第251話 ついに、“特定の人物”が……そろいぶみ
「さて、それじゃ……案内するよ。どうぞ」
〈鏡の家〉の玄関部分である「鏡の間」にて——。
分身の私と共に〈霧鯨〉を無事に倒して捕まえたマナハスたちと合流してから、諸々の後始末まで終わらせた私は……
——いやまあ、本当はまだ全部は終わってないんだけれど、残りは分身とかに任せてしまうことにして……
せっかくの再会後も、なんか色々とバタバタしちゃって落ち着けなかったので……もういいから適当に一区切りつけて一休みしようやってことで、今になってようやく、彼女たちを連れてこうして〈鏡の家〉へとやってくることが出来たのだった。
「はぁ〜……これが鏡の中なのかぁ。確かに、一面どころか全面的に鏡張りになっているけれど」
「凄いです……鏡の中に入れるだなんて、さすが火神さんです……!」
「……なんかダジャレみたいだよね、それ」
「あっ、いえ、わ、私、そんなつもりじゃっ……!」
「いや、藤川さんは悪くないよ。悪いのは、ややこしいジョブばっか獲得してるカガミンの方だから」
「酷い言われようじゃん」
なんてことない感じで雑談しながらも、今の私は……目の前にマナハスの実物がいるということに、改めて感じ入っていた。
まあ、当のマナハスからすれば、私と離れていたのは、今日の朝から今にいたる半日の間くらいになるのだろうけれど……
しかし、時間の流れが異なる——というより、もはや片方は完全に時間が止まってしまう——異界に行っていた私からすると、マナハスと会うのは実に一週間以上振りなのだから……。
そう……ダンジョン攻略には無事に成功したので、私は当初の予定通りに——ダンジョンでは、(私の主観で)通算にして一週間以上も過ごしたにも関わらず——地球の方の時間は一切進めることなく、(地球からみると)ダンジョンに出発した直後に即時帰還を果たしていた。
——なので、私の体感の感覚とは違い、地球では今はまだ、私がダンジョンに入ってからいくらも時間が経っていない時点なのである(例の霧鯨も、わりとアッサリ倒せたし)。
まあ、〈攻略本〉にもそうなるよって書いてあったし、実際にそうなったんだけれど……やっぱりこれは、自分でもなかなか理解が及ばないくらいにおかしな感覚になる現象だと言う他にない。
とはいえ、それくらい迅速にダンジョン攻略を終わらせた私だったけれど……しかし、私が異界に行った時点で、マナハスはすでに危険極まる〈霧の領域〉に囚われの状態だったのである。
そのことはずっと、私の心の中に大きな不安として居座っていた。実際、心のどこかでは、常にマナハスのことを心配していたのだ。ダンジョンにいる間中、私はずっと。
だからこそ、今こうして、本物のマナハスと直に対面して、何気ない会話を交わすことが出来るという……この状況は、私にとってこれ以上ない幸せ以外の何物でもなかった。
さてさて、それじゃ……私の渾身の作品である、この〈鏡の家〉の中を張り切って案内してやろうじゃないの。
——何を隠そう、こちとらずっと、〈鏡の家〉の実物を見たマナハスたちが、一体どんな反応をしてくれるのかと……地味にそれを楽しみにしていたのである。
期待通りに、まずは鏡の中に入るという事態そのものに驚いてくれていた面々が、ひとまず落ち着いてきたところで……私は指をパチンと鳴らす。
すると——「鏡の間」の鏡はただの白い壁に変わり、部屋の中央に扉が現れる。
おお、と再び驚く面々に、私は説明していく。
「この扉の先にあるのが〈扉の間〉で、そこから各種のエリアに行けるようになっているんだけれど——」
話しながら私は、この場にいるメンバー——マナハス、藤川さん、越前さん、マユリちゃん、輝咲さん、マドカちゃん——のことを見回しつつ……
なんとなく、初見のインパクトを重視したくて「鏡の間」はデフォルトの全面鏡状態にしていたけれど……これからは基本的に、最初から普通の壁や床にしておくべきかな——と思う私。
だって、床も鏡だと……やっぱ見えちゃうんだもん。スカートの人は。その下の、乙女の秘密が。
まあ、今のメンツだと、制服姿の輝咲さんしかいないんだけどさ、スカートは。——そういやチアキも、それこそ制服だったっけ……。
それに、その輝咲さんは——どこぞの桃色過激さんとは違って——私が注意する前からすでに、スカートの中が見えないように自前の謎の光で隠すという、さすがの抜かりなさだったから、問題なかったけれど。
でも今回は、たまたまスカートなのが輝咲さんだけだったから良かった(?)けど、他の誰かがスカートだったら、ヤバいことになってたワケだし。
——まあ、プレイヤーのみんなに関しては、防具の機能の中にパンチラ防止的な機能があるから(そう、実はそんな機能もあるのだ)、すでに対策済みといえばそうなんだけれど。
でも、それこそ星兵のマドカちゃんとかは、その限りではないので……年齢的な部分も含めて、これはかなり危ないところだった。
彼女の着ている——マユリちゃんとお揃いみたいに似ている——カードバトラーの正式衣装(?)が、スカートじゃなくて良かったね……。
とかなんとか、頭の中では無駄なことを考えつつも、口から出てくる紹介のセリフはつつがなく進み……
私はみんなと一緒に「扉の間」の中に入って、ここにある十二個の扉について説明を終わらせていた。
「うわ……なんか、すごいな? てか正直、軽く説明されただけじゃ全然ピンとこないくらいには、ぶっちゃけ信じられないような話なんだけれど」
「驚きすぎて、理解が追いつかないのです……」
「同感だ。というか、俺は……ここが鏡の中だっていう事実が、いまだに飲み込めていないくらいなんだけれど」
ふむ、みんな順当に驚いてくれているね。
でもまあ、この様子だと、実際にそれぞれの扉の中を見ていったら、その時はもっと驚くことになりそうだ。
「確かに……これは凄いですね。異空間を作る能力といえば、相当な高等技能のはずですが——いえ、さすがは火神さんです。戦闘面だけに止まらない、そのマルチな才能……素晴らしいですね」
自信家の輝咲さんにそう言われると、素直に褒められているのか……若干疑わしいようにも聞こえるのだけれど。でもまあ、彼女の言っていることも、もっともではある。
実際のところ、サラッと披露しているけれど、この〈鏡の家〉を実現している能力は——仰せの通り、かなりの高等技術に当たる。
必要なスキル自体は、『鏡使い』がR4になった時点ですべて覚えるけれど……本来なら、そんなすぐに使えるようなものじゃない。
だというのに、私がいきなりこんな芸当を可能だったのは——まあ、ある程度は私自身の素質の高さもあるらしいのだけれど——それは、ほぼほぼ全部、〈攻略本〉のおかげだった。
〈攻略本〉には、こういう……本来なら多大な研究の末に編み出すようなスキルの応用的な使い方だとか、長い訓練の果てにようやく使えるようになるようなスキルの高度な扱い方などの——その“コツ”みたいなのが惜しげもなく載っているので……それを『習得』してしまえば、いきなり上級者もかくやという技が使えるようになっちゃうんだよね。
つまりはこれもまた、〈攻略本〉の極めて有用な部分の一つと言えるところなのだった。
そんなわけで、驚くみんなの様子を見て少し楽しくなったり——だいたいは〈攻略本〉のおかげなので——あまり褒められたものでもない部分を褒められてむず痒くなったりしつつ……
お次に私は、みんなを「談話室」に連れていく。
「さて……それじゃ、これからこの〈鏡の家〉を実際に回ってみてもらう——その前に、まずは、ここにいるメンツとも顔合わせをしちゃおうか」
そう言いながら、「談話室」の扉を開けると……
中にいたのは——この四人。
最愛の実妹、風莉。
桃髪の暴君、チアキ。
総鉄の機人、アニマ。
そして……無情な悪友、マリィ。
一部は面識があるけれど、大体は初対面同士なので、まずはちゃんと面通しをしておくべきだと思い、ここで引き合わせることにした。
「お、風莉ちゃん、さっきぶりだね。——改めて、この度は助けに来てくれまして、本当にありがとう」
「いえいえ、お気になさらず。頭を上げてください、真奈羽さん。私は当然のことをしたまでですから」
「それでもだよー、本当にありがとうね。——それにしても、風莉ちゃんもプレイヤーになったんだねー。『風使い』かぁ……ふふ、ピッタリだね?」
「そうですね、自分でもそう思います」
「なんかほんと、姉妹って感じだよね。カガミンもそう、『炎』と『雷』だからね〜。やっぱり、風莉ちゃんも『炎』を使えるんだよね?」
「ええ、そうですね。すでに『炎使い』の能力も使えます」
「てことは、『鏡使い』も——なのかな?」
「ですね、使えますよ。ただ……私はまだ、この〈鏡の家〉みたいなものを作ったりとか、そこまでは出来ないんですけど。——まあ、まだまだ能力者にもなったばかりですから。……でもまあ、いずれは私も同じことを出来るようになってみせるつもりです」
「そっかそっか、それは楽しみだね」
「ええ……私もまだ軽く見て回っただけですけれど、ここ、本当にすごいですから……これについては、素直に賞賛に値すると評する他にないですね」
「風莉ちゃんがそこまで言うなんて……よっぽど凄いんだね」
「そうですね。——まあ、素直に褒めるのはなんとなく悔しいんですけど……ね」
なんて風に——さっそく、元から面識のある二人が言葉を交わしている。
最後は何やら、愛しの妹氏は姉の方をジト目で見てきたけれど。なんでかな? ——最初にここを紹介した時に、ドヤ顔し過ぎたんかなー?
風莉に関しては——元から知り合いであるマナハスはもちろんだけれど——他の面々もさっき会ってるので、初対面というわけでもない。
とはいえ、その時は非常事態の真っ只中ということでバタバタしていたこともあり、まともに紹介が出来ていなかったし、事が済んだら済んだで風莉は自分だけ先にその場を離れていたので、結局まともに紹介しそびれていた。
なのでこの機会に、改めて我が妹のことをみんなに紹介しておくとしよう。
「あー、コホン。えっと、こちらの私そっくりなのは、私の妹の風莉です。みなさん、どうぞよろしく」
「……あ、その、火神風莉です。一応、火神雷火の妹です。えと、よろしくお願いします」
「こらこら、一応ってなんじゃ、一応って」
風莉の挨拶を受けて、みんな各々に——主に「確かに……似てるな。ほんと、そっくりだ」とか、「……すごい、そっくり……」とか、「ほんと、そっくりですね。そっくりで……二人とも、とてもお美しいです。——それにしても、姉妹そろってこれほど容姿に優れるとなると、なにやら遺伝子の見えざる力というものを実感させられま(以下略)」とかって、だいたい予想通りな反応が占める中……ボソッと「火神さんに、そっくりな妹さんっ……! な、なんて愛らしい……ゴクリ」なんて不穏なセリフも聞こえつつ——全体的に好意的な反応を返してくれる。
さて、この場はまず、元からここにいた方の四人を先に紹介したいので、連れてきたみんなの紹介は後にする。
というわけで、お次は……チアキかな。
「じゃあ次、チアキ。みんなに紹介するから、ちょっとこっちに」
「おう」
呼ばれて椅子から立ち上がったチアキを、みんなに紹介する。
「こちらのピンクのヤンキ——じゃなくて、ヤンチャそうなのは剛田千明。私と同い年で……出身も同じ辺りなんだったっけ?」
「ああ、たぶンな」そこでチアキは、みんなの方をジロリと見回す。「どーも、アタシはチアキ。んでコイツ——ライカには、デカい借りがあるッてンで、なんかイロイロと協力してたンだが……そンななりゆきでも、今となッちゃあ、もう普通にいっぱしのツレだな、そーだろ?」
「まあねー。短い間だけど、色々とあったからね」
「もちろん、借りはちゃんと返すつもりだから、任せとけ。——ああ、アンタらもよろしく」
チアキに関しては、私も出会ってまだ間もないし、彼女の人となりもよく知らないっちゃ知らないんだけれど……
とはいえ、これまでの短い付き合いの中でも、ひとまずは仲間と認めてもいいくらいには、お互いを知ることが出来たと思うところではある。
なかなか凶暴なところはあるけれど、意外と義理堅い性格をしているようだし、戦いに関して積極的な部分は、昨今の情勢下では、むしろ好意的に捉えることもできるし——とまあ、そういう諸々を考慮しても……
本人がそのつもりなら、私としても、彼女を仲間として受け入れるつもりだ。
みんなの反応としても——やはり真っ先に気になってそうな部分は、ピンクの髪についてだったけれど——とりあえず、今のところは問題なさそうだ。
では、次……
さーて、むしろチアキよりも問題児かもしれないぞ、コイツは……
「……さて、じゃあ次は——マリィ。アンタも、そろそろこっちに来なさいよ」
「……ああ」
そう言ってマリィは、そこでようやく——今の今まで、まるでみんなから隠れるように潜んでいた、こちらからは見えない柱になっている部分の向こう側から、後ろにアニマを連れ立って——みんなの前に出てきた。
その瞬間——ざわり、と——みんながどよめく。
それこそ、物怖じしなさそうな輝咲さんや、基本的に常に反応に乏しいマユリちゃんやマドカちゃんも含めて……全員が大きな反応を見せている。
それこそ、ただ一人——事前に(間接的に、ちょっとだけだけれど)面識のあったマナハスを除いて。
「こちらの、全体的に黒くて背の高い人は……私の昔馴染みで、今はプレイヤーでもある——悪友のマリィ。で、その後ろにいるのは、異世界で知り合った機械人のアニマ。えと、二人とも、ちょっと見た目が常人離れしているけれど……別に噛みつかないから、仲良くしてあげてね」
「……」
「みなさん、初めまして。ただいまご紹介に与りました——私は、アニマといいます。見ての通りの機械人です。皆様に敵対する意思はありません。ですのでどうぞ、友好的に接していただけると幸いです。現在の私は——こちらにおられます——支配人の支配下にあります。なのでどうか、御用の際は、先にマスターを通していただけますと助かります」
「……あーちなみに、彼女の言うマスターっていうのが、マリィのことなんだよね。そのー、事情があって、彼女はマリィには絶対服従なんだけれど……これは別に、マリィや彼女が特殊な趣味を持っているってワケじゃないので、誤解しないようにね」
「おい、火神、お前……もう少しましな紹介は出来ないのか?」
「そう言われてもね……私は事実しか言っていないつもりなんだけど。文句があるなら、自分で自己紹介すればいいんじゃない?」
「……いや、いい」
「いいのかよ……。まあその、人見知りなんだよね、この人。だからまあ、ほどほどに距離を保って接してくれたらいいと思います」
「……」
「そんで、アニマに関しては……まあ、私も知り合ったばっかりだし、これからお互いを知り合っていく段階——みたいな感じというか。でもまあ、危険はないから、その点は安心して大丈夫ですんで」
うーん、やっぱり……
この二人の紹介は、私をしてなかなか難しいんですわ。
実際、紹介されたみんなとしても、どう反応したものか——という感じの、困惑や不安のようなものが大いに見受けられる。
しかし、そんな中……そこで率先して自らマリィに声をかけにいったのは、やはりというか、我らが聖女様だった。
「あ、えっと……こうして直に会うのは初めてだよね、よろしく、マリィちゃ——じゃなくて。えっと、確か……ちゃんまり——だったよね、その、あの時に言ってた呼び方は……」
「へぇ……まさか、覚えていてくれたとはね。だいぶ前に、ほんの少し画面越しに話しただけの間柄なのに」
「うん、まあ……他でもない、カガミンの紹介だったから」
「そう……か。ああ、そう、その呼び方でいい」
「う、うん。えっと、その……私、カガミンから、いつも話を聞いてたんだ。マリィちゃ——ちゃ、ちゃんまりのこと。だから、なんだろう……初めて会うんだけれど、初めて会うような気がしない、というか」
「……己も、火神から何度も聞いていたよ。ちゃんまなの話は」
「ちゃ、ちゃんまな?」
「そう呼ばせてもらっても……いいかな?」
「ん、うん、いいけど」
「おいおいおい、不敬だなぁ……ちゃんまなだと? 聖女には“ちゃん”じゃなくて、ちゃんと“様”をつけろよ、磔刑に処すぞ?」
「「いやお前が言うな」」
「ふっ、不敬だっ……聖女とハモるなんてっ」
「「まずお前が様をつけろよ、デコ助野郎」」
「なんで君ら、初めて会うのにそんなに息ぴったりなん……?」
「さぁ、なんでやろなぁ……真面目にやってきたから?」
「ナニさんマークの引っ越し屋なん? マリィお前さん」
「というか、『ちゃんと様をつけろ』だと、聖女ちゃん様になるんじゃないの?」
「言葉尻を捉えて揚げ足を取らないでください、聖女ちゃん様」
「ふふっ……なんだろね、これ。お互いに誰かさんとの付き合いが長いんだなぁって、なんか納得しちゃうんだけど」
「確かに……お互いにすでに、誰かさんによってかなり侵食されてるってことが、今回のことで改めて実感できたな」
「なにさ……人のことをまるで、接した相手に変な影響を与えるアレな人みたいに言いやがってよ。私のような清廉潔白で慎み深い人間を取り上げて、なんという——」
「「「いや、それはない」」」
「なんで今度は風莉までハモってんのよ!」
「あ、ごめんお姉、さすがに聞き捨てにならなかったから……つい」
「寝言は寝て言えよ。すげぇな、目ぇ開けたまま寝てんのか?」
「自分の内面を映し出せる鏡とか、あったらいいのにね」
「んふっ……」
「さすが真奈羽ちゃん。それ最高」
「コイっツら、マジでよぉ……っ!」
何コイツら、なんで共通の敵を前にして結託した“お互いを知り尽くした長年の敵同士”かのように——一瞬で意気投合してんの?
はぁ……まあいいわ。
結果的には、いい感じにお互いに馴染めたみたいだし。
というか、実際——マリィとマナハスって、この二人が直接会うのは、なんやかんや今回が初めてだったから……こう見えて実は、私としてもかなり気を張っている部分はあったのだけれど。
この二人の、お互いの相性とか、どうなんだろうって思って……けっこう不安な部分があったんだよね。
——性格というか、性質みたいな部分は……わりと真逆なような気がする二人だし。
——共通の友達(私)の友達同士だからって、お互いに仲良くなれるとは限らないし。
——だからそう、二人が直接会った時にどんな反応を見せるのかは、私にもまるで予測がつかなかった。実際に、そうしてみるまでは。
だけど……蓋を開けてみれば、これは見たところ、ぜんぜん問題無かったっぽい感じじゃん?
ならまあ……良かったよ。……本当に。
私としても、自分と最も仲の良い友達二人が普通に仲良く出来るなら、それに越したことはないからね。
それは……ある意味では、今日という——色々なことがあった、盛りだくさんの——一日の中でも、もしかしたら一番に緊張したといっても過言ではない出来事だった。
それくらい、私にとっての「特定の人物」同士の初邂逅イベントというのは、大きな意味を秘めた大切な一歩だった。
とはいえそれも、こうして無事に、いい感じに終わってくれたので……
私は大いに安心して、ホッと胸を撫で下ろすことができたのだった。




