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第27話 子供でも扱えるお手軽なブツ

 


 私が渡した特別製のシールによって、今の二人は謎のバリアで守られた。


 さて、コレが使えたとなると、多分もう一つのアイテムも使えるよね。

 では、こっちも渡しておきますか。


 私はバリアの感触を確かめている二人に話しかける。


「さてさて、二人とも。実は、プレゼントはそのバリアシールだけじゃないんだよ」

「え、まだ何かあるの? ……次は何をやらせるつもり?」

「そんな不安がらないでよ。さっきのアイテムがちゃんと使えたから、これも使えると思うけど、まあ、こっちも一応、試しておこうか」

「……? またシールですか?」

「そうだね。でも効果が違うんだ」


 私が取り出したのは、また同じようなシール。しかし、これはまた別の効果がある。

 体に貼ってバリア的なのを発生させるのは、どうやら同じなんだけど、これは別の効果のバリアを発生させる。

 HPのバリアは、体にかかる衝撃——つまりダメージを防ぐ。だけと普通に触れることは出来る。つまり、弱い接触には反応しないのだ。

 しかし、このシールのバリアは、どうやらそういうヤツに反応する。逆に、強いものには反応しないみたいだけど。


 では、これで何が防げるかというと、いわゆる飛沫的なやつらしい。

 例えば、相手を攻撃した際に血飛沫が出たとして、それが体にかかるのが防がれる。なので、ゾンビをぶった斬ったとしても、その返り血で汚れることがなくなるはずだ。

 あとは、雨なんかも防げそうだ。これがあれば、傘が無くても体が濡れなくなる。たぶん、泥跳ねなんかも防げるだろう。服が汚れなくて良さそう。

 そして、臭いも遮断できるらしい。なので臭いところに入っても平気。これが逆に、自分の匂いが外に漏れなくなるのかは、ちょっと分からない。だけど、その効果まであるとすれば、嗅覚の鋭い敵なんかがいた場合に効果的かもしれない。


 イメージ的には、空気の層みたいなのが体を覆っているような感じだろうか。あまり強力なものは防げないが、そうじゃないものは大体防ぐことが出来るみたいだ。


 これからゾンビと戦っていく場合、連中の返り血やら何やらを浴びそうになることもあるかもしれない。

 どうやってゾンビになるのかがまだ詳しく分からない以上、なるだけ対策はしておきたいところだ。

 なので、このアイテムもみんなで付けておこうというわけである。当然、私もつける。


 ということを、二人にも説明した。


「ふーん、ま、あって困ることはないだろうし、いいんじゃないの?」

「雨にも濡れないのは便利ですね。雨が降った時は重宝しそうです」

「これは試そうと思えば、簡単に試せるしね。水かなんかぶっかけるだけでいい」


 すると、マナハスが私を見ながら即座に提案してくる。


「よし、私がやってやるよ」

「マナハスったら、そんなに嬉々として立候補しないでも……そんなに私にぶっかけたいって言うの?」

「言い方がアレだけど、あえて言うならそうだよ」

「もう……エッチなんだから」

「何がっ、それはむしろアンタの方でしょ」

「あの、私も火神(かがみ)さんにぶっかけさせていただいても……?」

「藤川さーん? カガミンが相手だと、やっぱりなんかおかしくなるよね……?」


 そんなわけで、それから、お互いに水をぶっかけあって試してみることになった。

 キャッキャッ言いながらお互いに水をかけあったが——確かに誰も濡れることは無かった。


 はしゃいだ後に誰も濡れてないと、なんか「何やってたんだろ……」って感が強いな。これは海に行く時には使えないね。


 ——ホントに何やってんのよ。ワザと時間使ってんの?


 確認だよ確認。

 正直、起きたばっかで、みんなまだ頭が回ってないんじゃないだろうか。朝ごはんだってまだ食べてないし、それもどうにかしないとだね。まあ、適当に道中で食べてもいいけど。

 今はあと一つ、最後のプレゼントを渡そうか。


「さて、それじゃ、これは最後のプレゼントだよ。これは多分、見ればすぐに使い方は分かると思う」


 そう言って私が取り出したのは——オートマチックの、普遍的な——拳銃だった。


「え、銃じゃん!?」

「うん、銃です」

「ほ、本物ですか?」

「多分、おそらく」

「なんでそんなものを……?」

「二人の護身用にと思って」

「いやいや、銃なんて使ったことないし……」

「私も……」

「マナハスは、ゲームでなら使ったことあるよね? 私とプレイしたこともあるし」

「いや、ゲームと実際にやるのは違うでしょ」

「似たようなもんじゃない?」

「全然違うだろ」

「でもまあ、素人が使えそうな武器なんて、これくらいしかなかったし」

「この銃も、火神さんの力で出したんですか」

「そうだね。(かたな)もだけど、武器も出せるんだよね」


 そう、ポイントと交換で武器も入手することが出来た。

 チュートリアルで最初に選ぶことが出来た武器は、全部あった。銃もあった。……弾もあった。


 ——心配してたけど、やっぱり普通に弾ゲット出来たわね。


 まあ、わざわざポイント使って入手しなきゃいけないからね。その点は、近接武器の方が便利よ。


「銃なら狙い付けて引き金さえ引けば子供にも使えるんだから、なんとかなりそうじゃない? 少なくとも、私みたいに刀振り回すよりはよほど現実的かなぁと」

「それはそうかもだけど……。そういえば気になってたんだけど、カガミン、アンタいつからあんなに刀を扱えるようになったの? 私が知らないだけで、剣道かなんか習ってた?」

「いや、これも謎の力で剣術を一瞬でマスターしたんだよね」

「マジで……? もはや何でもありだな謎の力」

「実際、昨日まで一度も刀とか触ったことないし。ゲームを除いて」

「それは凄いですね。やはり、天から授けられた奇跡の才能ということなんでしょうか」

「なんだか私までそんな気がしてきた……」


 おいおいマナハス。藤川さんに影響されてるじゃないの。変な宗教に入信する前には一言かけてよね。

 しかし思うに、例のスキルインストールは恐らく私以外の人間には出来ないだろうから、二人には自前の実力で武器を使ってもらうしかない。

 そうなると実際のところ、二人がなんとか扱えそうな武器など(コレ)くらいしかないのだ。


 誰が使っても威力は同じということは、誰でも使えるということだ。まあそうは言っても、当てられないと意味がないんだけど。

 相手が人間なら、構えて見せるだけで牽制としての効果はあるかな。まあ、ゾンビは、銃を見ても気にせず襲ってくるだろうが……。


「あの、私、相手が今そこら中を歩いている不気味な方たちだとしても、この銃を向けて引き金を引けるかどうか……正直、自信がないです」

「それは私もだなー。ゾンビが相手とはいえ、見た目はまるっきり人間だし。まあ、そもそも当てれる自信も無いんだけど」

「でも、(ちょく)でぶん殴るよりは銃のがマシじゃない?」

「それはそうだけど……」

「まあ、言いたいことは分かるよ。正直、私もそうだし」

「え、でもアンタは、もうすでに何人か仕留めてない? いや、別にそれをどうこう言うつもりはないんだけど……」

「必要な犠牲でしたね……」

「いや、まあ、何というか、私がさっきやったヤツらは多分、気絶してるだけだと思う」

「気絶? ゾンビって気絶するの?」

「それは正直、分からないんだけど。一つ言うなら、コレは私の刀の能力って感じかな」

「刀の……? その刀って、特殊能力ある感じのやつなの?」

「あるんだなソレが。まあ、つい昨日の夜に追加してみたんだけど」


 そう、昨日寝落ちする前に確認した中に、武器の強化の項目もあった。普通に攻撃力とかの基礎能力を増やすことも出来たが、それ以外にも特殊な機能を追加する、みたいな項目もあったのだ。


 それを見てみたら、刀の攻撃を非殺傷(スタン)攻撃にする機能というのがあったので、それを追加してみた。

 非殺傷というと、どういう感じなのかと思ったが、一言で言えば麻痺だ。ゲームとかの状態異常とかでよくあるヤツだ。つまりこれは、攻撃の属性が麻痺になる機能というわけだ。

 その代わりに、この機能を使っている時は、一切のダメージが入らなくなる。まあ、非殺傷なのだから、そうなるだろう。これは完全に、相手を傷つけずに無力化するための機能なのだ。

 仮に、戦う相手が人間だった場合、この機能は重宝するだろう。

 この機能を使うだけで、普通に戦いつつ、相手には一切怪我をさせることなく無力化出来るのだから。簡単に人を殺せる強さになった私のようなやつにこそ、必要な機能だ。


 これがゾンビ相手でも効くかどうかは、試さないと分からなかったけど、現時点ではちゃんと効果あるみたいだったね。

 さっき戦った時も、この機能を使っていた。つまり、あの発光し放電する刀身は、これを使っていたというわけだ。

 無論、これが効かなかった場合は普通に殺るつもりだったが、なるだけそれはしたくなかった。理由は二つ。

 先ほども言ったが、ゾンビになる原因が判明していない以上、返り血などが極力出ない方法で倒したかったということが一つ。

 もう一つは、もはや明らかに常人ではなくなっている“ゾンビ”であるが、一応、元は人間なのだから、殺すのは慎重にいきたいというのが二つ目。


 ゾンビと見ればぶっ殺す、というのは私としてはフツーに賛成だ。だが、場合によっては、ゾンビから人間に戻す方法が存在する——みたいなパターンである可能性はゼロではない。

 まあ仮に、そんな方法があったとしても、そう簡単に出来るような話では無いと思うけど。しかしその場合は、やはりゾンビ殺しも人殺しの範疇(はんちゅう)、みたいな扱いになる可能性もある。

 なので、確実にゾンビを殺して大丈夫みたいなオッケーサインが出るまでは、慎重にやっておいた方がいいかなーということなのである。

 私自身の感覚としては、ゾンビ=ぶちコロせよ! なのだが、周囲の感覚もそうとは限らない。


 実際のところ、マナハスだって「どう」かは分からないのだ。聞いたことないし。なので、その辺を見極めるまでは慎重にやっておこうというわけだ。

 まあもちろん、そんな悠長にやってる余裕がないような状況になったら、私は迷わずゾンビにもトドメを刺すつもりだけども。

 それこそ、マナハスがピンチにでもなったなら、見た目が人間だろうが元に戻る可能性があろうが関係ない。ゾンビなど皆殺しにする。——そう、ゾンビは皆殺し、ゾンビスレイヤーになる。


 まあ実際のところ、下手にゾンビを破壊することがないこの非殺傷攻撃は便利ではある。ゾンビに対する対処としては、悪くない選択肢だ。

 でも結局は気絶なので、そのうちまた起きだすだろうことは欠点だが。移動中の障害を排除するんだったら、問題無かろうと思う。

 仮に、周りにゾンビ不殺主義者がいた場合も、殺してないし気絶なのでセーフ、と言うことが出来るし。

 まあ、もし実際にそんなやつが居たとしたら、ゾンビ以上に距離を取りたいところだけどね。


「ゾンビが生きているか死んでいるかはともかく、この新機能を使って攻撃すれば相手を殺すことはないってこと。だから、私がすでに攻撃したゾンビたちも、まだ死んではいないはずなんだよね。もしかしたら、今頃また起き出してるかも」

「そうだったんか。私としては、ゾンビ相手なら普通にやっちゃっていいんじゃ、とも思うけどねー」

「まあ、あの時はまだバリアしてなかったから。下手に攻撃してたら、血塗(ちまみ)れになってたかも」

「ああ……それはヤバいし嫌だな」

「そう考えると、便利な機能かも知れませんね。あの徘徊している人たちにも効くなら尚更です」

「うん。——そこでね、二人に渡した銃の弾も、実はそれと同じような機能があるんだよ」

「弾に? そんな弾があるんだ」

「あったんだよね。だからまあ、それで撃ってもゾンビも人間も誰も死なないから、気にすることなく撃てばいいよ」

「それならまあ、撃てるか……。当たるかは別だけど」

「そこはもう、自力でやってもらうしかないね。私も、銃の撃ち方なんて詳しくは知らないし」

「え、それじゃあこの銃使えなくない?」

「いや、最低限の使い方は分かる。説明出るから。分からないのは撃ち方。構え方とか、狙い方とか」

「なるほど、そっちね」

「確か、銃の先端の突起と手前のヤツを合わせたら、真っ直ぐになるんじゃなかったかな……。ソレくらいしか知らないんだよね」

「調べてみた方がいいんでしょうか。ネットに載っていますかね?」

「うーん、時間もないし、ちょっと調べたくらいじゃ意味ないかも……。まあ、この銃はあくまで保険だからさ。使う機会はほとんど無いと思うよ。基本的には、敵には私が対処するから」

「それは、とても頼もしいです……!」

「まあ、それでも万が一があるから、色々と備えてみたんだよ」

「うん、たしかに今の私たちは、前に比べたらかなり安全度高まったよね」

「その銃も、最悪、外れないほど近くから撃てばいい。それこそ、ナイフくらいの射程の感覚でね」

「むしろ、その方が難しそうというか、ある種プロっぽくないソレ?」

「ジョン・ウィックみたいだよね」


 キアヌはマジで最高だよね。イケメンだし。性格もいいし。ぼっち飯も平気だし。飾らない魅力ってヤツだね。私がトゥリニティみたいないい女だったら、キアヌみたいな素敵な恋人が出来るかな?


 ——まずは自力でマトリックスの存在に気がつかないとね。


 うーん、もう人類の大半は気がついてるんじゃない? だって、現実がバグり出してるんだもん。

 それでも引っこ抜くプラグが見つからない以上、私はこのバグったゲームのような現実でやっていくしかないのだけど。

 少なくとも、私にとっての真実(親友)であるマナハスが、私の隣にいる限りは。——なんつて。



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