表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
179/247

第176話 突入! ——の前に、まずは偵察!



 マナハスの魔法により作られた紙飛行機の導きに従い向かった先で、私たちがたどり着いたのは——大型のショッピングモールだった。


 ヘリで上空を一回りして藤川パパンがその付近にいると分かったので、私たちはさっそくモールへ突入——する前に、まずは先に内部の様子を偵察する。

 上空でホバリングさせているヘリから“隠密迷彩(ステルス)”機能を発動した偵察機(ドローン)を単身で投下させ、地上の様子を探らせていく。


 私はドローンを直接操作して、モールに向かわせる。

 ドローンの操作は意識するだけで可能だ。進めと思えば進むし、止まれと念じれば止まる。スピードや方向転換も思いのままだった。

 ドローンの視覚(カメラ)からの映像は、私の目の前に展開されたウィンドウに表示されている。——しかも、FPS(一人称視点)TPS(三人称視点)を切り替えることも可能だった。

 そんな感じなので、私はまるっきりゲーム感覚でドローンの操縦をすることができていた。


 空中を自在に浮遊・飛行させることができるドローンによる偵察は、なかなか効率的に付近の様子を探ることができた。

 まずは最初に、目標となる大型ショッピングモールについて調べられるだけ調べる。

 ドローンを建物内部に潜行させる前に、まずはドローンを介してマップの索敵により壁越しに内部の様子を探る。したら、あっさりと生存者の反応を見つけた。それも一人や二人ではなく、なかなかの数がいる。

 さらに、その付近の様子を探っていると……生存者の反応からそう遠くない位置に、複数の青い反応(アイコン)の存在を捉えた。


 青のアイコン——プレイヤーだ。

 数は……六つ。

 ——六人……サーヴァントを含めたとしても、少々多いな……

 一人のプレイヤーが作成できるサーヴァントの数は、レベル15の時点で最大四人……

 どうやらサーヴァントはレベルが5増えるごとに一枠増えるようだから、一人のプレイヤーからなる集団だとしたら、六人という数だと、少なくともレベルが20を超えているということになる……が、さすがにそれは考えにくい。

 だとすると、この集団は二人以上のプレイヤーが集まっているということになるが……。


 さらに気になるのは、その集団の付近に——生存者の白やプレイヤーの青、もしくは敵を表す赤とも違う——緑のアイコンが多数、含まれていることだった。

 緑のアイコンについては、知らないわけではない。私の知るところだと、今もヘリを操縦してくれているアンジーがまさにその色で表される対象だから。

 つまり、プレイヤーではないが、普通の敵や生存者とも違う、なんらかの存在があそこにいる……

 って、マジかよ……何者だ?


 しかし、壁越しにマップによる索敵で確認しているだけでは、それ以上のことは分からない。

 なので私は、どうにか窓のようなものから内部を視認できないかとドローンを移動させようとしたところで——大きな音を感知する。

 さすがに私がいる上空のヘリにまでは届いていないが、それは建物の外にいるドローンにも届くくらいの音量だった。——ちなみに、ドローンは音も普通に拾うことができる。

 これは、もしかして……戦闘音か?


 ドローンを移動させて、建物の窓から内部の様子を確認してみる——すると、プレイヤーの存在を視界に捉えることに成功した。

 姿を確認できたプレイヤーたちは、どうやらお互いに敵対しているらしく、完全に戦闘状態になっていた。

 私はドローンを介して、その戦いの様子をつぶさに観察していく——


 観察していく中で、その戦いがどうやら三つ巴らしいということが分かった。

 戦闘の様子からもそうだったけれど、【解析】を使ったことでプレイヤーが三人であるということが判明したのが、その裏付けとなった。

 残りの三人はサーヴァントで、この三人はみな一人のプレイヤーの傘下にある。

 つまりこの戦いは——プレイヤー+サーヴァント三人の四人組VSソロプレイヤーVSソロプレイヤーという構図らしかった。


 一番優勢なのはやはり、四人組のプレイヤーチームだ。

 このチームの構成員は全員男性で、年齢も全員が青年といえる歳だった。

 ——【解析】の能力が通ったので、全員の名前と年齢とLv(レベル)が判明した。

 一番レベルが高いのが鬼史川(きしかわ)という男で、Lv14。

 他の三人のサーヴァントは全員がLv5未満だ。


 彼らが使用している武器には、特筆するような部分はない。

 プレイヤーでありリーダー格の鬼史川の装備が、拳に装着する武器であるナックルとかメリケンサックとか呼ばれるもので——一見すると何も装備していないように見えたが——よく調べたら、それが武器のようだった。

 他の三人の武器は、バールのような何かと、日本刀のような刃物と、小銃(アサルトライフル)のような銃器という分かりやすいものだった。

 ——ちなみに、サーヴァントではない取り巻きの男たちも、それぞれ銃器の(たぐ)いを所持しているのが確認できた。


 コイツらは分かりやすいのだが、それに対する二人のプレイヤーの武器については、それぞれかなり特殊だった。


 まずは黒ずくめの中学生、黒澤(くろさわ)くんの使う武器は、黒い紋章のような何かだった。

 これはどうやら、私が『炎使い』や『雷使い』のジョブで入手した属性を操る紋章(エムブレム)と同等の存在のようだ。

 事実、彼は黒い不定形の物質——おそらくは“影”——を操って戦っている。

 それに、彼の特徴的な格好である黒ずくめの装束についても、どうもその影を操る能力によって作られたものらしい。

 ——ふむ……ということは、ジョブを得る前からあの紋章は武器として選ぶことが出来たってワケか……?

 本人のレベル的には13と、この中では二番目に高く、使う武器の得体の知れなさもあって今のところは善戦している——といえば聞こえはいいが、見たところ彼は完全に銃にビビっていた。

 いや、銃だけでなく、戦いそのものに対して完全にビビっているみたいだ。


 いやまあ、気持ちは分かる。

 いくらプレイヤーになったとはいえ、現実的に考えたら銃って最強武器だし、まるで(かわ)せる速度じゃねーし、やっぱ普通に(つえ)ぇーんよ、銃って。

 今でこそ、彼もなんとか慣れてきたのか影を操って防御できているけれど、最初らへんとかモロに撃たれててHP削られてたからね。

 ——ちなみに、【解析】を使えば他プレイヤーのステータスの三色のゲージを確認することができる。どうやらここにいるメンツは、誰も【秘匿】のスキルを持っていないようだったので、いくらでも調べ放題だった。

 とはいえそれは、逆に言ってしまえば、プレイヤーなら銃で撃たれてもHPが減るだけで済むということだった。そもそも、スタミナによる武装強化無しの銃撃だとカスダメみたいだし、その点はやはりプレイヤーの強さを感じる。

 まあそれは、彼の防具のLv(レベル)の高さも関係しているのかもしれないけれどね。この中では一番防具のLv(レベル)が高いのが彼だし。

 そこに、影によるわりと万能な防御も合わされば、近接攻撃はもちろん銃撃にだって対処できる。


 しかし、いかんせん……彼は腰が引けていた。見るからに他者と戦う気構えが出来ていなかった。

 あくまでも防戦一辺倒で、彼の方から攻撃することはほとんどない。なんでこの戦いに参加しているのか謎なくらいだ。

 ——最初はその黒ずくめの姿から、私は先日に遭遇したあの“黒仮面”を思い出して真っ先に警戒していたんだけど……蓋を開けてみたら、てんで大したことない感じで拍子抜けした。

 彼に比べたら、最後の一人の彼女の方がよっぽど見所があると言えるだろう。


 最後のプレイヤーは、この中でも最年少である——マユリちゃんと同世代の——小学生の女の子の相生(あいおい)瑠奈(るな)ちゃん。

 しかし、この彼女は——マユリちゃん同様に——小学生と(あなど)ることなどできないくらいに堂々とした戦いぶりを見せている。

 彼女の使う武器は——これまたマユリちゃん同様に——かなり変わった武器だった。

 彼女の戦い方を一言で表せば、それは……トレーナーだ。——ポケなモンスのトレーナーだ。

 いや、どうだろうな、ぶっちゃけどことなくパチモンっぽいし、案外パルの方かもしれないけれど……


 ——そういう問題じゃないでしょ……。


 そうだね、問題なのは何が元ネタかじゃなくて、その能力の実態だ。

 とはいえそれも、ほぼほぼ元ネタ通りの能力のようだった。

 つまり彼女は——おそらく、その“ボールのような何か”で捕まえたモンスターに命令を聞かせて戦わせることができるということなのだろう。

 彼女の手持ちのポケモ——じゃなくて、モンスターたちの内訳としては、ゾンビがほとんどだった。そこにちょっとだけ怪鼠(かいそ)などのゾンビ以外も混じっているという感じ。

 それに加えて、動物の配下もいくらか存在しているようだった。——へぇ、動物もいけるんだ。


 なかなか興味深い能力だ。

 捕まえられる対象の制限はあるのか、捕まえた対象にはどこまで命令を聞かせられるのか、などなど……知りたいことは尽きない。

 ざっと見たところでは、捕まえられる数にはあまり制限が無さそうだった。というのも、彼女は次々とボールからゾンビをこの場に呼び出しており、今やかなりの数の緑の点がこの場に出現しているので。

 そう、彼女の手持ちのモンスターはマップでは緑のアイコンで表されるのだ。——謎の緑は、彼女の配下のことだった。


 戦いにおいては数の有利は絶対である。ソロプレイヤーながら複数のモンスターを使役できる彼女こそ、この戦場で一番の勢力を誇っていると言えるだろう。

 しかし、なにぶん……数は数でも、その大半はザコ代表のゾンビである。

 一応、彼女の手持ちのゾンビは、普通のゾンビに比べたらいくらか強化されているような気も——しないでもないのだが、いかんせん、気のせいと言われれば気のせいかもしれないと思うくらいの強化では、プレイヤーの集団にとっては脅威とはなり得ないようだった。


 レベルが低いとはいえ、プレイヤーはプレイヤーというだけで一定以上の脅威度を持つ。

 そういう意味ではやはり、この場で一番の勢力は鬼史川率いる四人チームだった。

 四人が連携すれば、統率されたゾンビの小集団くらいはものの数ではない。四つの青い点により、無数の緑の点は次々に撃破されていった。


 形勢を不利と見たルナちゃんは、すでに撤退の構えになっていた。ゾンビらを足止めにその場に残して、迅速にその場から脱出する。

 それに合わせて、黒ずくめの彼も、いつの間にやらその場から姿を消していた。

 ——いやまあ、マップ上ではしっかりと捕捉しているので、スタコラサッサと逃げている彼の行方もバッチリ把握できているのだけれど。

 どうやら彼も、ルナちゃんが逃走した方へ向かっているようだ。


 この二人は——見ていた限りにおいては——お互いに対して攻撃することは無かったし、途中からは完全に鬼史川チームのみを敵と認識しているようだった。

 まあ、だからといってあからさまに共闘していたという感じでも無かったのだけれど……どうだろう、お互いのことはどう認識しているのだろうか。


 とはいえ、二人のプレイヤーが逃走したことで、その場の戦闘は収束した。

 結果的には、鬼史川チームが勝利したといっていい状況だ。


 さて……それでは、状況を把握したところで——改めて、私たちはこれからどうするか、ということなのだけれど。

 まず第一に、私たちの目的は藤川パパンの救出である。そして、肝心の藤川パパンについてなのだが……いまだにその正確な所在を特定できていない。

 戦いの様子を観察しつつも、そのどさくさに紛れて私はすでに生存者の方も確認した。しかし、藤川さんに全員の顔を確認してもらったのだが、パパンはモールの生存者の中にはいなかった。

 ここにいないとなると、しかし、他にどこにいるというのか……

 マナハスの魔法によれば、この付近にいることは間違いないはずなのだけれど……。


 ともかく、これ以上はドローンだけではどうにもならないようなので、私たち自身で乗り込むことにした。

 ショッピングモールから少し離れた場所にヘリを着陸&『回収』し、すぐにモールへと向かう。

 私たちは全員“隠密迷彩(ステルス)状態(モード)で、ウサミンを先頭にして、周囲を警戒しつつ進む。


 最優先目標はパパンの身柄なので、マナハスの魔法の紙飛行機が指し示す場所を目指す。

 まずはパパンを確保する。他のことについてはそれからだ。


 そうして、紙飛行機に導かれるままに進んでいった私たちの視界に現れたのは——モールから飛び出してきたルナちゃんの姿だった。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ