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第19話 物語は、リアルタイムで進行する(CV.小山力也)

 


 恐竜ムービーも終了したので、私はウィンドウを消すと、改めて二人に向き直った。


「まあ、分かっただろうけど、恐竜はこのままやられて死んだよ。さすがにここからの逆転は無かったよ」

「それはまあ、分かるけどさ」

「これで信じてくれた? 恐竜が死んだこと。そして私が倒したんだってこと」

「信じます。火神さんを信じます。火神さんはこの街を救ってくれた救世主です……。未来永劫、(たた)える像を建てるべきです」

「アンタが信じられないようなことをやったってことは信じるよ。あんな怪物を倒しちゃうなんてさ」


 ふう、信じてくれたならよかった。これで信じてもらえなかったら、恐竜の死体を出さなきゃいけないところだったよ。


 すると、真奈羽(まなは)がなんだか真剣な目をしてこちらを見てきた。

 なんだ? どうしてそんな目で私を見る……?


「でも分かってるの? これ、一歩間違えたら死んでたんだよ」

「それは……でも、放って置けなかったから」

「どうして……私があそこに居たから?」

「まあ……それはあるよ」


 むしろそれしかない。


「だからって、それでアンタが死んじゃったら、私は……」

「……」


 真奈羽……。

 心配させたのは分かる。でも、私にもどうしようもないんだもん。自分でも止められない。止められるわけない。


「真奈羽、心配してくれてるの……?」

「当たり前でしょ。そりゃ心配するよ」

「それは私の身の安全をだよね。……それとも頭の方も?」

「っ……! そうだよ両方だよっ! 自覚があるならマジで反省しろっ!」

「本当に、すまないと思う……」

「ホントに反省しろよなっ! そういうところだぞっ!」

「反省する! 二十四時間反省するから」

「マジでお前は一日中反省しとけ」


 私の反省はリアルタイムで進行する。だから許してマナハスお願いします。


 ——もうコイツを反省させるのは無理かも……。


「まあ、私もお礼を言わないとだね。ライカ……ありがとう。私を心配してくれて、あんなにおっかない相手と戦ったりしてさ。まったく……やっぱりアンタどうかしてるわ」

「ありがとう。褒め言葉として受け取っておく」

「褒めてはないっつーの」


 こういう時に名前を呼ぶの、ズルいと思う。まったく、その“ありがとう”だけで、私はすべてに満足してしまうのよ。

 本当によかった……真奈羽が無事で。


 当の真奈羽は、気を取り直したように真面目な顔になって、ボソッと呟いた。


「もうこれからは、こんな無茶しないでよね……」

「……誰かさんが元気なら、私も無茶したりしないよ」


 そうしてお互いに相手の顔を見ると、少し照れ臭くなり、すぐにお互い顔を(そむ)ける。

 逸らした視線の先にいた藤川さんが、私たちをなんだか羨ましそうに見つめていた。


「いいですねぇ……お二人の関係。私、羨ましいです。ここまで強い絆で結ばれた相手がいるなんて。私には、これほどの強い絆のある相手なんて居ませんから……」


 そういって、なんだか遠い目をしてどこぞを見つめている。

 いや、第三者に改めてそんなこと言われると照れるな……。

 でも藤川さんも、そんな気にしなくても、すでに神さま辺りと強い絆結んでるんじゃないの?


 ——宗教的なやつってことかしら……。


 正直、あるんじゃないかと思います。

 すると、マナハスが照れ隠しのように何やら言い出した。


「いやぁ、別にそんな羨ましがられるものでもないというか……。私とコイツは何というか、幼馴染みでさ、長い付き合いだから……」

「まあ確かに、家族を除いたら一番長い付き合いかな」

「へぇ、そうなんですね! 仲のいい幼馴染みなんて素敵ですね!」


 あんまりストレートにそんなこと言われると照れちゃうね。恥ずかしいから話題を変えよう。


「……あー、そういえばさ、真奈羽。アンタ以前の電話の別れ際の時、何か言いかけてたよね? あれ、結局何だったの? 再会後も、聞く暇ないままここまで来ちゃったけど」

「……あー、アレか。なんかそれももう今さらって感じするけどなー。恐竜やら何やら出てきた後だと、正直、インパクトも無いというか……」

「気になるから一応、話してよ。次会った時に話すって言ってたじゃん。マジで危うく死亡フラグになるとこだったし。そういう意味でも、不安だから聞いときたいんだけど」

「えっと、何の話なんでしょう……?」


 藤川さんは知らないよね。私が駅に着いてから、暇潰しに真奈羽と電話していた時の話。

 分からない藤川さんに、とりあえずを掻い摘んで説明する。


「へぇ……人身事故ですか。それも普段ならショッキングな話でしょうけど、アレだけのことがあった後だと、確かに……。でも、その腕がどうなったのか、私も気になります」

「ほら、藤川さんも知りたいって」

「分かった分かった、話すよ。……こんなことなら、あの時さっさと話しとけばよかったなー。あの時はこんな事になるなんて思ってなかったからなぁ」

「別にそんな期待してるわけじゃないから、サラッと話せばいいじゃん」

「はいはい……。えーと、だからあの時、散らばった腕を見たって言ったじゃん? んでその腕がさ、まあ……動いてたんだよね」

「え、腕が?」

「うん、まあそう見えたというか。でも、ちょっと動いたとかそんなんじゃなくて、明らかに指が閉じたり開いたりしてたんだよね。どう考えても見間違いだと思ったんだけどさー、アンタがその前にゾンビがどうとか言ってたから、いや、まさかなーって思って」

「腕だけだったんだよね? 胴体は無くて」

「うん。千切れた腕だけ。その指がまだウネウネ動いてたんだよ」

「……」


 それは……。


 ——ゾンビ?


 まあ、何かのホラーや見間違いというよりは……だって、実際そんな感じのヤツをすでに何人も見てきたからね。

 しかしあいつら、分離した一部だけでも動けるってことなの? 何それ……不死身なのか? もしかして、いくら攻撃しても倒せないタイプのゾンビってコト……?


「それってやっぱり、地下から出た時に見たアイツらの一種ってことじゃないの……?」

「やっぱり、そういうことなのかな」

「もう朝の時点で居たってこと……? いやまあ、私も電車の中で会ったけどさ。やっぱり、あのおっさんもそうだったんだよ」

「え、火神さんも何かあったんですか?」


 ということで、藤川さんにも朝の電車であった出来事を話す。


「——電車の中で、ですか。でも、大丈夫だったんですよね? なにせ火神さんは奇跡の御力(みちから)の持ち主ですからね」

「いや、その時はまだ力は発現してなかった」

「ええっ!? じゃあどうやって対処したんですか?」

「まあ、普通に自力で逃げたよ」

「そうですか……よかったです」

「相手も一体だけだったしね」


 まあ、割と追い詰められてたけど。今思えば、あそこでやられてたら恐竜と戦うこともなくゲームオーバーだったんだなー。


 ——助かったのはワタシのお陰だからね。


 役には立ってると思ってるよ、アンタのこと。


 すると、それまで何やら考えていたような真奈羽が、真剣な調子で話し始めた。


「恐竜の脅威が去ったのは確認出来たけど、“アイツら”の方はどう思う? 結局、アレが(なん)なのかもよく分からないけど」

「アレは、やっぱりゾンビなんじゃないの?」

「まあ、確かにそれっぽくはあるよね。でもゾンビって結局、創作の産物じゃん? そもそも、一口にゾンビっていっても色々な種類があるし、タイプによって結構違いがあるじゃん、ゾンビって」

「そうだよね。私もそんなに詳しいわけじゃないけど、ウィルスとかが原因で感染するタイプか、死体が復活して動き出すタイプか、大きく分けても二つがある気がする」

「今回のヤツは、どうなんだろ?」

「どちらかというと……復活タイプじゃない? 人身事故も、駅の奴らも、死んでから復活したってのが合ってる気がするけど」

「復活するタイプってことは、感染はしないってことなのかね?」

「さあ? でも大抵は、ゾンビに噛まれたら噛まれた方もゾンビになるのがお約束だよね。ウィルスなら、それは感染なんだろうけど、復活の場合は……なんだろう? 噛まれたことが原因で死んで、そこから復活するからゾンビになるって感じ……?」

「じゃあ、死ななければ大丈夫ってこと?」

「どーだろ。お約束は、あくまで映画とかの話だからね……」


 今の時点では何とも言えないか。情報が少なすぎる。

 結局、今のところ出来ることなんて、せいぜいヤツらに近づかないってくらいじゃないかな。


「とにかく、アイツらには近づかない方がいいでしょーね」

「それは同感」

「とすると、この家に居るのも危険なんでしょうか……?」

「どうかな……。でも逃げるにしても、私たちには行く当てがないんだけどね。電車で帰ろうにも、駅は壊滅しちゃったし……」

「改めて考えると、駅が壊滅ってヤバいよな」

「ゾンビ映画のお約束だと、こういう時はどうしてたかなー。でもゾンビ作品って、すでにパンデミック広がったところから始まるヤツ多いし、気がついたら、もうどこもかしこもゾンビだらけ、みたいな」

「つまり、結局どこに行っても同じってことか?」

「まあ、人口の少ない地方とかの方がいいのかもしれないけど、それも遅かれ早かれってところじゃない? でも、実際のところは分からないよ。今回の、おそらくゾンビ的なヤツらが、一体どういう特性を持ってるかで決まるところだと思う。案外、フツーに大きな騒ぎになることなく収まる可能性もあるし」

「つーか、アイツらが出たのってこの街だけなんかね? ——ちょっとスマホで確認……ってそーか、充電切れそうなんだった」

「充電しますか? コンセントはそこにありますよ」

「ありがと。……あ、この充電器ごと借りてもいい?」

「あ、はい、全然、どうぞ」


 そう言って、マナハスはスマホを充電し始める。

 私も自分のスマホを取り出して確認する。充電は少なくなってるけど、まだ使える。私も後でコンセント貸してもらうかな。


 SNSのアプリを起動して、最新の動向をチェックしてみる。

 するとそこには——


「え、マジで?」

「どした?」

「いや、いま例の青白い鳥のトレンド見てたんだけど……」

「アンタあのSNSのこと青白い鳥って呼んでんの?」


 そこには、他のキーワードに混じって、“怪獣”やら“アンデッド”やら“黙示録”とかいうのが載っていた。

 “怪獣”のトピックを確認してみると、どこかの街中で暴れてる、やたらでかい何かを遠くから撮影したらしい短い動画が再生される。

 そんな動画が、どうやら一箇所ではなく、日本の各地で撮影されているみたいだった。


「おいおい、嘘だろ! ここだけじゃなかったのかよ……。てかこれ、日本だけじゃ無いっぽくね?」


 確かに、中には海外のアカウントが上げている動画もあった。そして、海外の街で暴れている同様の怪獣……。


「えーっと、もしかして、世界中に怪獣とか現れてる感じ?」


 何それヤバくね? いやいや、え……ヤバくね?



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