第226話 ミッションコンプリート!(※ステルスプレイは地味なので、全編カットしました)
《——“領域”が攻略されました》
はぁ、はぁ——ついにクリアしたぞ……これにて一件落着だ。
長く辛い戦いだった……まあ、ほとんどは待機時間だったんだけれど。でも、だからこそ逆にキツかった……。
《目標——【“領域”の攻略】が達成されました》
よしよし、こっちのミッションもクリアされたね。
——おうおう、さすがは“領域”の攻略報酬……破格だね。
これだけのPPがあれば……うん、余裕でLv20まで上げられる。
ではではさっそく、上げてしまおう。
そらいけ!
ピコンピコンピコンピコン——ピコンッ!
〈条件達成を確認〉
〈新たな機能が解放〉
よしきた、解放されたぞ……!
この“領域”を支配していた機械獣を倒したので——今この“領域”は、支配者不在の空白になっている。
ゆえに、今なら“領域”に干渉することで、その支配権——もとい、管理者権限を獲得することができる。
そして、そのために使う機能こそが——Lv20で解放される新機能なのだ。
なので、まずは新機能——【領域制覇】の権能を使って、“領域”の管理者権限にアクセスする。
『“領域干渉——管理権限……接続完了”』
……っ、よし、成功だ。
したら次は、“領域”にかかっている“通信封鎖”を解く。
『“領域管理——効果調整——通信開通”』
そうすれば……別働隊の“私たち”や、“領域”の外とも通信できるようになる。
……と、さっそくきたかな?
『こちらE班、こちらE班……A班、応答せよ——なんてね』
「カノさん……久しぶり」
『ええ、まったくね』
「そっちの進捗はどう?」
『バッチリよ。当初の予定通りに、回収するべき対象はすべて回収できたわ』
「おお、さすが」
『そっちこそ、通信封鎖も解けたし、何よりさっきの天の声だからね……上手くやったみたいじゃない』
「まあね、でもだいぶ……いや、かなり時間がかかっちゃったけど。だって——お昼過ぎには攻略開始したのに、もう夕方なんだもん。こんなに時間経ってたなんて……自分でも驚いてる」
『それは……お疲れさま。なんというか……相当大変だったみたいね』
「まあね……」
『気づいてる? 「鏡使い」のジョブのランク、上げられるようになってるわよ』
「お——ほんとだ」
『よかったわね。これで一気に行動選択の幅が広がるわ』
「だね。まあ、このタイミングでランクアップするってのは事前に予想してたし、実際、“攻略本”にもそう書いてあったけれど……でもほんと、よかったよ。安心した。なんせ、ここでランクアップ出来なかったら——それはつまり、“あのスキル”や“あのスキル”が使えないってことで——それすなわち、今後の行動に多大なる支障が出るってことだからね……」
『ええ。なんたって“異装能力”や“転移能力”ですものね。文字通り、次元が違うわ』
「——まさか私も、自分が異装能力者や転移能力者になろうとは……夢にも思ってなかったよ」
『まったくだわ。そういう意味では、「鏡使い」は当たりのジョブだったわよね。——分身といい、変身といい……そして何より、極めつきには、異次元に干渉するようなスキルだなんて、とんでもないものまであるのだからね。レアジョブ扱いだというのにも頷けるというものだわ』
「まあねー。『鏡使い』はほんと、有能なスキルがいくつもあるけれど……でも、なんやかんや、中でも一番有能なスキルだと思うのは、私としては転移とかよりも、むしろ、あっちのスキルなんじゃないかと——」
『ああゴメン、長話は後にしましょ。“領域”は攻略されたけれど、これで終わりってわけではないのだし。むしろ、ここからが始まりでしょう? 無駄にする時間は無いわよ』
「ああ、うん、分かってるよ……」
『まあ、アナタも大変だったんでしょうけれど……えっと、そういうことだから、出来るだけ早くに「鏡使い」のランクを上げてくれるかしら。そしたらワタシもすぐにそっちに合流できるし、そうした方が、色々と手伝うにも都合がいいでしょ?』
「あ、もうランクアップ処理はやってる。……てか今終わったよ」
『あらそう? それなら、すぐにそっちに向かうわ。——件の転移スキルを使ってね』
「了解。それじゃ、お待ちしてまーす」
『ええ、すぐ行くわ』
言うが早いか、カノさんが——詳しい所在はともかく、ここからはだいぶ離れた地点であることは確かな——その場所で、自分のすぐ側に鏡を出現させたことを、私は感じ取った。
なので私も、自分が今いる——機械獣たちが作っていた要塞の、地下深くにある最深部(あるいは司令部)の一角である——メカメカしい小部屋の中にて、応じるように鏡を出現させる。
そして私は、それら二つの鏡を意識して、お互いを“繋げる”。
『“鏡渡り”』
そのスキル——『鏡使い』のR4で覚える【鏡界潜入】と【鏡面接続】の合わせ技により、特定の鏡同士を“繋げて”実質的に転移することを可能にするという技である——“鏡渡り”を使って。
すると……私が出現させた等身大の鏡——それを今まさに通り抜けて、カノさんが目の前に現れる。
「お待たせ——っていうほど、待ってないわよね」
「うおぉ……マジで“転移”なんだね。これはすげぇや……」
「ふふ、そうね。——ほんと、とても便利だわ、これ……」
「ん……あれ、そこそこ遠くに行ってた感じ?」
「ええ、そうね、“領域”の外まで出ていたから。それこそ、“転移”でもなければ、プレイヤーといえどもすぐには合流できない距離だったわ」
「あ、そーなん?」
「まあ、それというのも……ワタシの方の要件は、すぐに終わらせちゃったから、暇してるのも時間の無駄だと思ってね……だから一度、“領域”の外に出て——D班の“ワタシ”とか幽ヶ屋さんとかと通信を繋いで、情報共有したりとか……今後の展開を進めていく上で、必要になるアレコレとか……その辺について——まあ、色々とやっていたから」
「お、マジすか。それは助かる……」
「だからアンタにも、他のそれぞれの場所の状況なんかを共有しておくわね。はい——『“どうぞ”』……これでいい?」
「ん——ん……了解。……ふむ、幽ヶ屋さんたちの方とかにまで構う余裕なかったけれど、彼女たちも彼女たちで、自分たちで色々とやってくれてたんだね」
「そうね。——それじゃ、ワタシはさっそく、“異境界門”の設置に取りかかるとするわね?」
「あ、お願いできる? 私はみんなを呼び集めるから」
「ええ。でも——そんなに転移を連発して、大丈夫なの……?」
「平気平気。今はこの“領域”から、いくらでも魔力を引っ張ってこれるからさ。もういくらでも使えちゃうよ」
「いえ、そうじゃなくて……魔力は足りるにしても——いや、まあ、いいわ。今は時間が惜しいものね。……でも、転移スキルは強力な分、消耗するMPはもちろん、発動にかかる負担もかなり大きいんだから……気をつけなさいよね」
「まあ、そりゃー、転移だからね。消耗や負担は相応にあるでしょうよ。でもたぶん、この“鏡渡り”に関しては——転移スキルの中では、まだそういう消耗や負担が少ない方だと思うよ」
「そうね。まあ、事前に鏡を設置している場所にしか行けないから……どこにでも好きに行けるわけじゃないぶん、その辺りの消耗が少ないというメリットもある——ってところなんでしょうね」
「だねー。ま、プレイヤー同士の場合は、アイテム欄経由で鏡を送れば、事前に設置しておく必要もないんだけれどね。それに、分身は元から“繋がり”があるから、通信封鎖でもなければ普通に行き来できるし。そう考えるとさ、この分身と転移の組み合わせってのも、なかなか——」
「はいはい。そういう話も後で、ね」
「……はーい。そんじゃゲートの方は、よろしくね」
「ええ、任せて」
そう言うなりカノさんは、さっそく“門”を設置しに——この要塞の深部の、さらに別の一角にある——“魔境界穴”のところへと向かっていった。
それを見送った私は、すぐに次の行動に移る。
まずは風莉のところに向かった“私”の元に、分身との“繋がり”を通して鏡を出現させる。
そして次に——まだこの場に残っている——カノさんが出てくる時に使った鏡を、今度は風莉のところの鏡と繋げることで、ここと小学校を行き来できる鏡界門を作り、風莉たちをこの場に呼び出した。
『“鏡渡り”』
するとさっそく、風莉の元に向かった“私”が鏡界門を通り抜けて出てくる。
それに続いて今度は風莉が——どこかおっかなびっくりといった様子ながらに——鏡界門を抜けて、この場に現れた。
出てきてすぐは、ここがどこなのかと——どことなく、不安そうにしながら——キョロキョロと落ち着きなく周囲を見渡していた風莉だったけれど……
その視線が私の存在を捉えたところで——その瞬間、明らかにホッとしたような表情になったことを、私は見逃さなかった——私も私で、無事な風莉の姿を直接この目に収めて、大いに安心する。
都合、五日ぶりに再会する、我が愛しの妹に……私は優しく声をかける。
「風莉……お帰り。本当に……無事でよかった」
「お姉……。ん……ただいま。てか、お姉こそ……お帰り」
「ん、そうだね、ただいま」
「……」
「……ん、どした?」
「……やっぱり、こっちが本物のお姉なんだ」
「——おいおい、まるで私が偽物みたいに言うじゃん」
「だってそうでしょ、実際、なんかずっと違和感あるんだもん……こっちのお姉は」
「……えー、なんだろ——やっぱ顔が左右逆になってるから? さすがに身内ともなると、そういう微妙な違いにも気がつくってコトかね」
「え、マジで? なにそれ——キモッ……」
「おおいっ、実の姉の分身にキモいとかゆーなっ」
「……あー、えっと、“私”。悪いんだけどさ——私も私で、自分がもう一人いるのって、ややこしいし、なんかキモいから……アンタはこれからすぐに、マナハスのところに向かってくれる?」
「おいおい“私”ぃ、自分で自分にキモいとか言うなよぉ……——ってぇ、何? マナハスのところに? ああ、うん、そういうことなら、行ってきますか」
「うん、お願い。どうやらマナハスの方も、すでに“例のアレ”の中に入っちゃってるみたいだからね……」
「……そうだね。ならまあ、急いだ方がいいか。——了解。それならすぐに向かうとするけれど……えっと、移動の段取りについては——どうやら、もう出来てる感じ?」
「そう……不世出の麒麟児と——私の中でもっぱらの評判であるカノさんの手腕によって、すでに抜かりなく……ね」
「ほー、さすがはカノさん……有能だなぁ——」
「どうも、シノブも手伝ってくれたみたい。おかげで、出口の鏡は、すでにマナハスのおじいちゃんの家にあるみたいだから……」
「あとは、アンタが入り口の鏡を繋いでくれたら——それでいいってわけ?」
「そうそう、そゆこと」
「あいあい……なら私、行ってくるわ。——それじゃ、風莉、“私”、また後でね」
「うん、じゃあよろしく」
「……よく分からないけど、いってらっしゃい」
「うん、それじゃあね」
というわけで……分身の“私”は、私が用意した——マナハスのおじいちゃんの家へと繋がる——鏡界門を潜って、マナハスを助けに向かったのだった。
——マナハスのこと、頼んだぞ、“私”……
私はその“私”の背中を、マナハスの無事を強く祈りながら見送った。
「……真奈羽ちゃんって、今どこにいるの? 私はてっきり、お姉と一緒にいるんだと思っていたんだけれど……」
「ん……まあ、今はちょっと、別行動中なんだよね」
「えっと、真奈羽ちゃん、今、危険な状態なの……?」
「そうだね……なかなか大変な事態に見舞われてるみたい」
「そう……なんだ」
「……でも大丈夫、アンタを助けたみたいに、マナハスのこともきっと私が助けるから。私にはそのための力がある。——だから大丈夫、きっと……」
「……力、か。ねぇ、それって私にも目覚めさせてくれるって……言ってたよね」
「ああ、うん、そのつもりだよ」
「……まあ、今は忙しいなら、別に、すぐにとは言わないけれど……」
「いや……実は、それについては——むしろ、やるなら今すぐにやるべきなのよね……だから風莉、もうやってしまおうか」
「いいの……?」
「おうともよ。むしろ、風莉は? いつでもオッケーなの? 心の準備は——」
「もちろん! ——っンン……まぁ、私は、いつでも……大丈夫だよ」
「……そう、それなら……今すぐやるよ、いいね?」
「うん……お願い」
というわけで、私は風莉を新たにプレイヤーとして覚醒させるべく、そのためのアイテム——“プレイヤーチケット”を使用する。
必要なチケットについては、これまたすでにカノさんがしっかりと回収してくれていた。——“領域”内の某所にて、すでにお亡くなりになっていた……誰とも知らぬプレイヤーの亡骸から。
というか、その亡骸ごと回収した。
プレイヤーがプレイヤーに倒された時——あるいは、(他のプレイヤーに倒されたのではなく、何か別の要因で)すでに倒されたプレイヤー(の死体)を、プレイヤーが回収した時……手に入るアイテムが、この“プレイヤーチケット”なのだ。
——ちなみに……このプレイヤーがゾンビ化せずに死体のままで残されていたのは、この“領域”の特異性によるものだ。
いつぞやの鬼史川の分のチケットは、おそらくはシスが回収しているハズなので……私にとっては、これが初めて入手したプレイヤーチケットになる。
このプレイヤーチケットという特別なアイテムを使用すれば、能力者ではない人間を、能力者として覚醒させることができる。
ゆえに、今はまだ普通人である風莉も、このチケットを使えば……
「……っ! き、聞こえる……頭の中に声が……! こ、これが——力に目覚めるということ……?!」
プレイヤーとして覚醒する。
「さて、風莉——超常の力を、その身に宿せし——プレイヤーとなった、今の気分はどう……?」
「……」
「……ん? 風莉……?」
「…………私、お姉に借りを作った分は、ちゃんと今後の働きで返すから」
「お、おう……。や、別に——家族だし、姉妹なんだから、そんなに気にしなくていいんだけれど」
「いや——これは、私の矜持の問題だから。お姉になんと言われようと、受けた恩は返すのが、私の流儀なの」
「分かったよ……それじゃ、まあ、好きにしてちょうだい」
「うん、任せて……きっと後悔はさせないから」
そんなわけで、風莉も無事にプレイヤーとして覚醒させることができた。
なのでさっそく、私は彼女に大量のPPを渡して、一気にレベルを上げさせる。——具体的には、ジョブを獲得できるLv15にまで。
すると案の定、風莉は私の求めていたそのジョブ——『風使い』の素質を持っていたので……それも含めて、現時点で獲得可能なジョブはすべて獲得してもらう。
実のところ……現在わりとピンチなマナハスを助けるには、風莉の力が——具体的には、『風使い』の能力が——必要になってくるようなので……
風莉には最低限の準備ができ次第、初の実戦へと繰り出してもらいたいと思っているのだけれど……
「どうかな? 風莉。頼まれてくれる……?」
「ふぅん——さっそく借りを返すチャンスがきたってわけね。そりゃあ、もちろん……さっきの今で、断るわけないじゃん」
「いや、別に、無理強いはしないけど……」
「……そう。でも……お姉が私に頼んできたってことは、それだけ私の力が必要だってことなんでしょ?」
「まあ……ぶっちゃけ、風莉が一番の適任だし……というかそもそも、現状では——風莉以外には、必要な役割をこなせそうな人に、まるで心当たりがないカンジなんだけれども……」
「……だったら、訊くまでもないんじゃない?」
「いや、私は風莉の意思を尊重するよ。だから、風莉が嫌だというなら——」
「言わないよ。——まったく……お姉ってほんと、変なところで頑固だよね」
「それは——どうだろうね……アンタほどじゃないんじゃない?」
「はいはい……それじゃ、私は何をすればいいの?」
「……ありがとう、風莉。うん、それについては——今なら“これ”で説明できるから……いくよ?」
「——ん……?」
というわけで私は——いきなりだし、ちょっと強引だったけれど——風莉に“念話”にて事情を説明していった。
さらについでに、風莉にも“攻略本”の情報を共有しておいたので……これにて彼女も——芽生えたばかりの能力の、“詳細な”使い方も含めて——すべてを理解できたと思っていいだろう……。
——いやまあ、送られてきた情報を咀嚼して“馴染ませる”には、それなりの時間が必要になるんだけれども……
だとしても、言葉で説明するよりは圧倒的に早いし、情報量の密度も段違いなので——まあその分、なかなかの負荷がきたらしく……案の定、風莉には色々と文句を言われてしまったけれど——とはいえ時間も無いし……内心では風莉には申し訳ないと思いつつも、強引な手段に対する非難も甘んじて受け入れる所存で、私はこのやり方を断行させていただいた。
実際、ここからは時間との勝負になる。
すでにフィールドの攻略を成功させてしまった以上、すぐに次なる目標である——ダンジョン攻略にも取り掛からなければいけないので……
そのための準備を、いかに早く終わらせられるか……ダンジョンに実際に挑む前から、そういう勝負がすでに始まっているといえる。
まあ、いざダンジョン攻略に繰り出すことが出来れば、あとはそんなに時間を気にしなくても良くなるのだけれど……しかし、攻略の成否はまさに、この事前準備にかかっているので、手は抜けない。
ダンジョン攻略は確かに難関だ。挑む人間が私のように、色々と特殊能力を使えるプレイヤーなんだとしても——いや、そんなプレイヤーだからこそ、ある意味では、挑むこと自体に尻込みしてしまうことを避けられないほどに、圧倒的な危険度と難易度を誇るもの……それがダンジョンという存在なのだ。
とはいえ……仮に——ダンジョン攻略を成功させることができたのならば、その時には、ダンジョンを攻略するのに時間は一切かからない。攻略は、一瞬で終わる。
だからこそ……攻略できる自信があるのなら、モタモタせずにさっさと挑んでしまう方がいい。
そうすれば——場合によっては、クリア後に速攻で私自身もマナハスの方に向かったりだとか、そんなことも出来るかもしれないし。
そしてもちろん、“攻略本”を持っている私は、ダンジョン攻略を成功させる自信もちゃんとある。
まあでも……実際のところは、“攻略本”があったとしても、なかなかに厳しい戦いになるんだろうな、とは思うところだけれど。
まあ、そもそもが、ダンジョンに挑むにはまだ全然レベルが足りてないからね……今の私は。
最低でもLv25からって話だからさ、ダンジョンに挑む適正レベルって。
しかし——私の実の親や、学校の友達を含めた——たくさんの人たちが、すでにダンジョンの中に攫われてしまっている以上、悠長にレベル上げとかしている暇なんてないし……まだLv20の私だけれど、今すぐに挑むしかない。
とはいえそれも、アイツの能力があれば、わりとなんとかなるらしいんだけれど……。
てか、肝心のアイツ——のところに行っているはずの“私”は、一体なにをやってるんだ……?
おっかしいな——さっきから試してるのに——通信にも反応しないし。繋がらないわけじゃないから、何か不測の事態が起きてるってわけでもないはずだけれど……
というか——そもそも、なんかすでにマリィがパーティーに加わってるっていう、これは一体、どういうことなん……?
——つーかなんでアイツ、パーティー組んでるのにステータスとか確認できないんよ? まったく、どんな設定にしてんだか……。
ともかくアイツ——マリィも、今回のダンジョン攻略に必須級の(能力を持つ)人材らしいから、とっとと私のサーヴァントとして覚醒させて、レベルも15に上げなきゃなんだけれど……
いやでも、すでにパーティーを組んでるってことは、サーヴァントになってるってこと? ——いや、一体誰の?
んー……分からん。てかマリィに関しては、“攻略本”でもなんか隠されてるみたいだから……やっぱり分からん。
つーかマジで、なんで反応ないん? どういう状況なんだ……?
……ん、まあ、考えていても仕方ないか。
いいや、とりあえず迎えに行こう。モタモタしている暇なんてないんだし。
——せめて、向こう側の鏡くらいは、向こうの私に出してもらいたかったんだけれど……
仕方ない、鏡も私が出すしかないか……。
色々と諦めた私は、マリィの元にいるはずの“私”のそばに鏡を出現させると——その鏡と、この場にある鏡とをリンクさせて、そのスキルを発動させるのだった。
『“鏡渡り”』




