第38話 レベルアップ 最高! ——オマエもレベルアップ最高と叫びなさい!!
とりあえず一つレベルアップしたら、こんな文言が出てきた。
〈条件達成を確認〉
〈新たな機能が解放〉
新たな機能……だと?
例によって、レベルアップによりポイントも加算されたが、そんなことよりもさっきのアナウンスだ。——新機能だと?
そんな、レベル上がったら新しい機能の解放とかあるんかよ。だったら、やっぱり真っ先にレベル上げるべきじゃん?
つーか、解放された新機能ってなんだ。確認だ。
うむ、これは……。
アレだ、チュートリアルでもやったやつ。スキルのインストール。アレの機能が追加された。
マジか。スキルを覚えられるとか、それってかなりすごいやつじゃん。
というか、チュートリアル以外でもスキルを覚えることって出来たのね。それは良かった……。
だって、アレっきりだったとしたら、ちょっとアレだもんね。なんか、もっと良く選びたかったというか……だって、あの時はめっちゃテキトーだったし。
つーかマジで、スキルを色々覚えられるとか、そんなん、やべーな……
オラわくわくすっぞ!
スキルか……。チュートリアルの時のスキルの種類は、ほとんどが武術とかを習得するって感じのやつだったけど、他のスキルもあるのかね?
そう思って、習得可能なスキルのところを色々見てみる。チュートリアルであった色々な武器に対応する武術的なスキルもあった。そして、どうやらそれ以外のスキルも追加されているみたいだ。
うぐぅ! スキル、めっちゃ気になる。めっちゃ身につけたい。
でも高い! 必要ポイントが高い! ……これは、気軽に手は出せない。
足りるか足りないかと言われれば、足りる。それだけ、私の現在のポイント数は余裕がある。——どうやら、よっぽど恐竜くんを倒したポイントはデカかったみたいだ。
でも、だからといって、考えなしにポイントをスキルに使っちゃうわけにはいかない。
そもそも、このスキルってのも、ぱっと見ただけでは具体的にどんな感じなのか分からんのよ。説明もよく分からんし。選ぶには慎重に時間をかける必要がありそう。しかし今は、あまりゆっくり吟味する余裕があるとは言えないわけで。あー、どうしよう。
それに気になるのが、新機能の解放ってやつよ。
レベル5でこんなヤベー機能が解放されるんなら、さらにレベル上げたら、もっとやばい機能も解放されるんじゃないのってことよ。
だとしたら、スキルを選ぶ前に、レベル上げて機能解放させた方がいいかもしれないしなぁ。
ちくしょう、めっちゃ悩むじゃないか。どうしよう。どうする?
——うーん、正直、どちらが正解とかは分からないわ。情報が無いからね。なら、さっきも言ったように、後悔しない方を選びたいわよね。……だとしたら、やっぱりまずは選択肢を増やした方がいいんじゃない? 選択肢を多く出してから、選んだ方がいいんじゃないかしら。
そんなら、やっぱりレベルアップして機能解放か。
レベル5で解放されたから、次は、レベル10かな?
——ポイント足りそう?
多分、足りると思う。レベル上がるごとに必要ポイントも増えてるけど、私のポイントはまだまだあるし。一応、レベルアップでもポイントもらえるしね。
よし、それじゃとりまレベル10まで上げちまうか。もちろん、1レベルずつ上げてみて、普通にポイント足りそうならね。途中で足りなそうだったら方針変更だ。
——オッケー。それでいきましょ。
さあ、それじゃ引き続きレベルアップだ。うおりゃーーー、ピコン!
そんなわけで、私は再びレベルアップにポイントを注いだ。
結論から言えば、普通にレベル10まで行けた。ポイントもまだ結構残っている。これなら、まだ何レベルかは上げられそうだ。
さて、それよりもアレですよ。
レベル10ではあるのか、どうなんだ?
〈条件達成を確認〉
〈新たな機能が解放〉
キターーーー! 新機能キタ! さあ、次の機能はなんだ。
これは……。
……パーティー機能? ですか。
ああ、はい。まあ、あるよね。パーティー組んで協力するやつはさ。うん……。
え、これ? レベル10この機能なの?
そりゃ、私以外にも力に覚醒した人たちは居るみたいだけど。それを、仮に“プレイヤー”とでも呼ぶなら、まあ、他のプレイヤーとパーティーを組む機能ってのは分かるけどさ。でもそれ、正直、拍子抜けだな……。
レベル5でスキルとかきたから、10でもなんかすごいのくると思ったんだけど、期待しすぎだったか……。
——とりあえず詳しく見てみない?
うーん……。どうせ私は、他のプレイヤーの人たちとはあんま関わるつもりないし、あんま必要な機能とは思えないけど。
まあいいや。一応、確認するか。
…………あれ、これ、この機能…………ファーーーーー!!!
——いきなり何!?
思ってたのと全然違うじゃんパーティー機能。いや、思ってたような機能もあったんだけどさ、それだけじゃないぞこの機能。
——これは……確かにかなりヤバいわね。これなら確かに、スキルの解放に勝るとも劣らない……いや、むしろスキル解放よりもすごいとも言えるでしょ。
だね。これはレベル10まで上げて良かったですよ。しかも、これはまさに今、必要な機能とも言える。
——そうよね、これはかなり状況を好転させる可能性あるわよ。
しかもこれ、マナハス聖女計画としてもいいじゃん。使えるじゃんこれ。
——となると、この機能を誰に使うかなんだけど。
それね。当然、一人はマナハスとして、あと一人だよね……。まあ、ここは藤川さんかな。
うーん、初期人数は二人までみたいだけど、これポイント使ったら、その人数自体も増やせるっぽいね。
どーしよっか。あと一人くらい増やしとく?
——とすると、あと一人は、越前さんかしら。
まあ、そうなるかな。実際のところ、選ぶとしたら戦える人を選ぶべきだよね。その点、越前さんはすでに実績があるし。
さて、私が大興奮のこの新機能がつまり何なのかというと、なんとこれ、私みたいな力を得た人以外ともパーティーが組めたのだ。
それで、つまりどうなるかというと、力を得ていない普通の人とパーティーを組んだら、その人も力に目覚めるらしいのですよ。
この謎の力の仕様風に言えば、新たにその人にも謎のシステムがインストールされるということですね。
つまり、マナハスとパーティーを組むとしたら、マナハスも私と同じ力が使えるようになるのだ。
マジかよ、マナハス本物の奇跡の聖女になれるじゃん。
これはすごいぞ。単純に戦力がめちゃくちゃ増える。
何より、プレイヤーになった人間は私と同じ事が出来る様になるのだから、つまり、その人もスキルのインストールが出来るようになるのだ。
スキルさえインストールしてしまえば、その瞬間から武器のエキスパートになる。つまり即戦力だ。それに、私と同じと言うことは、当然、ステータスの力も持っているわけだ。
つまり、あの三色のゲージだ。謎のバリアと、謎のエネルギーと、謎の身体能力だ。つまりは超人戦士だ。
それが一気に二人、あるいは三人増える。
おいおい、パーティー機能最強じゃないの。一気にZ戦士が四人に増えたぞ。
これまでは、一人で地球を守らないといけないのかと心細かったけど、私にも仲間ができるのだ。
感動した私は、感激の眼差しでそばにいる二人を見つめる。
私がこれ以上ない親しみを込めてマナハスの方を見やると、彼女は「え、何その顔。気持ち悪いんだけど」と言った。
…………。
藤川さんの方を見たら、なんだかモジモジした後で、ふにゃっとはにかんできた。
うーん、それはそれでよく分からん反応だけど——可愛いからヨシ。
二人の反応はともかく、この新機能については、二人にどう話すべきかなぁ。喜んでくれるかなぁ。
——どうかしら? 好意的に受け止められるかどうかは分からないわよ。フツーに拒否られる可能性もあると思うけど。だって、得体の知れない力なんだし。
……まあ、その可能性は当然あるか。
でも、この契約を受け入れたら、かなり生存率上がると思うんだけどなー。
だけど、このパーティー機能にも、色々考えなきゃいけないところはある。
このパーティー機能の実体を言い表すとしたら、それは「契約」だ。
これは、私と他者が契約するという機能というか能力というか、そういうやつなのだ。
具体的には、私の仲間の一員として私が力を得るきっかけを与える代わりに、こちらから出す条件にしたがってもらうという感じだ。
契約の内容は私が色々と設定できるみたいで、雇用条件みたいに色々と好きな条件を設定できるみたいだ。
まあ色々と条件を決めたところで、契約するかしないかは相手が決めることなので、相手の同意なしに契約は出来ないみたいなんだけど。
しかし、こんな世界になってしまえば、どんな条件をつけられたとしても、生き残るために極めて有用な力を得られるのなら悪い取引ではない——と考える人もいるかも……。
まあ、その辺の条件付けはオマケみたいなもので、実際のところ、この契約のキモはポイントの分配なんだろう。
パーティーを組んだ者たちで、入手したポイントをどう割り振るか。これを決めるための契約だ。
これも、基本的に私に決定権があるみたいだ。やろうと思えば、メンバーの得たポイントをすべて自分だけで総取りにすることも可能のようだ。
パーティーメンバー間では自由にポイントをやりくり出来るみたいなので、一度自分がすべて集めて後から分配していく、みたいなことも出来るのだろう。
どっちにしろ、その辺の優位性も結局は契約を持ちかけるプレイヤーのさじ加減次第のようで、パーティーメンバーとして力に覚醒した人たちは、元々のプレイヤーの配下のような存在という感じなんだろう。
となると、パーティーメンバーの方にはプレイヤーとは別の名称が欲しいところだけど。
なんか、契約とかいうと某作品のサーヴァントを連想するなぁ。——うん、サーヴァントって名前は悪くないかも。ちょっとカッコいいし。
それから、この契約は、普通に別のプレイヤーとの間にも可能みたいだ。
その場合は、共闘した際のポイントの取り分の取り決めに使うということかな。
他にも、一緒のパーティーになることで色々と出来るようになるみたいだけど、プレイヤー同士だと立場が対等なので、どっちかが上になるような契約は出来ないっぽい?
まあ、他のプレイヤーにはまだ会ったことも無いし、この辺の確認は後でいい。
色々と調べてみたが、パーティー機能についてはこんな感じだ。
重要なのは、パーティーに誘えば一般人に力を与えることが出来るということだ。
その際には、契約というものがあって、これは契約を持ちかける側、即ちプレイヤーの方で好きに設定出来る。その条件を飲むことで、力を得て仲間になる、と。
私が誘いたい相手はもう決まっている。後は二人が受け入れてくれるかどうか。それは聞いてみないと分からない。
これ、一旦インストールしちゃった後からでも、パーティー解散というかアンインストール的な操作も出来るんだろうか? やってみて嫌だったら辞める、みたいな出来るなら……。
でも、後から解除出来るからって、まず謎の——なんて言えばいいんだ? 謎の何かを直接体に受け入れるってのは勇気がいるよね。謎すぎるからね。
まあ私の場合は、許可を取ることもなく勝手に入れられたんだけど。ほんと勝手にやられたよねコレ。一言の断りも無かった。そして、その後も特に説明無し。
だから、私も未だにこの力がなんなのかよく分かってないし、そんなんだから二人も誘いづらい。自分でもよく分かっていない、安全かどうかも分からないものに誘おうとしている。
だけど、これを受け入れたらとても有用だということはハッキリしている。だからまあ、後は二人次第だよね。結局のところ、二人が決めることか。
だけど少し、聞くのが怖い。断られるのが怖い。
だって、出来れば受け入れて欲しい。私と同じになって欲しい。私と一緒の力を持って、私と一緒の条件で、私と同じ境遇で過ごして欲しい。そうすれば、この先何があったとしても、きっと同じ結末を迎えられる。……そんな気がする。
だから、もしこの誘いを断られたら、それは私と彼女の一つの決別を意味しているようで——そうなってしまうのが、怖い……。
怖いけど、聞いてみないと。私も勇気を出さないと。そうだ、受け入れてもらえなかったら、その時はその時だ。それでも私のやることは変わらない。変わらずマナハスのそばにいて、彼女を守る。安全が保証されるまで。
そうだ。それでいいんだ。一緒にいられるなら、それで……。
もう一度、マナハスの方を見る。
マナハスは、少しだけ心配そうな表情でこちらを見ていた。
「どうした? さっきから、歓喜したかと思ったら思い悩むような顔したり、百面相してるけど。……なんかあったんか?」
「火神さん、また何かを受信されたんですか?」
「あのね、実は二人に、提案があるんだけど……」
「提案?」「ですか?」
そこで私は、二人に新機能の事を説明した。
私と同じように二人も謎の力を得られるということ。そうすれば、体は強化されて不思議な能力が使えるようになり、戦闘能力は格段に向上し、二人の安全性も増すだろうということ。
ただし、この力自体、謎が多くてよく分かっていないものだから危険かもしれない——ということも、しっかりと説明しておく。
「——説明を聞いて理解した上で、二人が望むんだったらパーティーへの招待をしようと思うんだけど……どう?」
さて、二人の反応は——