第41話 ヒャッハー! これが世紀末の最新ファッションだァ!!
どの銃を選ぶのか、私は越前さんと相談中だ。
これから自分達の命を預ける武器を選ぶわけなので、しっかりと検討する必要がある。
ただ、私としては——銃ならそこまで必要ポイント高くないし後から買ってもいいんじゃないかなー、なんても思ったり。
チュートリアルで選択した武器は選んだやつタダでもらえるっぽいので、そう考えたら必要ポイント高いやつ取ったがお得なんじゃね? と思わなくもない。
まあでも、それで取ったやつを使わなかったら、それこそ無駄なんだけど。でも拳銃とか選ぶくらいなら、同じ銃のカテゴリの中で強そうなの選んどいたがいいと思う。
というわけで、その辺の事情も話しておこうかな。ポイントについてはまだまだたくさんあるので、私が武器を買って配ることも出来る。なのでまあ、武器選択は好きなように選んでもらって、迷うようなら高そうなのを選んでくれという感じかな。
ちなみに、私の使ってる日本刀の必要ポイントはけっこう高い方だった。さすが恐竜くんを倒しただけある。
「武器に関しては新しく入手することも出来るので、仮に選んだ武器が使いづらかったりしたら、後から変更も出来ます。ただ、後から買う場合は、それにお金みたいなのが必要になるんですよ。それで、この最初に選ぶ時はタダでもらえるみたいなんで、迷ったら高いやつ選べばいいかもしれないですね」
「へぇ、そうなんだね」
「あ、なんかそういうお金みたいなシステムあるんだ。そのお金って、どうやって手に入るん?」
「敵を倒したら手に入るよ」
「マジか、まるでゲームだな……」
「実は、恐竜くん倒した時に、そのポイントをめっちゃゲットしたんだよね。だから、今の私は、ポイント的にはそこそこ余裕がある」
「あー、そりゃ、あんなの倒したら大量に貰えるでしょー」
「——あのぅ、どの武器が高いかは、どうやって判断すればいいんでしょう?」
「あー、そっか、確かチュートリアルの選択画面には必要ポイントとか出ないもんね。私に見せてくれたら値段調べるけど……画面、見えるようにしてくれる?」
「えっと、それってどうやるんですか?」
「他の人にも見えるようにしてくれって感じに念じたら、出来たと思う」
「そもそも、念じて動かすっていうのが意味不明なんだけど。出来なくない?」
「私もやり方が……」
「えっと、これって考えるだけで動かせたりする感じのやつなのかい?」
「アレ? 私は出来るんだけど……見せてみましょうか?」
そう言って私は、自分の見ている画面をみんなにも見えるように表示しようとする。——と、その表示設定に新しい基準があることを発見する。
それは、パーティーメンバーのみ見えるようにするという設定だ。おー、これなら私たちだけ見えて他の人には見えないから便利ね。
というわけで、私は自分のウィンドウをみんなに見える設定にする。
「わ、これ、火神さんの見てる画面ですか?」
「そう、パーティーメンバーにだけ見えるように設定してみた」
「それって、私らにだけ見えてるってこと? じゃあ、あの人たちには見えてないのか」
そう言ってマナハスの視線が向かったのは、離れたところにいる大人たちである。まあ、多少は距離があるといっても、こんな目立つ画面が浮いてたら普通は気がつくだろうからね。プライバシー設定は必要だね。
「そういうこと。たぶん、みんなのやつも同じように表示出来ると思うんだけど……」
そこで私の画面にメッセージが現れる。見ると——パーティーメンバーの画面を見えるように表示しますか? みたいなことを聞いてきていた。あ、これ私の方で操作して表示させたり出来る感じ? これは私が親元のプレイヤーだからなのかな? まあ、とりあえずイエスにしておく。
「あ、なんか見えるように表示しますかって出てきたわ。これ『はい』にすればいいのね」
どうやらみんなイエスにしてくれたようで、その場に全員分の画面が表示された。うん、これで分かりやすくなった。
しかし、どうも私以外の人は思考での操作が出来ていないようなんだけど、これは、まだ慣れてないだけ? それとも……
「みんなの分でたね。それで、私はこれを手で触れなくても動かせるわけなんだけど……」
そういって実際に実演してみる。私は手で触れることなく画面を操作する。
というか、今までもこれでやってたから、画面は見えてなかっただろうけど、私が手を使わないで操作出来てたことは二人は分かってるはずなんだけどね。
「確かに出来てるなぁ。いや、それどーやんの?」
「どうやるも何も、頭で考えるだけだけど」
「いや……それが分からんのやけど」
もしかして、これって難しい技術なの? まあ、必須の技術ではないかもしれないけど、使えた方がかなり楽だし早いと思うから、やっぱり使えた方がいいと思うんだけどな。
すると、横で何やらうんうん唸っていた藤川さんが、突然——アッと声を上げた。
「で、出来たかもしれません。これ、こんな感じでしょうか?」
「あ、出来てるじゃん。そうそう、そんな感じだよ。なーんだ、藤川さんにも出来たね。なら多分、誰でも出来るんだよ」
「マジかぁ。藤川さん、どーやるの?」
「えぇっと、最初は見えない手で動かすようなイメージでしょうか。慣れてくると……わりとイメージ通りに動かせるようになってきますね」
「だってさ、マナハス。——越前さんは、どうですか?」
「ああ、なんかやってみたら出来たね。俺の場合、パソコンのマウス操作みたいなのを想像してみたら上手くいったよ」
「なるほど」
「あー、出来たかも。うんうん、なるほどね。こんな感じね。慣れればいけるね。手でやるより全然楽だわ」
みんな出来るようになったみたいね。各人の画面を見てみたら、まだ私に比べたら動きがぎこちないところもあるが、ちゃんと動かせるようになってる。まあ、後は慣れだろう。
そんな風に周りを見渡していたら、ふと、マユリちゃんの姿が目に入った。
あっ、あー、この場でマユリちゃん一人だけ完全に蚊帳の外じゃん。なんか除け者みたいに感じてないだろうか、大丈夫かな……?
と思ったけど、その心配は杞憂かもしれない。彼女は、一人だけなんだか分からなくて寂しいって感じているというよりは、みんなが謎の挙動をしだして不気味に感じているようだ。
むしろ——こいつら大丈夫か……? って感じで私たちの方を見ている。……これはこれでちょっと心配になるなぁ。
こんなことなら、マユリちゃんにも画面を見えるようにすればよかっただろうか。しかし、そうなると誰にでも見えるように設定するしかなくなるんだよね。どうやら個人で分けることは出来なくて、パーティーメンバーとそれ以外って感じの分け方しか出来ないようなので。
まあ、仕方がないのでマユリちゃんにはそのまま我慢してもらうしかないか。マユリちゃんまでパーティーに誘うわけにもいかないし。
なんてことを考えていたら、私がマユリちゃんを見てるのに気がついたマナハスが、ふと思いついたと言った感じで、こちらに疑問を投げかけてきた。
「そういやこれって、魔法を使うやつとかは無いのかね? これだけ摩訶不思議系のやつならさ、魔法みたいなのが使えてもおかしくなくない?」
魔法か。まあ、私も考えなかったわけじゃないけど、チュートリアルでは武器しか選べないしなぁ。魔法的なのが仮にあったとしても、どうやったら使えるようになるのかはまったく分からないなぁ。
もしかしたら、レベル上げて新たな機能を開放すれば使えるようになったりして。あるいは、覚えられるスキルの中に魔法系のがあったり? まだスキルは全然確認してないから分からないんだよね。
「まあ、その可能性はあるけど、今のところは分からないね。チュートリアルでは武器しか選べないし」
「いや、それなら魔法用の武器とかあるんじゃないの? それを選べば魔法が使えるとかさ」
「うーん、魔法の武器ね……」
あったかなそんなの。
そもそも、魔法の武器を選べば魔法が使えるようになる——という発想が私には無かった。だから当然、私が武器選択した時には、魔法の武器なんて探そうとはしていなかった。
まあ、私がチュートリアルで武器を選んだ時って、ぶっちゃけ、かなりテキトーだったからなぁ。全部の武器をくまなく確認したワケじゃないし、見てないやつも全然あると思う。
あの時はまだ半信半疑みたいなノリだったから、変な勢いで適当に選んだ感はぶっちゃけある。その後にこんな事態になろうとはまったく思ってなかったし。そうだと知ってたら、もうちょい慎重に選んだだろうか。
まあでも、刀を選んだのは結果的には悪く無かったと思う。これで恐竜くんも倒せたし、ゾンビ相手でも問題無いし。
フィーリングで選んだけど、案外それで最適の選択肢だったのかもしれない。人間の直感って意外とバカにできないというか、色々考えるよりも、むしろ無意識で最適解を選ぶみたいなのってあるよね。
だから、みんなも結局はフィーリングで選べばいいのかもしれないね。どうせ使えるようにはなるんだから、それなら、自分の命を預ける装備は好きなやつを選べばいいよね。
「あれ、この杖みたいなのってさ、なんかそれっぽくない? 魔法の杖じゃないの?」
「どれどれ……説明はなんて?」
「いや、説明もそれっぽいかも? なんか、青いゲージを使って攻撃するとかなんとか。——青いゲージって何よ?」
青いゲージは、暫定的に魔力ではないかと考えているゲージですやん。ならマジで魔法の杖なの? マジか、そんな武器もあったのかよ。
ショップを覗いてみたら、確かに謎の杖みたいなのがあった。杖っていえば杖だが、棒の先に変な形の部分が引っ付いてる、これは……まあ、杖か。でもなんか、先端の一部分が浮いた状態みたいになってる。その辺は確かに魔法の杖っぽいね。
さあ、値段は——って高っ!! これめっちゃ高いじゃん。一番高いんじゃねーのこれ。
……ふぅん? この値段ならマジで、魔法系って線があるんじゃないのー?
「その杖っぽいやつ、とにかく値段が高いね。いいんじゃない? とりあえず、それを取ったらお得だよ」
「マジか。実際、魔法が使えたりするなら、それはかなり……気になる」
「マナハスって、ゲームでもよく魔法系のキャラ使うもんね。やっぱ魔法好きなの?」
「あー、まあね。でも実際、リアルで魔法とかってわけわかんないよなー。どうやって使うのかまったく分からないし。やっぱり、ここは無難に銃とかにしとくべきなのかなー。でも、魔法も遠距離系だと思うし、やっぱ魔法使えるなら使ってみたいんだけど……」
それは私も思う。使えるもんなら使いたいわ魔法。魔術士とかめっちゃカッコいいじゃん。私だって選択肢にもっと分かりやすく魔法のがあったら、それ選んでたかもしれない。なにせノリで選んでたし。
それに聖女の武器としては、銃よりは魔法でしょうね。つーか、マナハスがガチで魔法で戦いだしたら、それ完全に奇跡の聖女じゃん。
大体、銃で戦う聖女って意味わかんねーし。暴力教会のシスターじゃねーんだから。
——まあロアナプラでもない限り、そんなヤツはいないわよね。
魔法使いマナハス、いいと思います。
「いいじゃん、魔法。せっかくだからその杖を選びなよ。もしも使いこなせなかったりしたら、その時は銃に切り替えればいいし」
「そ、そーかな? じゃ、じゃあ、この杖にしてみようかな〜。——ぶっちゃけ、この杖の見た目もけっこー気に入ったんだよね」
やっぱり見た目も大事だよね。うん。
さて、マナハスは杖にしたとして、二人の方はどうだろうか。
見ると、お互いに銃のところを見ながら、何やら二人で話し合っていた。
「お二人は、なに選ぶかもう決めました?」
「あ、火神さん。私、やっぱり他のは扱える気がしないので、銃にしようと思ったんです。それで、越前さんに色々聞いてました」
「俺は最初から銃って決めてたよ。俺も、他のはあんまり扱える気がしなくてね」
「そうなんですね。それで、どの銃にするか決まりましたか?」
「そうだね。最終的には、自動小銃辺りが無難に使えそうかなという結論になったよ」
自動小銃、いわゆるアサルトライフルってやつだっけ。AKだよねAK。69だっけ? いや47だったかな。48……はアイドルだよね。なんとなく、あのアイドルグループって名前似てるな、あの銃と。
——実体はまるで違うんだけどね。
あと有名なのはなんだ、M4とかだっけ?
私の銃の知識はFPS系のゲームやら銃器擬人化ゲームのやつなので、まるっきりテキトーなんですよね。
まあ、FPSでもアサルトライフルは基本装備なんで、いいんじゃないでしょうか。ゾンビゲーでも、ショットガンと並んで基本武器な気がするよ。
まあ、サブウェポンとしてハンドガンもあるし、そっちを使ってもいいしね。
しかしそうなると、JKがAKで武装するわけか。……ヤバいな、絵面が。
——ハンドガンならともかく、ライフルを持ってたら目立つかもね。まあ、日本刀持ってる人もいるし、今更じゃない?
いやいや、昔からJKとマシンガンは似合うって決まってるじゃない。これでセーラー服着てたら言う事なかったね。
——まさか、あの歌を地でいくことになるとはね。
「じゃあお二人ともセーラー服——じゃなくって、アサルトライフルを選ぶってことですね」
「ん? ああ、そうだね」
「使いこなせるか不安ですけど、きっと火神さんのお役に立ってみせます……」
いっけね、なんか言い間違えたわ。おじさんがセーラー服ってのはいかんでしょ。
いや待てよ、そもそもセーラー服って水兵服のことなんだから、おじさんが着ても問題無かった……?
——なワケないでしょ。スカートだから、フツーに大惨事よ。
どうだろう。今時、服装のジェンダー云々なんて時代遅れな概念なんじゃないの。
——三十代男性がセーラー服着てマシンガン持ってたら、ある意味、世紀末感あるかもね。ジェンダーという概念も崩壊してる的な。
威圧感はあるよね。私だったらそんな奴が居たらソッコーで逃げるよ。肩パッドのモヒカンよりも全力で逃げる。
「それじゃあ、三人とも決まったなら、選んでどうぞ」
そして、三人の武器が決定した。