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第39話 スーパートリップして、キミも覚醒しちゃおう

 


 私の話を聞いた二人の反応は、果たして——


「うぅぅぅぅっマジかよ! え、それって、私もカガミンみたいにスーパーパワー使ってバリバリ戦えるようになるってこと!? ……マジか! そんなの——最高じゃん! やるやる! やるわ私! さっそく送ってくれっ! 招待だっけ? ほら!」

「私が……火神(かがみ)さんと同じ……選ばれし奇跡の使い手に……なれる……? 私が、なっていいのでしょうか……私なんかが……。……でも、他ならぬ火神さん自身が私にそれを望まれるんでしたら……! ——もちろん! 私もそれを望みます! 私も天の加護を受けた奇跡の使い手になって、火神さんのお役に立ちたいです!」


 ノリノリだなマナハス。そんなところ、私は大好きなんだけど。

 藤川さんもテンション高い。この人ならまあ、受け入れてくれるだろうとは思っていた。

 てゆうか、二人同時に喋るから、聞くのが大変じゃない。

 ……でも、二人とも、ちゃんと分かってるのかな。


「……二人とも、かなりやる気だね。……でも分かってるの? この力って、私にもよく分かってない謎の力だからね? まだ知らない危険性があるかもしれないし、一体全体、どんな影響があるのか全然分からないんだよ? ……それでもいいの?」

「ああ、分かってるよ。でもさ、カガミンはすでにこの力の使い手になってしまったんでしょ? それなら私も同じになるだけだし、躊躇(ためら)うことはないよ。カガミンと一緒のなら、まあ……いいかなーって……。て、てかこれまで全然活躍できてないから、私も謎の力使って活躍したいしなっ!!」


 マナハス……最高なんだけど、そういうところ。最後ちょっと照れて誤魔化したところとかも、うん。


「私も火神さんと一緒になることを喜びこそすれ、不安になることなんてありません! 火神さんの力は、人々を救うことが出来る偉大な力です。私はそう信じてます!」


 藤川さんなら、そう言うか……。

 よし、分かった。二人がいいと言うなら、やるよ。私としても、仲間が増えるのは嬉しいし。


 ——よかったわね、二人とも受け入れてくれて。もう一人じゃ無くなったわね。


 ……そうだね。二人が躊躇(ためら)わずに私と同じになる事を受け入れてくれたのは、正直、かなり嬉しかった。

 実は今までは、この謎の力に対して漠然とした不安感とかもあったんだけど、それがスッと消えたような気がする。

 二人が一緒なら、大丈夫だよね。もう能力者が私一人だってことで、少しだけ感じていた孤独感も無くなる。それなら私はもう大丈夫。

 もう、迷わない。恐れるものは何もない。もう何も怖くない!


 ——やめましょうそれは死亡フラグよ。首が飛ぶわ。


 まさか、そんなことさせない。だって、奇跡も魔法もあるんだよ!


 ——だからやめなさいって! 危ないから!


 分かったよ。実際、調子に乗ったらダメだよね。危険だね。死亡フラグだね。そうやって調子に乗りそうな時こそ、気をつけないといけないね。

 そうだなぁ。二人が力を身につけたとしても、それで絶対安全になるわけじゃないんだから、気を緩めたらダメだね。


 ——そういうことよ。


 落ち着いたところで、さて、それじゃ、やりますか。


「二人とも、覚悟はいいんだね。心の準備は出来た?」

「うぃ、いつでもいいぜー」

「大丈夫です!」

「それじゃ、やるよ?」

「おう。……それで、具体的にはどういう感じになるわけ? 心の準備って、もしかして、なんか痛かったりとかすんの?」

「いや、たぶんそんなことは無いと思うけど。少なくとも、私の時は別になんともなかったよ」

「では、どういう風に奇跡の力を授かるのですか……?」

「それは、やってみないと私にもわからない……。だから、やるよ? いいね?」

「分かった。変に引っ張られるのも怖いし、ひと思いにやっちまってくれ!」

「お願いします!」


 よし、それでは二人をパーティーに『招待』だ。

 私の方のウィンドウには今、〈対象に送信しますか?〉と出ている。この画面が出るまでにも、色々と設定する必要があった。まあ、その辺は面倒なので確認しながらササっと流した。

 さて、最初の対象はマナハスだ。——そして私は『送信』を選択する。

 さて、どうなる……?


「うおっ! なんか聞こえた! 今、声が聞こえた! ……うわっ! なんか出てきた! 画面出てきた〜!」


 どうやら送信出来たみたいだ。マナハスがめっちゃ騒ぎ出した。

 私には、その声とやらも聞こえないし画面も見えていないので、マナハスがいきなり騒ぎ出したようにしか見えない。事情を知らない人が見たら、これはイカれてるようにしか見えないでしょうね。

 そういえば、今もマナハスの隣にいるマユリちゃんはどう思ってるんだろ。なんだか魔法使いに興味ありげな反応見せてたし、もしかしたら自分も……とか思っているかもしれない。

 でも何となく、この子って危機管理能力高そうなので、得体の知れない力を安易に受け入れたりとかしないかもね。現に今も、特に私に何か言ってくることもないし。


 そのマユリちゃんは今、なんとも言えない表情でマナハスのことを見ている。

 大丈夫、そのお姉さん別にイカれたわけじゃないからね。だから、そうやってさりげなく距離を取らなくてもいいんだよ? なんか、今まさにマナハスに対して危機感抱いてない?


 ……さて。それじゃ、マナハス一人だとアレなので、藤川さんにも送っちまおう。

 それっ。


「あっ! き、来ました! ……声です、聞こえます。——ああ、これが火神さんに聞こえていたという例の声なのですね……! なんだか、荘厳(そうごん)さを感じる声ですね」


 そうかね? 確かに聞き取りやすい声ではあるけど。まあ、不思議な感じの声ではある。

 なんとなく、人間離れした感じもするけど、それは神とか天使とかいうよりは機械音声的な雰囲気に私は感じるんだけどね。感性の違いというヤツですかね。私には信心深さが足りてないのかも。


「これ、なんか契約内容とか出てきてるんだけど、そういう感じなの? なんか会員登録みたいだな……。てか長いし、全部読むの面倒なんだけど。これ、読まないとダメな感じ?」

「確かに……難解な文章が続いてますね……」

「契約内容とかいうのは、一応、私も確認したけど、特に変な条件は入ってなかったと思う。制限になりそうなのは、なるだけ取っ払ってみたし。まあ、読み飛ばしても大丈夫かな……?」

「んじゃ飛ばして——って、あれ、この画面って、どうやって操作したらいいの?」

「あー、たぶん頭で考えたらその通りに動くと思うから、やってみて」

「え、考えるだけで? えーっと、うーん……よく分からん。どうやるんだ?」

「え、出来ない? 私はそれで出来たんだけど」

「火神さん、私も分かりません……」

「えー、どうしよう……」


 まさか、そんな落とし穴があるとは思わなかったよ。動かし方とか言われても、私にはよく分からないし……。

 いや、私の場合、最初から勝手にインストール始まってたから、もしかして、インストールしてからじゃないと思考での操作って出来なかったり?

 え、だとしたらマジで、どうやって動かせばいいの?


「あ、これ触ったらフツーに動くじゃん」

「ホントですね。触って動かせばいいんですね」


 あ、なんだ。タッチで動かせたのか。それならよかった。


「お、スクロールしたら契約しますかって出てきたわ。これで『はい』にすればいいんだろ」

「うん、だろうね」

「じゃあやるよ……それ!」


 マナハスが、おそらく『はい』の部分だろう空中をタップする。

 すると私の方にも、パーティーへの招待が承諾された——という通知が出てきた。


「お? なんか……頭の中に流れ込んできている感じが……」

「わ、私もやってみます! えい!」


 藤川さんもイエスを選択したようだ。——さらに承諾の通知が来る。


「不思議な……感覚が……私……今……受信しています……!」

「あーきたきたきた。きてるきてる。これはきてるー」


 やばい。これはかなりヤバい。絵面がヤバい。完全にヤクかなんかキメて今一番強烈なトリップしてる場面だわコレ。警察が見たら言い逃れ出来ないやつだわ。

 ほら、マユリちゃんとか完全に私の方に来てるし。私の後ろに隠れちゃったし。これは子供に見せたらいけないやつだったわ。ごめんね、マユリちゃん。どうか悪影響は受けないで、あなたはまっすぐ育ってください。


「終わった……。覚醒したんだな、私」

「受信完了……。これが奇跡の波動……」


 あ、終わった? よかった。

 二人とも無事だったね。トリップ成功かな?


 ——だからヤクはキメてないって。


 私の時と同じなら、次はアレかな?


「ん? チュートリアル? 武器の選択……? これ、何を選べばいいんだ?」

「たくさん出てきましたね、これ全部、武器なんですか」

「どの武器選んでも、この次で使い方もマスターできるから、好きなの選んでいいと思うよ」

「好きなのって言われてもねー、こんだけあると迷うなー」

「どれを選んだら……火神さん、私、どれを選べばいいのか分からないです……どうしましょう?」

「うーん、そうだねー」


 何がいいだろうか、二人の武器は。

 実際、スキルをインストールすればどんな武器でも戦えるとは思うんだけど。私も日本刀で全然やってこれたし。

 まあ、まず近接か遠距離で分かれるかなぁ。何を相手にするにしろ、近接武器で接近戦するのと遠距離武器で距離を取って攻撃するのは全然違うだろうし。相手があのゾンビなら、普通はなおさら、接近戦したがらないと思うな。


「近接武器と遠距離武器で、まずどっちか考えてみたら? 基本的にはゾンビと戦うことになると思うけど、アレと接近戦したくないなら、遠距離武器を選んだ方がいいんじゃないかな」

「あー、確かに、ゾンビ相手にはあまり近寄りたくないなー」

「そうですね……私も、近くまで寄っていくのは遠慮したいです……」

「なら二人とも、遠距離武器にする?」

「私は遠距離でいきます」

「そーだなー、私もそーするかなー。しかし、そうなると選択肢は銃か弓くらいじゃないのかー? ……あ、でも銃の種類も結構色々あるな……」

「わ、私、銃なんて詳しくないんですが、どれにすればいいんでしょう……?」

「私も詳しくないからなぁ……」


 うーん、ここは、越前(えちぜん)おじさんも呼んだ方がいいかな? あの人ならその辺結構詳しそうだし、なんかアドバイスくれるかも。

 てか、おじさんにもパーティーに参加してもらいたいんだけどなー。呼んでこようか? でも、私らがあそこに呼びに行くのもなー。

 と、そこで丁度いい相手がいるのを思い出した。イカれた態度がおさまったところで、またマナハスの元に戻ったマユリちゃんだ。マユリちゃんなら、自然におじさんを呼んでこれるだろう。


「越前さんにも聞いてみようか? なんか銃とか詳しそうだったし」

「それはいいけど、なんて説明するつもり?」

「というか、あの人にもパーティーに加わってもらいたいんだけどね。一番戦力になりそうだし」

「まあ、私らよりはな」

「受けてくれるといいんだけど、どうかなー? やっぱ大人の方が、こういうの受け入れ(がた)そうだよね」

「どうでしょう。あの方なら案外、受け入れられそうな気もしますけど」

「まあ、すでに一緒に戦った仲だしね。とりあえず聞いてみようかな。——それで、悪いんだけど、マユリちゃん。越前おじさんのところまで行って、こっちに来るように言ってくれないかな? 私たちが行くとみんなを驚かせそうだから、マユリちゃんに行ってもらいたいんだけど……どう? 嫌なら無理しなくていいけどね」

「……ここに連れてくればいい?」

「うん。頼めるかな?」

「……わかりました」


 どうやら行ってきてくれるらしい。頼んだ、マユリちゃん。


 すぐにマユリちゃんは、とてとてと大人達の所に向かっていった。

 そして、おじさんのところに行って何事か話すと、すぐにおじさんを連れて戻ってきた。周りの人たちも、あまり気にしていない。うん、グッジョブ。


 おじさんは私たちのところに来ると、私たちと同じように床に座る。

 そして私に尋ねてくる。


「えっと、なんか俺に用があるって?」

「はい。——でもその前に、向こうの話し合いの調子はどんな感じですか?」

「……まあ、正直、上手くいっているとは言えないね。みんなも何が起こっているかよく分かってないし、突然こんなことになって、まだ混乱してるよ。それに加えて、あの教師だっていう女の人の事とかもあったし、君が聖女がなんとかって言った事とか……けっこうめちゃくちゃだよ。これからのことよりも、むしろ、君たちの事の方をみんな気にしてる感じかな。俺も色々聞かれたけど、適当に答えてたら、なんかよく分からないことになってきてね……。あんまり適当に答えすぎたかな……でも、真面目に答えようがなくて。正直、一旦離れることが出来て感謝してるくらいだよ」

「はあ、そうだったんですね」


 まあ、まともな話し合いになんてならんよな。私としても、別に、ちゃんとした建設的な話し合いをして欲しいと思っているわけでもないし。ただ、こっちはこっちで色々と時間使ってやりたいことがあるので、その間、邪魔されたくないから、適当に何かやっといてもらえればいいやと思ってただけなので。

 横を見ると、マナハスが険しい顔をしていた。その目線は、集まっている大人たちの方に向いている。おじさんが適当に話したって言ってたことを気にしているのかもしれない。

 私もどんな風になっているのか少し気になるけど、まあ、何とかなるっしょ。結局、その影響を受けるのはマナハスだし。


 ——コイツ……自分が巻き込んだクセに。


 フォローはするさ。それに、これからはマナハスも本当に奇跡を使えるようになるんだから、問題ないでしょ。

 こうなったら、なんかみんなの前でまた不思議な現象でも起こさせて見たくなるなー。どんな反応されることやら。


 まあ、今はおじさんの勧誘だ。さて、どう言って勧誘すればいいのかね。どう誘っても、なんか怪しい宗教の勧誘みたいになるのは避けられない気がするんだけど。

 はたして、大人相手にどう言えば納得してくれるのだろうか。

 そうだな、それでいくならここはやっぱりアレで……。


 ——……アレって?


 “私と契約して、魔法戦士になってくれませんか?”


 ——女子高生がおじさんに契約迫るって、新鮮ね……。


 断られたら、その時はマユリちゃん誘うか。あの子ならピッタリじゃん。年齢的にもろ魔法少女だし。カガべえになるわ、私。


 ——黒髪サイコレズに撃ち殺されるわよ。大体、常識的に考えたら、魔法少女とか言って子どもに戦わせるのってどうなのかしら。大人は何をしているのよ。


 まあ、相手が魔法的なヤツだからね。常識に凝り固まった大人には無理なんだよ。そうして子ども達に任せていたら、世界は円環の(ことわり)に導かれていってしまうんだよなぁ。

 ま、とにかくここはマスコットよろしく、おじさんに契約を迫ってみるしかないな。

 おじさんにはコンバットではなく、魔法戦士エチゼンになってもらおう。



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