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第144話 いや癖が強い……(あと話が長い……)



「“星兵召喚(サモンスター)——可憐な魔法少女プリティマジックガールシャイニー”」


 マユリちゃんの(つぶや)きに合わせて、彼女の目の前が発光する。

 光は、ちょうど人が一人(ひとり)入るくらいの大きさまで膨張すると、そこで(はじ)けるように収まった。

 光の収まった先——その場所には、私と同じくらいの年頃の、一人の女の子がいた。


 その女の子は、一目見てそれと分かるような、派手な見た目をしていた。


 キラキラと陽の光に反射して輝く髪は、ただの金髪(ブロンド)というよりは、白金髪(プラチナブロンド)とでも呼ぶべきほどに(まぶ)しく輝いており——

 軽く(うつむ)いていた顔を上げるのと同時に開かれた目は、これまた強烈な輝きを放つ、まさに白銀色(プラチナシルバー)の瞳で——

 それらのある種、非現実的な色合いが目立つ頭部は、しかしそれらのカラーリングが馴染んでしまうくらいに、これまた非現実的なまでに整った顔の造りをしていて——

 その強烈な顔に負けないくらいに派手で真っ白な服装は、全体的にはシックかつゴシックな(よそお)いとして統一されたデザインながら、要所要所に凝った意匠が(ほどこ)されており——

 なにより、それらを統合したその全体像は、“魔法少女”という存在としてもはや完成された風格をたたえていた。


 そんなキラキラの魔法少女の彼女は、私たちのことをぐるりと見渡すと、(おもむろ)に口を開いて——


「……こんな格好をしている私が言うのもなんですが、一体どういう集団なのか、まったくもって不明な人たちですね、あなた方は。——軍服の麗人に、巫女服の大和撫子。(きら)びやかな修道女(シスター)風の装束の巨乳美少女に、軍隊風の装いなのに、どことなくそれがミスマッチな女子高生。それから……こちらも銃を持った軍隊風の成人男性。そして……私を呼び出したのは——小学生の女の子? ……ふむ、いや、さっぱり分かりませんね。申し訳ありませんが、まるで状況が飲み込めないのですが」


 まず真っ先に、目の前の集団の意味不明さに、苦言を(てい)したのだった。


 。

 。

 。


「——なるほど。ここはそういう世界で、あなた方はそういう集団なんですね。理解しました」


 私たちは、とりあえず呼び出した彼女——シャイニーと自己紹介やらの情報交換をして、お互いのことをある程度は理解したのだった。


「——そうですね。そして、そちらは……召喚によってこの世界に来たけれど、元々は別の世界で普通に暮らしている人間であり——つまりは、我々からすると、ええっと、異世界人とでもいうべき感じの存在であると、そういう……ことですか?」

「そうですね。(おおむ)ね、そのような理解でいいと思います。——まあ、重要な点は、私が何かしらの創作物のキャラクターのような非実在的存在ではなく、住む世界が違うだけで、あなた方と同じく実在的存在であると、そう理解してくれたのであれば、それで十分です」

「は、はあ……そうですか」


 彼女の話によれば、どうにもそういうことらしい。

 私はてっきり、彼女は『サモンスタードライブ』とかいう、私たちからすれば創作物のゲームから出てきたのかと思ったのだけれど、しかし、それは違うということらしい。

 サラッと聞いた限りでは、正直よく分からなかったんだけれども……そもそも、元々の彼女が生まれた世界は、『サモドラ』の世界とも別の世界だとかいう話だったし……

 というか、『サモドラ』の世界とかいうのも、彼女のホームの世界とはまた別に存在しているとか、なんとか……

 や、正直、マジで全然なに言ってんのか分かんなかった……。


 しかし彼女の方は、私たちの事情を聞いたら、特に戸惑うこともなく納得している様子だった。

 なんでも彼女、こうして別の世界に呼び出される経験が、これが()()()()()()()らしく……

 つまりはなんというか……もう慣れてる、って感じだった。


「まあ、細かい話などについては、おいおいしていくのでもいいでしょう。今はとにかく、先にやるべき事を済ませてしまいませんか?」そこで彼女は一旦、周囲を見渡して、その視界に()()を収めた。「私を呼び出したのは、あの、ゾンビ——あるいは、怪獣? もしくは、他のプレイヤー? ——でしたか。そのような敵対存在に対抗する戦力となることを期待してのことでしょう?」

「あ、はい、そうです」

「であれば、最初に私の実力をお見せしますよ。——ええ、まずは戦力となることを示さなければ。使えない駒など、どうせ後から送還することになるのでしょうから……そうだとすれば、今ここであれこれと話をしたとしても、そんなものは、ただの時間の無駄でしかありませんので」

「まあ、確かに、そうですね……」

「とはいえ、私は自分が戦力外通告を受けるとは、まったく思っていませんけれどね。——まあ、それについては、口先ではなく実際の実力でもって証明することとします」そう言って彼女は、再びゾンビに視線を向ける。「それでは、まずはあの“ゾンビ”とかいうのを倒してみせるということで……よろしいですか?」

「あ、はい……よろしくお願いします」

「——では、そうですね、なにか、戦闘方法などに関して細かい指定などあるのでしたら、その通りのやり方でさせてもらいますけれど……何かありますか?」


 そう言われて、私はマユリちゃんを見ると——彼女も私の方を見てきていた。


「なにか、あるかな……?」

「そう、ですね……」


 マユリちゃんと少しばかり相談……して、出た結論は——


「ええっと、それじゃあ、こういうのはどうでしょう。——その、言い方はアレですが、まあ、相手は数ばかりの雑魚ゾンビなので……“なるべく消耗の少ないやり方で倒す”——というのは、どうですか……?」

「なるほど……いかに消耗を抑えて効率よく的確に大勢の相手を倒せるか、ということですか。——いいですね、面白い。そのくらいの目標があった方が、やり甲斐があります」


 そう自信あり気な返事をすると、(おもむろ)に彼女は宙に向け、無造作に手を振りかざした。——すると、なにやら円盤状の物体が、どこからともなく出現する。

 しかもその円盤は、まるでそれが当たり前であるかのように、自然な様子で空中に浮かんでいるのだった。


「それでは今から、ここら一帯のゾンビを始末するとします。——危険ですので、皆さんはその場より動かないでください」


 そう言うと彼女は、ひらりとその場から飛び上がり、呼び出した円盤の上に乗る。

 そしてそのまま、円盤と共に上方へと昇っていった。


 そうして、いまやそれなりの高さの空中に円盤と共に浮かんでいる彼女は、その場で周囲をグルリと見渡すと、またもや手を振りかざす。

 すると今度は、彼女の周囲に無数の円盤が出現し、一帯を取り囲むように展開する。


 私は彼女が何をするのかと、他のみんなと同様に、固唾を飲んで上を見上げていた。

 ただ、私たちの真上付近にいる彼女は、普通に見上げると首が疲れるし、太陽が眩しい……

 ——ならばここは、コイツの出番か。


 それっ、『視点操作』——!


 私は視点(カメラ)を持ち上げていき、彼女の近くに向かわせる。

 そして、ちょうど彼女のすぐそばに到達したところで——彼女の(つぶや)きが聞こえた。


「“陽光収束(ソーラーバンドル)——反鏡連鎖(マルチリフレクト)——穿光熱線レイライト・ブラスター”」


 すると、彼女の周囲に浮かんでいた複数の円盤の間に、無数の光線が発生した。

 その光線たちは、それぞれの円盤に反射して、辺り一帯に散乱していった。

 ——いや、違う! それぞれの光線の着弾地点は、ゾンビの頭部にピンポイントで重なっている……!


 やたらめったらと飛び交っているように見える光線は、よくよく確認してみると——とあるゾンビの頭部を撃ち抜いたと思ったら、すぐに今度は別のゾンビに向かって進路を変化させており……

 そんな感じで、次々と眼下のゾンビを的確かつ迅速に(ほふ)っているのであった。


 光線が乱れ飛ぶ幻想的かつ破滅的な光景を背後に、彼女——シャイニーは、自信に満ちた声で語りだした。


「……ふっ、どうです、この精密かつ絶妙な連鎖攻撃の舵取りは。こう見えて、いかにも派手に攻撃しているようで、実のところ、私の武器である“鏡面円盾(ミラーシールド)”の操作くらいしか、今は力を使っていません。——それに、光線自体は太陽光からエネルギーを得ているので、これまたほとんど消耗はありません。

 まあ、そもそも私は、陽光を浴びていれば魔力が——いえ、今はAP(アクションポイント)でしたか——ええ、それが自動的に回復していきますので、元より魔力の燃費はかなり良い方なんですけどね。

 それにしても、ここまでの効率を叩き出すためには、その辺りの能力面だけではなく、私自身の技術・力量があってこその話というわけです。

 ええ、そうですよ。私だからここまでのことができるのであって……他の魔法少女などでは不可能なのです。——それこそ、フラム辺りが同じことをしようとしても、絶対に無理ですね。

 ……まあ、あの子は爆発させることしか頭にないようなアホ——、失礼。……少し頭の弱い子ですけど。ですが、アクアやシルフ辺りでも、ここまでの芸当はできないでしょう。

 まあ、似たようなことは可能かもしれませんが、こう喋りながらでも余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)——とはいきませんよ、ええ。

 ——っと、少し喋りすぎてしまいましたか。

 ですが……ええ、ちょうど地上の掃討も終わったようですね。

 どうでしたか? 私の戦闘を、特等席でご覧になって。——ふふ……驚きました? 最初から気づいていましたよ。——それ、面白い能力ですね。それに、なかなか便利そうじゃあないですか。

 まあ、私も自分の能力を使えば、似たようなことは可能なのですけれどね。——いえ、私は光を操れるので、可視光をこう、上手いこと操作すれば……ええ、実現可能です。

 私、実のところ、かなり器用な(たち)なので……大抵のことは、やろうと思えば出来てしまうんですよね。それこそ——ああ、たまに自分の才能が恐ろしくなってしまうくらいに……ふふっ。

 ですので、私であれば、——この、輝く才能に(あふ)れた“光輝なる魔法少女”と(うた)われた、この、私であれば——あなた方の求める戦力として必ずお役に立てることと、私自身が、自信を持って、お約束いたします。

 ですから……私を一番の戦力として重用してくださると、ええ、とっても嬉しいのですけれどね。

 ——ええ、ええ、せっかくこうして、初めて見る異世界に、偶然にも召喚されたのだから……こんなに希少な機会を、まさか、(のが)すわけにはいきませんよね……うふふっ」


 …………コイツ、実力はあるみたいだけど、さては中身が相当アレな系のヤツだな……??

  

 

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