表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

135/247

第134話 ついに登場! 戦闘用スキル——攻撃技(バトルアーツ)



 さて、攻撃の(スキル)を試す前に、“このスキル”も試しておくか。

 どっちにしろ、攻撃スキルを試すには屋上(ここ)では狭いだろうし。だったら、下に降りるついでに試してみればいいよね。


 そう考えた私は、ひとまずその場で軽くそのスキルを発動させてみて、どんなものなのか試してみる。

 そして、ある程度は感覚を掴めたところで、今いる校舎の屋上の端のフェンスに近づくと、その上に飛び乗った。


 細いフェンスの上に器用に乗った私は、まずはそこでもそのスキルを使い、感覚を確かめる。

 それから私は、眼下に見下ろす運動場(グラウンド)に向けて、その場から()()()一歩を踏み出した。

 (はた)から見れば飛び降り自殺か何かのように見えるであろう私の一歩は、しかし、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 その感覚を確かめて、私は次の一歩——(すなわ)ち、フェンスに残ったもう片方の足——も、空中に踏み出した。


 そうなると、私は完全に空中にいることになる。

 すると、私の体は当然のように落下していく——()()()()()、踏み出した足は先ほどと同様に、()()()()()()()()()()()()()()()、空中で私の体重をしっかりと支えていた。


 ふむ……やろうと思えば、こうして空中に立つことも可能みたいだ。

 だけどこれだと、さすがにスタミナの消費も大きいみたいだね。

 ならやっぱり、実践的な使い方としては、踏み込むその一瞬だけ使う——という感じになるのかな。

 さすがに、いきなりそこまで使いこなすのはまだ難しいか……。ま、そこは練習あるのみかな。


 私は足裏に発生していたスキルの効果を解除する。

 すると私の体は、今度こそ順当に重力に引かれて地上へと落下していく。

 体が落下の勢いに乗り始める——その前に、私はまた足裏にスキルを発動し、その場に(とど)まる。

 しかし、落下の勢いが止まった次の瞬間には、スキルを解除して再び落下する。


 それから、同様のことを繰り返して——最後の方は片足ずつ交互に発動して、リズミカルに流れるように降下して——私は校舎の屋上から運動場に軽やかに着地したのだった。


 ——どう? 使ってみた感想は?


 うん、単純だけど、かなり使えるスキルだね。


 このスキルの効果は——『(体を)その場に固定する』というものだ。

 それで一体どういう役に立つのかって感じだけど、上手く使えば、さっきみたいに空中に足場を作るような使い方も出来る。

 もっとも、本来はこれ、壁を登ったり天井に張り付いたりするのに使えるスキルなんじゃないかと思う。

 あるいは、普通に地上を進む場合にしても、滑ったり足場を踏み抜いたりすることを防ぐことにも使える。

 ……ふむ、このスキルを上手く使えたなら、あの時の体育館での戦いの際にも、もっと上手く動けていたに違いない。


 ——というか、黒仮面(アイツ)はこのスキルを使ってたんじゃないの?


 だろうね。

 これを使ってたから、アイツは体育館の床を破壊しつつその場から飛び出すことが出来たし、その後も空中で飛び上がったり体勢を変化させたりと出来たのだろう。

 ……そうだな、私も色々なスキルを使いこなせるようになれば、アイツの()()()()を再現することが出来るわけだ。

 いや、再現で終わらず、あの動きを超えることだって——!


 ——それで? このスキルの名前は何にする……?


 ああ、うん、そうだね……。

 まー、【固定(スパイク)】ってところかな。それでどう?


 ——いいんじゃない?


 よし、それじゃ決定ね。


 さて、それじゃ、次こそいよいよ、攻撃の(スキル)にいきますか——


『“……お、おい、お前……なんなんだよ、さっきの動きは……?”』


 と、そこで、少し離れた場所にいたマナハスが、こちらを見ながら“念話”を飛ばしてきた。


『“なに、って……新しく覚えたスキルを試してみたんだけど”』

『“いや、マジかよ……え、新しいスキルって、使うとあんなとんでもないことになんの?”』

『“とんでもないって……ちょっと全力で上にジャンプしてみただけだよ? スキルとか使ってね”』

『“え、あれただのジャンプだったの? ——いやいや、跳びすぎだろ”』

『“まあ、私もあれはちょっとやり過ぎたと思う”』

『“ちょっと、では無いと思うが……”』

『“いや、まあ、それはいいからさ。——や、そっちこそどうなの? 新しい魔法、試してみたの?”』

『“誰かさんの奇行に驚いてたから、あんまり進んでないけど……ま、少しは試してみたよ”』

『“そう。——で、どんな感じ?”』

『“いや、まだまだ全然、さわりしか試せてないって”』

『“そっか……。まあ、十分に試してみてよ。私もまだまだ試したいことあるし、しっかり試せるまではここにいるつもりだからね”』

『“そか、りょーかい。——んなら、ここで試せる分はやっておくわ”』

『“うん。後で試した結果を見せてね”』

『“おう、任せとけ”』


 私がマナハスと念話という名の以心伝心をしている間にも、マナハスの後ろにいる三人からの視線を私は感じていた。

 その様子を見るに、どうやらマナハスの魔法だけでなく、私の方も見ていたみたいだ。すごい驚いているというか、気になってるって顔してるし。


 ——まあ、あんだけデカい動きしたら、嫌でも目につくでしょ。


 それもそうか。

 さて、一応この三人に実力を見せるという触れ込みでもあったから、戦闘力的な部分も見せておくべきだろうか。

 まあ、それについても、次のスキルを試せば、ちょうどいいんじゃないのかな?

 なんせ次は、そう、攻撃スキルを試すのだから。


 ——とうとう来たわね……その時が。


 ああ、ずっと試したかったんだよ。

 では、やろうか。


 攻撃のスキル——これは、普通に覚えるスキルとは明確に別枠となるスキルだ。

 それというのも、攻撃のスキルはどうやら、ジョブを得ることによって初めて覚えられるようになるスキルのようなので。

 逆に言えば、(ジョブと関係なく)普通に覚えられるスキルの中には、攻撃用のスキルって存在しないみたいなのだ。

 ——なので、攻撃スキルを覚えたければ、まずはレベルを15に上げてジョブにつく必要があるということだね。


 さて、私がついているジョブは、そう、『(かたな)使(つか)い』だ。

 これで覚えるスキルは、刀の技——すなわち“刀技(ブレイドアーツ)”……とでも呼んでおこうか——という感じのやつだった。

 今の私が覚えられる“刀技”は……二つ。


 ではまず、一つ目の“刀技”を試そう。


 私は刀を抜刀すると、まるで弓を引くような体勢で構えた。

 具体的に、それがどんな構えかというと……(ぼう)明治剣客漫画に出てくる新撰組三番隊組長の使う技——“牙突”——の構えである。

 なぜこの構えをしたのかというと、これから使う技の構えとして、もっとも相応しいと私が思ったからである。

 そう言えば、なんとなくどんな技か想像がつくだろうか。


 では、その想像を現実にするために……いざ——!


 私はこの構えから、前方に向けて突きを放つ——

 それと同時に、“刀技”の一番を発動した。


 踏み込みと連動して突き出した刀——そこに発動したスキルの力が乗ると、前方に向かう強烈な()()()が発生する——!

 その勢いは突風もかくやというほどで、刺突攻撃は私の体ごと推進していく突進となり、高速かつ一直線に相応の距離を突き進む。

 それからスキルの効果が消えると、次第に進む勢いは落ちていく——それでもしばらくの間、私は刀を突き出した状態でそのまま地面を滑りながら突き進み——それからようやく止まった。


 ……ふむ、これは、なかなか……単純だけど強力な技だね。



 それから私は、しばらくの間、このスキルを使っての攻撃を試していった。


 うむっ……ほうっ……なるほどっ……こういう感じなのねっ……!


 大体の使い心地が試せたところで、私はこのスキルの使い勝手のおおよそを理解した。


 この技の効果は——『攻撃に推進力を発生させる』というものだ。

 すでに使ってみた【推進(スラスト)】のスキル、これの攻撃版というところかな。


 ただこのスキル、別に突進攻撃に使うだけのスキルではない。

 ——例えば、上段から振り下ろす攻撃をするとして、その攻撃の際の振り下ろしの()()()()()()にも推進力を乗せることができる。

 それはつまり、あらゆる攻撃に追加の勢いを乗せることができるというわけだ。

 それの意味するところは、このスキルを使えば、()()()()()()()()()()()()()()ということに他ならない。


 ふむ……一番最初に覚えるスキルとしては、なるほどこれは相応しいのかもしれない。——基本技や基礎の技といった感じだろうか。

 効果が単純な分、使い方次第でいくらでも応用が効きそうな部分も、そんな気をさせる。


 ——それじゃ、この最初の“刀技”の名前は、何にする?


 そうだね……この技の名は——【進撃(しんげき)】だ。


 ——……巨人?


 ちゃいまんがな。


 ——阪神?


 球団か。


 ——まあ、分かりやすくていいと思うわ。


 オッケー。それじゃコレで決まりね。


 よし、では次、“刀技”の二番目のスキル。

 とりあえず、私が今の時点で覚えられたのは、この二つ目のスキルまでだった。——これ以降は、どうやらジョブの“熟練度”を上げないといけないようで、まだ習得不可だった。


 さて、それじゃ“刀技”の二番、さっそく試してみますか。


 私は右手の刀に意識を集中する。

 ——すると、刀に不可思議な力が発生していくのを感じる。

 ぬっ、いや、これは……すでに覚えがあるぞ。——そう、まさに、こんな力がこの刀に対して使われた場面を、私はすでに経験していた。


 その力とは……そう、“念力”である。


 ただ、以前の——聖女様の念力を受けた時と違うのは、今は私自身がその力を制御しているという点だ。

 であるならば……この刀は今、文字通り、私の意のままに操れる、ということだ。

 そう——こうして、()()()()()()()()


 私は刀から手を放していた——が、刀はその場の空中に()()()()()

 その宙に浮く刀に、私は意識を向ける。すると——私が意識した通りに、刀が動く。


 なるほど、なるほど。

 まさに意のままに動かせるというわけだ、このスキルを使えば。刀を。

 それこそ、宙に浮かせたりなんてことすらも。


 さて、それじゃ、どれくらいまでの動きができるのか、試してみるか。


 私はこのスキルを使い、刀を色々と動かしてみる。

 どれくらいの勢いを出せるのか。どのくらい遠くまで操作が届くのか。細かい動きはどの程度まで可能なのか。スキル使用により消費するスタミナはいかほどであるか——。

 そうやって、スキルの使用感や能力の限界を確かめていく。


 ——確認終了。

 結果、分かったのは……要はコレ、マナハスの光輪(こうりん)と似たような感じだ、ということ。

 まあ、射程距離は光輪よりいくらか短いみたいだけど。——自在操作範囲が半径十五メートル程度で、最大射程は倍の三十といったところかな。


 光輪ほどではなかったけれど、それでも、このスキルがあれば、私にも遠距離攻撃が可能になる。

 ——スキルを上手く使えれば、ブーメランみたいな感じで遠くを攻撃できる。

 まあ、武器を手放す点はリスキーではあるけど……それでも、私にも遠距離攻撃の手段が生まれたというのは大きい。


 ——それで、技名は何にする?


 うむ……この技の名前は——【飛刀(ひとう)】にする。


 ——まんまね。


 まあね。


 ……さて、これで私も、二つの攻撃スキルを覚えたということだ。

 【進撃】と【飛刀】——派手さはないが、どちらも有用なスキルだ。


 それに、攻撃スキル以外にも、戦闘に使えそうな重要なスキルをいくつもゲットした。


 体重を軽くする——【軽化(フロート)

 推進力を発生させる——【推進(スラスト)

 反発障壁(リフレクトシールド)をまとう——【回避(アボイド)

 耐衝撃障壁(リアクトシールド)をまとう——【防御(ガード)

 空中などでも足場を確保できる——【固定(スパイク)


 実は、すでに試してみたこれらのスキル以外にも、新しく覚えたスキルの中には、まだいくつか試していないスキルがある。

 それらについても、おいおい試していくつもりだ。

 あとは、すでに覚えている【視点操作】のスキルとかも、より使いこなせるように練習しておくべきだろう。

 

 とはいえ、今回試したあれらのスキルによって、私の機動力と防御手段が飛躍的に強化・拡充されたことは間違いない。

 これらのスキルをしっかり使いこなせるようになれば——きっと怪獣とも、もっと上手く戦えるようになるだろうし、他のプレイヤーにも(おく)れは取らないはず。

 ——次はトラだって一人で倒してやるし、黒仮面も逃さずに仕留めてやる……!


 そのためにも、まずは——とにかく練習あるのみ、だね。


  

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ