第137話 KATANA KAIZOU
それでは、改造した刀の機能に関して、ざっと確認していくとしよう。
スキルと同様に、武器である刀の強化も重要な要素だ。なので、すでに私は、現状で出来る限りの改造を刀に施している。
攻撃力などの基本的な性能はもちろんだけど、今回はその他の新機能についても色々と改造している。
順に確認していこう。
まずは【形状変化】——これにより、刀の形状を自由に変更できるようになる。
これについては、衣装を変える際にデザインをいじるために、すでに搭載してはいた。
ただこの機能は、別にデザインに限った話ではなく、もっと広い範囲で形状をいじることができた。
それこそ、“刀”という範囲内であれば、その形をまさに自在に変えることができるみたいだった。
なので私は、新たな刀の形態として、「重刀モード」と名付けた形状を追加した。
この「重刀モード」は、通常のサイズの刀を、一回り大きくしたような形状をしている。
実在の武器に当てはめるならば、野太刀とかその辺のヤツになるだろうか? 要は、刃の長さも太さも、普通の刀より一回り大きくなっている刀って感じ。
これの作成目的としては、とりあえず、対モンスター用として考えている。
ゾンビならともかく、恐竜くんやトラ相手だと、普通の刀ではちょっと心許ないのよね。なので、最低でもこれくらいはあったほうがいい、ってサイズに変更したわけだ。
ただ、どっちかというとこれは、対モンスター用の中でも小型のモンスター用って感じかもしれない。
トラとか恐竜くんのサイズを相手にするなら、それこそモンハンに出てくるレベルのサイズ感の武器が必要になると思うので……。
なので一応、大型モンスター用のモードについても、すでに色々と考えてはいる。
まあ、それに関しては、実際にそいつらと戦ってみないとなんとも言えないところだし……とりあえず、今のところは軽く試してみるだけで、正式採用とするかは実戦で使ってみてからと思ってる。
というわけで、今のところは、刀に正式登録しているのは、この「重刀モード」だけだ。
ちなみに、刀のモード変更に関しては、装備を呼び出す時と同じ感じで、光と共に変化させる的なアレによって、わりとすぐに変えることができる。
——ただ、そうやってすぐに変えるためには、その形態を登録しておく必要がある、という感じ。
では次の機能——【同物複製】
これはそのまま、同じ性能の刀をもう一振り使えるようになる、というやつ。
まあ要は、ショップで新たに刀を買って一から強化しなくても、この機能があれば、もう一振り刀を使えるようになるってこと。
そのもう一振りの性能は最初の一振りと同等で、さらに、基本の刀の方を強化したら、追加の刀にもその効果がちゃんと適応されるらしい。
ただ、この機能の重要な点は、ただ単に二刀流が可能になるというだけではない。
先にも触れたが、改造の項目の中には、一つの刀に一つしか搭載できないものがあると言った。
そう、一つの刀に一つ。
逆に言えば、刀が増えればその分、別の改造を施せるようになるわけなのである。
まあ、改造に必要なポイントも、その分ちゃんと必要なんだけどね。
というわけで、私は複製した新たな一振りの方には、最初の刀とは別の機能を搭載している。
今回、一気に色々な機能を追加したんだけど……刀自体の数が増えたことも考えると、マジでけっこーややこしいんだよねー。
……ちょっと面倒になってきたので、ここからは刀に搭載した能力を、搭載した順に箇条書きで確認してみるとする。
・【非殺傷化】
・【撥汚加工】
・【形状変化】——「重刀モード」
・【自動修復】
・【遠隔回収】
・【同物複製】
・【赤熱刀身】
・【攻撃充填】
・【振動刀身】
・【動力追加】
とまあ、こんな感じ。
——ちなみに、それぞれの名称に関しては、カノさんと相談しつつ決めていった。
この内、エフェクトとブレードの二つが、それぞれ競合するタイプの改造なので、二つの刀にそれぞれ搭載している。
——組み合わせとしては、スタンとヒート、チャージとHF、という感じ。
それら以外の機能は、両方の刀に搭載されている。
上から機能の詳細を見ていこう。
まずは【非殺傷化】
これに関しては、今までにも使ってきたスタンモードのことなので、いまさら確認の必要はないか。
では次、【撥汚加工】
これは刀に汚れが付かなくなる機能のことだ。——とりあえず、そんな風に呼ぶことにした。
これに関しても、特に説明の必要はないね。
その次の【形状変化】も、すでに触れたからいいか。
では次、【自動修復】
これは文字通り、刀の損耗を自動的に修復する機能のことだ。
ショップの刀といえど、耐久力という概念は存在する。使っていけば損耗していくし、度が過ぎるともちろん壊れもする。
実際、私の刀は、今日になって確認してみれば、耐久力がかなり減っている状態だった。
まあ、ゾンビはともかく、恐竜やトラとも戦っているから、それもむべなるかなというところ。
刀の耐久力を回復する手段としては、この機能以外にも、ポイント消費で瞬時に回復するというやつも存在した。
だが当然、わざわざポイントを使うのは勿体ないので、なるだけこの機能で済ませたい。
こちらは修復するのにそれなりに時間がかかるとはいえ、機能を搭載する最初だけポイントを使えば、あとはポイント必要ないしね。
では次いこう、【遠隔回収】
これは、幽ヶ屋さんやリコちゃんが搭載していた機能と同じやつである。
手元にない状態でも刀を(装備欄に)収納できるようになるし、普通に手元に引き寄せることもできる。
まあ引き寄せに関しては【飛刀】のスキルでも可能だけど、あれは戦闘スキルだし……それに、こちらの方がどうも発動できる範囲が広いようだし。
それに、遠隔収納に関しては、なかなか重要だしね。——これがあれば、ついさっきのマナハスの“水の盾”に捕まった時にも、回収できたわけだし。
次の【同物複製】と【赤熱刀身】は、すでに触れたので飛ばして……
お次は【攻撃充填】だ。
コイツの効果は……なんと言えばいいのかな、けっこう特殊なんだよね。
そもそもエフェクトの系統の機能自体が、なんか攻撃に特殊な効果を持たせるって感じの系統なんだけど。
んで、この機能の効果は……まあ名前の通りに、攻撃によって、ある特殊なゲージを溜めることができる、という感じで……
その“特殊なゲージ”というのが何なのかというと、なんかこれ、MPと同じように使える系のやつらしい。
もっと分かりやすく言えば——要はコレ、格ゲーの必殺技ゲージみたいなやつなのだ。
攻撃することで溜めることができて、そうして溜めたゲージを消費することで、技を発動したり、強化したりできる。
さらに、そのゲージはMPに変換することもできるみたいで、つまりは、攻撃によりMPを回復させることもできる。
ただ当然だけど、攻撃する対象がなんでもいいってことはない。——おそらく、モンスターとかが相手じゃないと効果が発揮されないのだと思う。(あるいは、プレイヤー相手でも発揮されそうだけれど)
——そう考えると、対人戦でこそ使えそうな機能でもあるけど……
一応、ゾンビ相手に試してみたところ、ちゃんと効果が発動したのを確認できた。
ただ、ゾンビ相手にたまるゲージ量はめっちゃ少なくて……ほぼほぼカスだったので、これはゾンビ相手に使う機能ではなさそうだ。
ゾンビ相手では使えなさそうとはいえ、機能自体はなかなかに強そうだと思ったので、他にも色々ある中から希少なエフェクト枠で搭載する機能として、私はこれを選んだ。
まあ、これは言ってみれば、MPゲージが追加で手に入るみたいなもんだしね。プレイヤーにとってゲージの多寡は超重要な要素だから、この機能をつけない手はないっしょ。
さて、それじゃ次が、【振動刀身】ね。
これはアレよ、HFってのは、High Frequencyのことで——要は高周波のこと。
そう、これはつまり、高周波ブレードってやつだ。
刀身を超振動させて剪断力を強化して、さらには高周波による電磁パルスで分子間結合を強化して刀身の強度も高めるとかー、なんとか、かんとか——
……とにかく、超振動によって切れ味と強度を高める機能、ってことね。
では最後が、【動力追加】
これは……なんというか、普通なら、これまで挙げていった機能についても、ステータス——つまりはMPやSPを使うことで発動するわけだけど……
この機能は、それらが使えない状態でも、別のものを動力とすることで一部の機能を使えるようにする——という機能だった。
この機能は、ある種の保険的な意味合いで搭載した。
もしかしたら、ステータスが封じられるとか、そういう事態に陥ることがあるかもしれないし……
その時に焦らなくていいように、今のうちに備えておこうって感じ、かな。
——ちなみに、これで発動できるのが、赤熱刀や振動刀だ。
ああ、あと、刀の刀身じゃなくて、鞘の方にも一つ、機能を搭載しておいた。
それは、【溜気保存】という機能だ。
この機能について説明するには、その前に【溜気】のスキルについても触れておかないといけないね。
この【溜気】のスキルは、武器の改造とは別で、【軽化】や【防御】とかと同系列のスキルだ。
その効果は単純で、「スタミナを事前に消費しておくことで、次に使用するスキルの効果を高める」というもの。
攻撃のスキルに対しても使えるし、純粋に次のスキルの効果を高めるスキルって感じ。
ただこのスキル、普通に使うと、チャージ後すぐに次のスキルを使わないといけない感じで、その辺あんま融通が利かない感じなんだけど……
そこで、【溜気保存】の出番なのよね。
この機能を使えば、文字通り【溜気】で溜めたエネルギーを、鞘に保存しておくことができるようになる。
すると、好きな時にチャージしておいて、それをまた好きな時に使えるようになる。
まあ、それらの操作の際には、一旦刀を鞘に納める必要があるみたいだけど。
それはそれでね、なんか抜刀術って感じだし、なんかカッコいいから別にいいかなとも思うけど。
この機能もわりと使えそうだから、とりま搭載しておきました。
とまあ、そんな感じで——
私の刀も、かなり強化されたと、まあ、そういうことなんですよ。
いやぁ、改めて見返すと、ほんとに一気に色々と追加したな……
正直、自分でもまだ全然、把握しきれていない感じだけれど……
さて、それじゃ、新スキルや新機能を、しっかりと自分の力として落とし込むためにも——
引き続き、試行作業を継続、かな。