第239話 地球→異世界(ダンジョン)→〈鏡の家〉(固有鏡界)→「裏口」の向こう側(裏界)←(イマココ)
目覚めはいつになく爽快だった。
異界攻略、二日目——
私は、〈鏡の家〉内にある自宅の自室(を再現した空間)にて目を覚ました。
さて、では……起きて最初にすることといえば——
分身との“繋がり”を通して、ここにポエみんを呼んで、起床後の支度を手伝ってもらうことだね……。
ポエみんのお陰で、ラクラクかつ颯爽と寝起きからの習慣である(顔洗ったり、歯磨きしたりとかの)アレコレを終えた私。
一晩(と、言っていいのか……そもそもこの〈鏡の家〉には昼夜の概念が無いし、そんな〈鏡の家〉から見たら今はダンジョンも地球も時間は止まってるし、それぞれの時差のこともあるから……もはや時間の基準がめちゃくちゃなので、体感としてはそれくらい経った——という話だけれど)グッスリ寝たら、気力もバッチリ回復したし……
ポエみんの手助けのお陰で、面倒な身支度がサクサクと半自動で終わったのもあって——昨日いっとき落ち込んだのが嘘のように、今朝(ということにしている今現在)にはスッキリした気分になっていたので……
私は今日も休むことなく、ダンジョン攻略に取りかかる。
まずは「管理室」からの放送により、他二名に(まだ寝てるなら、目覚ましもかねた)おはようのご挨拶をするのに続けて、「談話室」に集まるように伝える。
そして私自身も「談話室」へ——行く前に、先に「待機室」に立ち寄って、中にいる星兵たちを全員呼び出してから、彼女たちと一緒に「談話室」に向かう。
私たちがついた時には、すでにマリィも来ていたので、みんなで雑談しながら待っていたら……しばらくしてチアキも来て全員が揃ったので、ポエみんに朝食(便宜上そう呼ぶ)のメニューの希望を各々が伝える。
そして、朝食が出来上がるまでの間に……私は改めて、本日の予定というか、これからの“攻略の流れ”について、みんなに話していく。
そもそも、ダンジョンを攻略するというのは、どういうことなのか。
ダンジョン攻略の定義というか——攻略を達成するための絶対条件を一言で表すなら、「ダンジョンに入り、ダンジョン側にある地球へと繋がる〈魔境界穴〉を見つけ、そこにダンジョンゲート(D・G)を設置した上で、ゲートを通り地球に帰還する」……と、こういう風になる。
なので手順としては……
①「〈D・G〉を所持している状態で——」
②「地球に繋がるワームホールを見つけ出し——」
③「ワームホールのある周辺(の安全)を確保し、ゲートを設置する」
という感じになる。
まず、①について。
〈D・G〉は、ダンジョンをクリアするために必須のアイテムである。——なにせ……これがないと最悪、異世界から地球に帰れなくなるかもしれないので。
つまりは、それだけ重要なアイテムなので……私はこの〈D・G〉というアイテムに関しては、まずもって複数の予備も含めて用意した上で、それらを別々に保管するようにするなど——事前に何重にも保険をかけていた。
〈鏡の家〉の「倉庫」にも入ってるし、マリィたちの【装備欄】の「乗り物枠」にもそれぞれ入れてるし……なんなら——そういった特殊能力由来の方法で保管するのではなく——実物を〈異界突入艇〉の後ろに連結させて、そのまま持ち込んでもいた。
そして現状、その連結していた一つ以外は紛失していないので、一応は①の条件はすでに満たしていると言える。
……まあ、うん。
案の定というか——連結していたヤツは、現時点ですでに紛失している。
そも、ダンジョンに入る際に、なぜわざわざ〈異界突入艇〉を使うのか。
その理由の一つは、そうしないと危険だからだ。
それくらい、ダンジョンに入る際には大きな衝撃が降りかかる。
それこそ、連結していた〈D・G〉が、その衝撃によりどこかにいってしまうくらいには。
ではなぜ、そうして紛失する可能性が高いと事前に分かっていながら、それでもなお、そうして持ち込む必要があるのか。
それもやはり、念の為の保険だ。
なにせ、場合によっては、この連結していた〈D・G〉が唯一の希望にして生命線になる可能性もあるので。
ダンジョンでは能力が使えなくなる可能性が大いにある。
なので、場合によっては、どこそこに『収納』していた〈D・G〉を取り出すための能力が、そもそも使えない——なんてことが、普通に起こりえる。
その最悪の事態に対応するためにも、最低でも一つは実物をそのまま持ち込むという用心が必要不可欠だった。
まあ……今回は〈攻略本〉があったので、これから向かおうとしている〈機械獣のダンジョン〉では、少なくとも、それらの収納系の能力が使えないことはない——ということは、事前に分かってはいたのだけれど。
だからといって、用心しなくてもいい——とはならない。
なぜなら……そもそも、予定通りにその〈機械獣のダンジョン〉に入れるかどうか自体、実際に行ってみないと分からないところがあるので。
ダンジョンに入る際の、ワームホールを通っている状況というのは……実際のところ極めて危険であり、また、この上なく不安定でもあるので、一切の予断は許されない。
世界から世界へ——次元を超える瞬間というのは、何が起こってもおかしくない。
事実として、機械獣がそこからやってきたのだし——その可能性は高いとはいえ——ヤツらが通ってきたワームホールに入ったからといって、〈機械獣のダンジョン〉に入れるとは限らない。
ぶっちゃけ、それでもまったく違うダンジョンに入ってしまう可能性というのも、実はゼロではないらしい。
それらの問題が引き起こされることに関しては、諸々を引っくるめて「混乱入場」と呼ぶらしい。
そもそも、実際に入るまで、どんなダンジョンにたどり着くかも分からないということを筆頭に——
ダンジョンに入った時にも、大抵は着界地点が、地球に繋がるワームホールのある場所とはだいぶズレた場所になってしまうこととか——
今回のように、〈異界突入艇〉に連結していた〈D・G〉がどっかにいってしまったり……それどころか、どういうわけか、ポッドに一緒に乗っている仲間と——あるいは、もはやそのポッドそのものとすら、着界時点ですでにはぐれていたりすることもあるとか……
正直、まるで意味が分からないような話もあるけれど……これらは全部、「混乱入場」によって引き起こされる問題なんだと。
しかしまあ……改めてそれらの話を振り返ってみると、今回の私たちについては、まだだいぶマシな方なのかもしれなかった。
確かに今の時点で、連結していた〈D・G〉を案の定すでに紛失しているし……地球へ繋がっているワームホールも、やっぱり近くにはないけれど……
でも、ちゃんと狙い通りに〈機械獣のダンジョン〉には来られたし、仲間やポッドともはぐれていないのだから……やはりこれは上出来な方なんだろう。
ともかく、現状としてはそんな感じなので……①については一応、達成できてはいる。
とはいえ、連結していた〈D・G〉を一つ紛失してしまっているので、できれば回収しておきたいところではある。
もっとも、予備の(もしくは本命の)〈D・G〉が確保できている以上、これは優先度としては高くない目標となる。
すでに複数の手持ちがあるとはいえ、けっこう貴重なアイテムであることに違いはないので……捨てていくのはかなりもったいないし、できれば回収しておきたいと思うけれど……しかし、状況によってはやむなしと、捨て置いてしまうという覚悟もしていた。
それこそ、紛失した〈D・G〉の位置がまったく分からなくて、探すのに時間がかかりそうとか……場所は分かるけど、めちゃくちゃ遠くにあるだとか……そういう状況なら——それも仕方ないと諦めるつもりだった。
とはいえ……幸いにして、今回の場合はすでに、紛失した〈D・G〉の現在位置を掴むことが出来ていた。
——〈D・G〉には、自分の位置情報を発信する機能があり……運の良いことに、私はすでにその信号を受信していたのだった。
所在が分かっているなら——それに、ここからはそんなに遠いわけでもないようだったし——回収することはやぶさかではない。
なので、今日はまず最初に、この〈D・G〉を回収しにいく。
それと同時に、〈攻略本〉に載っている地図と、移動中に観測した周辺の地形とを照らし合わせることで……ダンジョンにおける現在地を導き出す。
したら、続いての目標である、②の「ワームホールの位置」についても当たりをつけることができる。
そう……「混乱入場」により、開始地点こそどこになるか分からないけれど……しかし、〈霊穴〉の位置はさすがに変化していない(可能性が高い)ので、その情報は〈攻略本〉に載っているのである。
——いや、じゃあそもそも、〈攻略本〉が無かったらどうやってソレ探すんだよ……って話だけれど。その場合はまあ……〈霊穴〉に連なる〈霊脈〉を感知する道具とかを使って、地道に探していくことになる……らしい。
正直、〈攻略本〉無しだと、このパートはクッソめんどいらしいので……その点はマジで、〈攻略本〉があるお陰で助かっている。
作戦行動が順調に進展して、ワームホールの位置が判明したならば、もう半分以上は攻略が進んだといっていいくらいなのだけれど……今回の場合は、そもそもの目的が「攫われた人たちの救出」なので、それでもまだ半分にも満たないというところだろう。
ぶっちゃけ、攫われた人たちが今どこでどうしているのか……それはまったく分からない。
ただまあ、地球に繋がるワームホールのある地点にいけば、おそらくは何らかの手がかりがあるだろう、といったところか。
いやまあ、〈攻略本〉にはその辺なんて書いてあんのさ、って話なんだけれど……なんかアレなんよね、その辺りになると“ネタバレ防止”とか言って、詳しくは載ってないというか……
いやまあ、載ってはいるっぽいんだけれど、“ネタバレになるから、見るタイミングは慎重に”——とかって書いてあるから……まだ見てないんよね。
少なくとも、事前に知っておくべき情報についてはちゃんと教えてくれた上での、その配慮らしいから……うーん、そうかぁ〜——って思いつつも、とりあえず今んとこはそれに従ってる。
とはいえ〈攻略本〉としても、まずは——〈D・G〉を紛失している場合に、回収が容易そうなら、先に回収しておいた上で——「ワームホールの位置を特定して、そこに向かえ」ってなってるので、その通りに動く。
……と、そこまでの話を——〈攻略本〉により、すでにあらかた把握しているからというワケでもないけれど……案の定、食事の際には一人で別室に行ってしまったマリィはともかくとして——みんなに話して聞かせ終える頃には……
ポエみんが朝食を作り終えるどころか、それをすっかり食べ終えてしまっていた。
なので続いて、私は皆を連れて「鏡の間」にやって来ると、これからの移動に関する話を実地で行うために、その場所へと繰り出した。
そう、ここに出てくるのに使ったドア——それをひっくり返して「裏口」にしてから開いたら、その先に広がっているのは……外だけれど、ただの外ではない外。
この“特殊な外”に関しても、初めにしっかりと説明しておく必要があるだろうから。
“外”に出る前には一応、しっかりと【生存環装】の機能を使用した上で……私はみんなを引き連れて荒野の大地に踏み入ると、この場所の特異性について皆に説明していく。
この場所について説明するには、その前にまず、『鏡使い』の能力について説明する必要がある。
この〈鏡の家〉という異空間に入るのにも使用した能力である、『鏡使い』のR4で覚えた【鏡界潜入】というスキル。
このスキルは、特定の鏡の中に作成された固有の異空間——「固有鏡界」に入るというもの以外にも……大きな区分けとしてもう一つ、別の使い方がある。
それというのが……どの鏡からでも入れる、世界共通の左右反転した裏世界である——「共有鏡界」に入る、という使い方だ。
……というより、「固有鏡界」に入る方が応用的な使い方であり、「共有鏡界」に入るのが本来の使い方だと言うべきか。
この「共有鏡界」は、現実の世界をまるごと左右反転させたような、“もう一つの”、あるいは“裏の”世界であり——なんというか、元から存在している(らしい)そんな(裏)世界に、この【鏡界潜入】のスキルを使って入れるようになっただけであり——重要なのは、その(裏)世界は私が【鏡界潜入】のスキルを使って作り出したわけではない……という部分で、そこには注意する必要があるだろう。
というのも……仮に、私以外にも『鏡使い』のプレイヤーがいたとして(例えば、風莉とか)、ソイツが【鏡界潜入】の能力を使って入る「共有鏡界」と、私が入る「共有鏡界」は同じ世界になるのである。
つまりは、この二人が向こうで同じ場所に向かったら、私とソイツは、そこでバッタリ出会うことになる……という、そういう意味での「共有鏡界」なのだ。
とはいえ……まさかこのダンジョンにおいては、私以外に『鏡使い』の能力者がいるとも思えないので——誰かにばったり出会うだなんて——そんな心配をする必要はないだろうけれど。
この「共有鏡界」には——現実世界とは大きく異なる部分として——二つの大きな特徴がある。
まずは第一に、「すべてが左右反転している」ということ。
これがどういう感じかというと……仮に、地球でこの「共有鏡界」に入ったとすると——あらゆる場所の地理関係が左右反転しているので——それこそ、日本列島の向きがまるまる左右逆になっていて、関東が関西より西に位置している……といえば分かるだろうか。
いや、そもそも、この西とか東とかいう概念すら反転している、と言った方がいいんだろうか……?
まあ、とにかく……そんな感じで、日本に限らず外国の位置関係も、地球全体で、なんなら太陽系や銀河系も、宇宙全体の位置関係が左右反転している。
なんて言うと、いかにもスケールがデカい話になってくるけれど……逆に細かいことをいうなら、この世界にある本はすべて鏡文字になっているので、めっちゃ読みにくい、なんてのもある。
この共有鏡界は、現実世界を鏡映しに反転させた——まさに〈鏡の中の世界〉なので、現実にあるものは“とある一つだけ”を除き、すべてこちらにもちゃんと存在している。
地球でいうなら……山も、川も、空も、大地も、建物も、車も、電柱も、家も……家屋の中にある家具たちも、その家具の一つである机も、その机の上に置いてある本も——そこに書かれた文章も——その本の上に無造作に放られたスマホの中にある情報ですら……すべてが揃っている。
そんな中でただ一つ、現実世界と大きく違う部分として挙げられるのは……それは、「自ら動くものが一切存在していない」という点だろう。
それがこの「共有鏡界」の持つ、現実世界とは違う大きな特徴の二つ目だった。
そこは、無人かつ無動な……生物がほとんどいない、静謐なる世界。
完全に無生物——とまで言えないのは、植物は普通に存在しているからで……なのでやはり、「自ら動くもの」がいない世界というべきなのだろう。
そしてその特徴は、地球から遠く離れたこの異世界においても、ちゃんと適応されていた。
このダンジョンでも、「共有鏡界」には動くものが一切いない。
そう……機械獣も、ここにはまったくいないのだ。
だからこそ、移動にはこの「共有鏡界」を使う。
この「共有鏡界」に入れるのは、私の【鏡界潜入】と同種の能力を持つ存在だけであり……そんな存在は、ここには私以外いないはずなので——だとすれば、この中で動ける存在は私だけになる。
要は、この「共有鏡界」を利用すれば、機械獣と一切エンカウントすることなく安全に移動することができる、ということなのである。
なんだか色々な可能性を感じさせてくれるし、なによりとてつもない利用価値を感じさせてくれる「共有鏡界」なのだけれど……実は一つだけ——その利点をまるごと打ち消しかねないくらいに——とんでもない欠点も抱えている。
それというのも……先ほど挙げた「共有鏡界」の特徴である、「すべてが左右反転している」というのは、何もこの「共有鏡界」のものだけに適応されているのではなく……ここに入ってきた異物にも一部、適応されてしまう。
では、異物である私たちに、その一部の性質が適応されると、一体どうなるのかというと……「共有鏡界の中では、私たちの動きも左右反転してしまう」ようになる。
いや、動きというか……もっと正確にいうなら、動かそうとする意思——と言うべきなんだろうか……?
まあ、とにかく……この世界に足を踏み入れた人間は、その瞬間から——右手を動かそうとして左手を動かしてしまう、という感じに——すべての動きが左右反転することになるので、当然のように大いに混乱してしまい、そのままではロクに身動きもできないようなひどい状態になってしまうのである……。
当然、このような致命的な問題をそのままにしていては、この「共有鏡界」を利用するどころではない。——下手したら、一歩中に足を踏み入れたが最後、元の世界に帰るために再び鏡を通り抜けようとすることすらままならずに、そのまま詰む可能性すらある。
なのでまあ、私はちゃんと、この問題を解消する手筈もすでに整えている。
その解決法というのは、【鏡界潜入】を使う際に、同時にもう一つ、【鏡映反転】というスキルを併用する、というものだ。
こうすることで、左右反転世界をさらに反転させ、元通りの——左右反転していないそのままの向きの裏世界に入れるようになる。
この二重反転した「共有鏡界」からは、「すべてが左右反転している」という特徴はなくなるので、中に入っても普通に動ける。
しかし、もう一つの特徴は残っているというか——ここもここで、れっきとした“鏡の向こう”にある〈裏世界〉であることに変わりはないので——現実世界とは違い、「動くものが存在しない、もう一つの謎の世界」だというところは同じであるため……敵と遭わずに済むという利用価値はそのままだ。
〈共有鏡界〉とも違う、この世界が何なのかは詳しくは分からないけれど……(そもそも「共有鏡界」自体、何なのか知らない、謎に包まれた世界だけれど……)、ともかく、鏡界の最大の特徴である「左右反転」がない世界なので、この〈もう一つの裏世界〉については、そのまま「裏界」と呼ぶことにした。
ここでようやく、話が最初に戻ってくるのだけれど……
つまりは、今私たちがいる——「裏口」を抜けた先である——この場所こそが、その「裏界」なのである。
この「裏界」は「共有鏡界」同様、機械獣を含めた“動くもの”がまったく存在していない——ゆえに安全であり……
しかして、鏡界とは違い、「自分の動きも左右反転する」というデメリットもない——ゆえに問題もなく……
であれば、この裏界を通って移動するようにすれば、敵とのエンカウント無しでサクサクと安全に移動できるということなので——ゆえに最強(の移動方法)なのである……というわけ。
という、ひとしきりの説明を終えたところで……私はさっそく〈D・G〉の回収に向けて出発した。
移動に使うのは、もはやお馴染みの例のヘリ。操縦を任せるのはランディだ。——彼女は自前のスキルにより、かなり高度な操縦技術を発揮できるので、ヘリも問題なく飛ばすことが出来る。
——他の星兵については、またすぐに「待機室」に戻ってもらった。
私とランディの二人だけでも良かったのだけれど、マリィとチアキもついてくると言ったので、この四人で向かうことになった。
周辺の地形を観測しつつ……しかし、まったく敵も出ないし、ぜんぜん変わり映えのしない景色しかないのですぐに退屈になり、適当な雑談で暇を潰しながら進むこと、しばらく——
道中はなんの障害もなく、空中を高速で順調に進めたこともあり……
言うほど時間をかけることもなく、私は目的の〈D・G〉の付近にたどり着いていた。
が、しかし……
私たちが目的地に辿り着こうとした、まさにその時——
なにやら唐突に、それまで捉えていた〈D・G〉の反応が、フッと消えてしまったのであった。




