎のパワーは武器のダメージを強化する。少なくとも、ゾンビ程度は楽勝のはず。
輪っかにはパワーが溜まりきったようで、まさに光輪とでも言わんばかりに光り輝いている。
そしてマナハスは「そぉいっ!」という掛け声と共に杖を振る。
すると光輪は、その飛翔する軌跡に光の帯を残しつつ、前方に勢いよく飛んでいった。
光輪はそれなりの距離を飛んだあと、マナハスの方に戻ってくる。そして、杖の先端まで来ると静止した。
ほう……中々キマってる。聖女の攻撃としては割と似合っているんじゃないでしょーか。
光の輪を飛ばして攻撃するなんて、オシャレやん。これはマユリちゃんも興奮するよね。
でも、危ないからソレに触っちゃダメよ。多分、触ったらその腕が吹っ飛んじゃうから。
ふむ、これで全員、最低限ゾンビと戦う能力はあるってことになるかな。
銃の二人は普通に撃つだけだし、マナハスもアレで戦えるし。これなら、後いくつか準備をすれば、出発できるかな。
というわけで、諸々の準備をやる。
やる事は結構色々ある。
まずは武器のカスタマイズ。すべての銃に消音器を付ける。それから機能の拡張。武器にスタンモードを拡張する。
銃も改造することで非殺傷モードを使えた。
それじゃ非殺傷弾とは何だったのか、ということだが、スタンモードはMPを消費するので、普通の人間には使えないのだ。なので、能力者ではない人にスタンを使わせるための弾なわけである。
ただ、この弾は通常弾より高いので、MPを消費するけどスタンモードが使えるなら、私の感覚ではそっちの方がお得なので、そっちを使ってもらう。
マナハスの光輪攻撃でもスタンは使用可能だったので、これでマナハスもゾンビを殺さず無力化出来る。
それから銃の弾をまとめて購入しておく。二人とも、まだアイテム欄とかから取り出すのには慣れてないので、実物を出して持ち運んだ方が確実だ。なので、ソレを入れておく用の装備品みたいなのも用意する。こういう小物も、ちゃんとショップには存在するので助かる。値段も大したことないし。
後は、ホルスターみたいなのもちゃんと用意する。自動小銃の方はヒモをつけて背中にかけられるように。ただ、ゾンビは基本的にライフルではなくハンドガンを使ってもらうけど。
それはなぜかというと——ハンドガンの弾の方が安いから。……い、いやまあ、ハンドガンのが取り回しいいし音も小さそうじゃん。
予備も購入したので二人とも二丁あるから、その気になれば二丁拳銃もできるぞ。カッコいいよね。
ちなみに、マナハスの杖については身につけるには何かアレなんで、そこはやっぱりパッと出し入れして欲しいよね。その方が見栄えいいからね。
ただ、必要な時にパッと出せないと困るので、慣れるまではずっと手に持っていてもらうことになりそう。
私自身は、特に準備することはない。
刀を身につけるためのベルトはすでにあるし、そもそも私は刀の呼び出しにも慣れてるから、どうでもオッケーなんですよね。
だからまあ、消耗品なんかの補充をしたりしたくらいだ。
後は、全員のレベルをとりあえず4まで上げておいた。
ポイントについては、それぞれチュートリアルのクリア分で入ってたし、足りなければ私が渡せばいい。ポイントは他にも色々使うので、全員にそれなりの量をとりあえず配布しておいた。
レベル5は、それまでより必要ポイント数が一気に増えるっぽいので、今は保留。
まだポイントには余裕あるけど、どう使うのが最適かはまだ決めかねてるし。とりあえずゾンビ相手なら、このレベルで十分だろうので。
越前さんには、例の飛沫防御バリアシールを貼っていなかったので、貼っておいてもらう。
遠距離武器ならそこまで必要ないかもしれないけど、ゾンビの体液は毒だと分かったわけだし、やはり浴びないようにしておきたいところ。
あとマユリちゃんにも、以前のマナハス達のように二種のバリアシールを貼っておいた。これも念のため。彼女も、もう半分身内みたいなものだし。——あとで藤川ママンにも貼らせてもらわないと。
これはすべての人員に貼るつもりはない。このシールそこそこ高いし。藤川ママンとマユリちゃんは特別扱いということですね。香月さんについては……まあ、保留。
さて、それではコッチの準備は終わったので、バックヤードの皆さんのところに行きますか。
さっきの話がよく分かんない感じで終わっちゃったから、結局、彼らがどうするつもりなのかは分からないんだけど。
もうこうなったら、私たちだけでも行くしかないや。店内のゾンビは問答無用で始末したから、あの人たちにとっても安全になっただろうし。ここに残るというなら好きにすればいいさ。その後の事は自己責任で。
案外、このスーパーでもじっとしとけば襲われないかもだし。私はここで寝るの嫌だから別のとこ行くけど。
とりあえず藤川ママンと香月さんとは合流しなきゃだから、そこで最後どうするか聞いて、煮え切らないようなら無理矢理振り切ってでも出発すっか。日没までそう時間も無いし。急がなきゃだからね。
というわけで、諸々の準備を済ませた私は、パーティーメンバーの皆を連れて、バックヤードへと向かった。