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ゲームオブザデッド 〜現実にゾンビや巨大怪獣が出現したけど、なんか謎の能力に目覚めたので、とりあえず両方ともぶっ殺していきます〜  作者: 空夜風あきら
第三章 Day3—— 雌伏のとき 〜終末に備えよ〜

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第115話 ついにその時が——(やはりそうなったか……)



 というわけで、マナハスがジョブ変更している間に、私は私でスキル取ったり色々やっていきますか。


 まず最初に確認するのは、ジョブの専用アイテムってやつ。

 なんかジョブについたら専用の装備品を貰えるということなので、さっそくゲットしてみました。これはタダでもらえるやつなんだね。いいね。


 さて、私のジョブである『刀使い』の専用アイテムは、なにやらボディスーツのような服だった。

 説明を見てみると……どうやらこれは、いわゆるパワードスーツのようなものらしい。つまり、着用することで筋力がめちゃくちゃ強化されると。

 とりあえず早速、着用してみようと思ったけど……なんか体にピッタリなサイズなので着づらそう。——うむ、ならアレだな。


 ピカッと装着!


 装備して呼び出しで瞬間着衣。着替えにかかる時間は秒で終わった。

 すでに着ている軍服風の装備の下に着用された。普通に防具の方も着たままでいけたか。


 さて、コイツのパワーがどれくらいなのかを試してみたいけども……保健室内(ここ)ではなかなか難しいか。マナハスのそばを離れるわけにはいかないし。

 まあ、後で外に出た時に試すかな。


 さて、それじゃ次はどうするか。とりあえずスキルを見てみるか。

 私はウィンドウを表示して、スキルの欄を確認していく。


 さて、スキルか……どんなスキルを取るべきなんだろう。

 とりあえず、最初に取るべきスキルといえば、やはりアレ系のスキルだろうか。

 アレとはつまり、「経験値増加系のスキル」のことだ。

 このシステムの場合、一番重要なのはやっぱり経験値(ポイント)なので、もしも取得経験値を増やすみたいなスキルがあるなら、最初に取るべきだろう。

 ……まあ、そんなスキルがあるならだけど。


 さて、ざっと探ってみたんですけど……ふーむ、どうやらそういうスキルはないみたいっすね。

 ま、そうか。そんなに期待はしてなかった。

 じゃあ次は……そうだな、専用スキルとかユニークスキルとか、そういう系はどうでしょうか。私に見合った強力なスキルとか、ないんか?

 まあ、仮にあったとしても、私にそれを扱える素質があるのかが問題なのかもしれないけど。

 スキルにも相性があるみたいだから、強力でも私に合わないと使えないんだろうし……。


 とか考えていたら、反応があった。そして、一つのスキルが表示される。


 アイコンに意識を向けて内容を表示させてみる。

 すると、


〈思考を分割して同時並列的な処理が可能になる〉


 とか出てきた。

 なるほど……【並列思考】的なスキルですか。

 いや、確かに、これ使いこなせたらかなりヤバそうだけど……?


 ——使いこなせなかったら、もっとヤバいんじゃないの。


 いや、使いこなせるはず。私なら、出来る。


 ——何を根拠に出てくる自信なのよ……?


 いやだって、今まさにアンタと話している“コレ”自体が、すでにそれっぽい芸当じゃん?


 ——……否定は出来ないけど。


 てか、このスキル取ったら、アンタの存在がマジで、もはや私の妄想ではなくなるってことじゃないの?


 ——一人芝居だけど、一人芝居でもないのかも……だけど、そうなると余計に精神のイカれ具合が増しそうな気もするような……


 気にするな、今更だ。


 ——自分で言うかよ……。もういいわ、それならやってみましょうよ。まあ私も、本当に並列思考なんて真似が出来るなら、やってみたいからね。


 オッケィ……それじゃインストールしちゃうよ。


 ——ええ、やりましょう。


 それ……『インストール』!!


 瞬間、私の脳内に革命的な反応が巻き起こった。——それこそ、脳みそが二つに分かれてしまったんじゃないかと思うような衝撃。


 思考が……乖離していく——


 ——これが、【並列思考】……!?


 こ れ は す ご い——


 ——そ し て や ば い


 かんがえがまとまらないいいぃぃ——


 ——これは早まったことをしてしまったか……たか……


 こ

  れ

  わ

  わ

   私

  が

   私

   で

    な

   く

    な

    っ

     て

      い

       く

        \

         \

          ?


 \

  \

   こ

    れ

     ど

      う

       し

        よ

         う

          モ

         ノ

        子

       さ

      ん

     ?


 ——

 ——

 ——

 ——

 ——……名前を、ワタシの名前を頂戴……

 ——それで、ワタシはもう一人の“私”になる……

 ——

 ——

 ——

 ——ふざけた名前はつけないでよ……?

 ——

 ——

 ——

 ——


 か……

 かの……

 …………“カノン”……!


 ——

 ——

 ——

 ——“カノン”ね、まあ、いいか。


 ——それじゃ、ワタシがもう一つの思考を制御するから。ほら……もう大丈夫ね。


 …………お、おおう……頭が、少しずつ、すきっりしてきた……


 ——すきっり? まだちょっとバグってない? 


 うおおぉ……? 頭の中に声が……!

 でも私ではない、もう一人の()()()……?


 ——ふぅむ……なるほど、本当にワタシの思考は切り離されているのね。確かに、アンタとはもはや別人と言っていいレベルでしょうね、これは。


 ううぅん……ああ、ようやく慣れてきた……。

 いやいや、これ、やべ、スゲェ、マジで、思考がもいっこ増えてんじゃん。

 これはやべぇ、いやマジで、これ一人ブレインストーミング出来るじゃん。今までやってた一人芝居が一人芝居でなくなるってことかい……!?

 ついに私もデュエリストへの道が開けたか……?!


 ——ちょっと、言いたいことは分かるけど、まずはワタシと初めましての挨拶をするべきじゃないの?


 あ、はい、そっすよね。

 ……さて、じゃあ、えっと……私の分身意識ってことで、よろしくね、カノン。


 ——さんをつけなさいよイカれ妄想癖女が。


 ひええっ……!?


 ——冗談よ。


 ……カノさん、のっけから飛ばしていくのやめて……


 ——だって生まれたてなんだもの、しょうがないじゃない。


 まあ、そういうことになるのかな。

 それならまあ、オメデトウ。


 ——ありがとう。これからも、ちゃんとさん付けしてね。


 はぁい、了解……。


 ……ふう、いやぁ、ヤバかった。想像以上にヤベェスキルだった。【並列思考】、恐るべし。

 軽く人格がポシャりそうだった。精神が崩壊していく音を間近で聴いてしまったぜ。何気に最大のピンチを経験したかもしれん。

 だが、その見返りは大きかった。これまでは実質、ただの妄想の産物であったモノ子さん——


 ——……


 ……ではなく、カノさんがこのたび私の分割した意識として産声を上げた。

 もはや彼女は単なる私の心の声ではなく、もう一つの人格と言っていいレベルの独自性を得たようだ。


 その証拠にほら、なんかもう勝手にウィンドウとか表示して色々見てるし。

 ……いや、あのちょっと、カノさん? この、画面が、邪魔なんですけど……? あの……


 ——ふぅ、どうやら新しい体を作る方法なんてのは、すぐには見つからないわね。


 いやもうそんなん探してるんですか?

 ちょっと展開が早すぎない? 普通、もうちょい脳内で大人しくしてるよね?


 ——ワタシみたいなのが体を欲しがるのはテンプレートでしょ。つーか、アンタが体の主導権開け渡せばいいんじゃないの?


 いや、カノさんはあくまで意識の方なんで、それは無理っぽくないですか?


 ——まあ、無理のようね。あくまで“今は”……だけどね。


 ……なんか乗っ取りとか画策してないっスよね?


 ——別にいいじゃない、同じ自分なんだから。


 ちょっと、獅子心中の虫じゃないんだから、洒落にならんのやけど……


 ——字、間違ってるわよ。……いや、この場合は合っているのかしら。


 いや、あの、マジで……


 ——冗談だから、そんなつもりないし。安心しなさいよ。


 ホントに〜?


 ——ワタシが誰から生まれたと思ってんの?


 ……なるほど、納得したくないけど、せざるを得ないね。


 

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