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第140話 そこまで言われると……気になりますやん



 それぞれが家族や親しい人と連絡を取るのに、ひと段落ついてから。

 私は会長さんに呼ばれて、彼女と話し合いをしていた。


 その話し合いの内容は、明日の予定について、である。

 というのも、スマホがオンラインになって連絡が取れたことで、家族の安否が分かった人がたくさんいたわけで——

 そんな人たちから、自分の家族を助けてくれという感じの要請が、会長さんの元にバンバン入ってきたわけである。

 しかし現状、外に救助に出られる人材など、私たち以外にいない。

 なので、その辺を話し合うために、今現在の私たちは自分たちだけで、体育館の二階にある部屋に集まって机を囲んでいた。


 この場にいるメンバーは、会長さんとかを除けば、全員がプレイヤーかサーヴァントだ。

 私、マナハス、藤川さん、越前(えちぜん)さん(と、マユリちゃん)。

 それから、幽ヶ屋(かすがや)さん、南雲(なぐも)さん、リコちゃん、そして、会長さんだ。

 このメンバーで、明日の予定——具体的には、救助要請に対してどう対応するのか——についてを、これから話し合うことになっている。


 まあ、そうは言っても、私の結論としては、もう決まっているんだけど。

 救助はする。——ただし、救助対象は、まずは私たちの身内を優先する。

 最優先するのは、幽ヶ屋さんの家族。それと、藤川さんの家族——藤川パパン。

 それに続いて、会長さんや、南雲さん、リコちゃんの家族を順次、救助する。

 つまり、もっとも重要な人物の身内から優先する、ということだ。


 もちろん、一番に優先するべきは、自分とマナハスの身内だというのは当然だ。

 だけど、さっき連絡を取った限りでは、私の身内はまだ大丈夫そうだった。

 マナハスの方も、自分の家族に連絡したところ、今のところはまだ被害はないみたいとのこと。

 で、あるならば、現段階で優先するべきは、このメンバーたちの身内、ということになるだろう。


 なので、明日はおそらく、ここにいるメンバーの身内を救助することになるわけだけど。

 ——私の目算としては、それでまるまる一日が終わってしまうんじゃないかなーと思ってる。


 とまあ、そんな感じの自分の意見を、私は会長さんに話していった。

 会長さんも、大筋では私の意見に同意のようで、特に反論することなく私の意見を受け入れていた。

 とはいえ、会長さんは、その他大勢の人たちからの救助要請も気にしているようだったし、そこまで私が手を貸してくれるのかを心配しているようだった。

 ——まあ、その要請が向かう対象は現状では彼女以外に他にはいないので、矛先が向く身としては、気にするのは当然だろうけど。


 まあ、彼女のその心配は正しい。

 実際、私は、藤川さんや会長さんや幽ヶ屋さん達の身内ならともかく、その他大勢の人たちのことまで面倒みてられないよ、って思うし。

 そもそも、この場にいるメンツの身内を助けたなら、次に私が向かうのは当然、自分の家族や友達のいる地元だ。

 なので私は、明日の救出作戦が上手くいったならば、その翌日にでも地元へ向かうつもりである。

 すると当然、ここの人たちの要請に(こた)えることはできなくなる。


 ただまあ、私は無理だけど、幽ヶ屋さんとか、こちらに残るメンバーがやる分には好きにすればいいと思う。

 その辺がどういう風になるかは、実際に明日が終わってみないと分からないだろう。

 なので、その辺りの話をするのは後にして、まずは明日のことから優先しようということで話は決まった。


 ともかく、そうと決まれば、次に話し合うべきは、実際に明日、救助に向かうメンバーの選出だ。

 当然、ここの防衛にも戦力を()く必要があるし——おそらく、救出班に関しても、二つに分ける必要があると思う。

 具体的には、幽ヶ屋さんたちの身内を救出しに行くメンバーと、藤川パパンを救出しにいくメンバーの二つに。


 前提として、現状で集まった情報を精査した結果、救出対象の状況は以下のようになっている。


 

 ・藤川パパン

 仕事場の付近で避難しており、この街からはだいぶ遠い場所にいる——らしい。

 連絡が取れたのは最新でも昨日の時点で、以降は連絡が取れていない。

 だが、災害時伝言板的なアレに残っていたメッセージをついさっき新たに受信することができたので、その結果、今日の時点でも無事で、どこにいるのかの情報も得られた。


 ・幽ヶ屋ファミリー+会長ファミリー

 実家の神社にいる。

 ついさっきに連絡を取ることが出来て、お互いの無事を確認しあった。

 幽ヶ屋さんの家族はもちろんだが、会長さんの家族もこの神社に避難しており、無事でいることが確認できている。

 というか、この神社は現在、避難所のような扱いになっているらしくて、近隣の人たちが結構な数、避難して来ているという話だった。(つまりは、会長さんの家も近くにあるということらしい)


 ・南雲さんファミリー

 連絡が繋がっていない。

 ……のだが、彼女の実家は道場で、家の敷地のつくり自体も色々と堅牢な上、家族は全員、南雲さん並みの実力があるという話なので……

 まあ、無事でいらっしゃるものと思われる。

 連絡が繋がらなかったのは——おそらく、ネットが繋がらない離れの方に移っているからではないか、との話。

 ——なんか、そこの方が防衛陣地的に優れているらしいので。


 ・リコちゃんファミリー

 連絡は取れて、無事も確認できた。

 場所としては普通に、自宅に立てこもっているらしい。

 補足情報として——実はリコちゃん家って結構なお金持ちらしく、リコちゃんって、ああ見えてお嬢様なんだと。

 なのでまあ、彼女の家自体もなかなかの豪邸で、その分セキュリティもしっかりしているので、その点は安心できるって話だった。



 と、これが、判明している情報のまとめだ。


 これらの情報を踏まえて、私は明日の救助隊のメンバーを考えていく……。



 それから、この場のメンバーで色々と話し合って——


 結果として、やはり二つの班に分かれることになった。

 一つが、幽ヶ屋さんのパーティーの三人の班。こちらは主に、自分たちの家族を救出しに行ってもらう。

 もう一つが、私とマナハスと藤川さんの班。こちらは、藤川パパンを救出しに行く。

 ——残りの越前さんについては、体育館の防衛のためにここに残ってもらう。


 二つに分かれるとはいえ、最初の方は一緒に行動することになった。

 というのも、救助に当たっての具体的なやり方を吟味した結果、やはり移動は車になるだろうという話になったわけだけど。

 車で移動するとなれば、問題が色々あるというのは、私もすでに経験しているので分かっている。


 立ち塞がるゾンビは、まあどうにか出来なくはないだろうが、一番の問題は放置車両が進行の邪魔になることだ。

 こちらもプレイヤーの能力があればなんとか出来なくはないが、やはり車を退かすにあたっては、一番安全かつ素早い対処ができる人に任せたいところ。

 そう、その人物とは誰であろう、我らが聖女マナハス様である。


 とりあえず、学校から神社まで、あるいは道場まで、あるいはリコちゃんの家まで——その行きの時に放置車両を片しておけば、帰りはその道を通って学校までいける。

 なので行きについては、みんなで一緒にその三ヶ所を回ることになった。

 そこまで同行した後は、帰りについては三人に任せて、私たちの方はそこから藤川パパンの元まで向かう、という手筈(てはず)だ。


 そこまで決めたところで、新たに検討するべき事案が浮かび上がった。

 それは、明日の行きの移動手段、その車の運転を誰がするのか、というアレだ。

 今回の救助隊のメンバーは、全員が高校生である。つまり、車の運転をできる人が誰もいない。

 なのでドライバーだけは、誰か大人を選出する必要があった。


 正直、いったい誰に頼もうか……と思うところだけど。

 私としても、アテなんて……いやまあ、二人ほど、ありはするけれど。

 ——まああれだ、その二人の車については、すでに学校まで持ち運んでいたりするのだけどね。


 そう、香月(かつき)さんと、藤川ママン。

 香月さんなら、マナハスが一言頼めば、二つ返事で受けてくれるんじゃないかと……ええ、思います。

 ママンについても、まあ、パパンを救助する手伝いと考えれば、協力してくれるんじゃないかと思う。

 まあでも、ママンに関しては……最後まで付き合わせるのも危ないから、途中まででもいいかな……?

 まあ、車の運転については、実のところ、この二人の他にもアテがないというわけでもないし。


 とりあえずこの二人には、後で協力してくれるか尋ねてみることになった。

 もしも二人に断られたなら……その時はその時でまた考えるとしよう。



 さて、話し合いも大詰めの段階まできていたが……最後にもう一つだけ、決めなくてはいけないことが残っていた。

 それは、体育館の防衛に関しての話で——現状では、ここに残るのが越前さん一人ということになっている。

 この体育館は「守護君(まもるくん)」も設置していて安全性は高い。とはいえ、やはり残るのが一人だけでは心配になる。

 最低でも後一人は、戦力となる人材を残していきたい。


 しかし、現状で戦力となりうる人物は、この場にいる七人しか存在しない。

 そして、外に出る三人二組に関しても、危険な外での活動を考えたら、三人組が最低ラインと考える。

 とすると、どうしても最低もう一人は戦力を増やす必要が出てくるわけだ。


 できるできないで言えば、できる。

 要は、サーヴァントをもう一人増やせばいいわけで、それは可能だ。

 幽ヶ屋さんは、ポイントを消費してサーヴァントの枠を増やせば、現在のレベル(レベル10)でもあと一人、サーヴァントと契約できる。

 そして私も、レベルが15になったことでサーヴァントの枠が一つ増えたので、ポイントを使えばもう一人増やせるようになっている。


 ……ただ、私の新しい枠は、すでに使いたい相手がいるので、できればまだ使いたくない。

 なので、ここは幽ヶ屋さんに新しいサーヴァントと契約して欲しいと思う。——ポイントは私が出すので……。


 そう私が提案したところ——幽ヶ屋さんは普通にオッケーしてくれた。……ふう、よかった。

 ただ問題は、新たなサーヴァントの契約をいったい誰とやるのか、ということだ。

 正直、こちらに関しては、私にもまるでアテがない。

 まあ、このニューメンバーの人に関しては、基本は体育館で待機しておくだけだから、そこまでガッツリ適任者を選ぶ必要もないかもしれないけど……

 でもせっかくなら、ちゃんと覚悟があって適性もあるような人を選びたいところではある。


 新たなサーヴァントを誰にするかということで、私たちは話し合った。

 と言っても、私はこの学校の人物に関してはほとんど知らないので、意見を出すのは主に会長さんなど、この学校の生徒の人だったけれど。

 話の中で一応、何人かの候補の名前は挙げられていた。

 しかし、有力候補の中には、そもそも今現在この学校にいない人物などが含まれていたりして、やはりこれという人はなかなかいないようだった。

 ——なんか、一番の有力候補として名前が挙がっている人がいたんだけど……その人はこの学校の生徒だけど、どうも今はこの学校には居ないらしい。


 会長さんや南雲さんも——その人なら……と言っていたし、この二人にそうまで言わしめるなら、よっぽどの人なんだろうけど……居ないならしょうがない。

 そこまで言われると、私もちょっと会ってみたかったんだけどね。——その、「五十嵐(いがらし)風紀委員長」って人。

 ふむ、風紀委員長か……会長や南雲さんも認める人物なら、よっぽどの人なんだろうなぁ。


 結局、その人以外にはこれという人物が挙げられることもなく、いよいよ会議は難航するかと思われたのだが……

 しかしその時——意外なところから、候補者が現れたのだった。


 

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