フレンチトーストは母の味
ごきげんよう!! ひだまりのねこです。
外部情報に極力触れないようにセルフ鎖国をしているので知らなかったんですが、最近フレンチトーストがにわかにブームらしいのです。
大手レストランチェーンやハンバーガーチェーンも新メ二ューに加えたとか。
まさかフレンチトーストを外で食べる日がやって来るとは……。
今日はそんなフレンチトーストにまつわるお話。
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私にとって母の味と言えばフレンチトーストだ。
我が家の朝食に限れば、週5、つまりほぼ毎朝フレンチトーストだった。
私はそれが普通だと思っていたのだが、泊りに来た友人に言わせればどうやら普通ではないらしい。
そんな馬鹿なと当時は思ったが、たしかに今日まで生きてきて朝食がフレンチトーストだったという人間に会ったことがないので、もしかすると多数派ではないのかもしれない。
ところでフレンチトーストはそのお洒落な響きとは違って、とても男っぽい料理だ。少なくとも我が家では。
大量に漬け置きされた食パンがひっきりなしにフライパンで焼かれ、油で揚げられ、大皿にどんと山盛りに積み上げられる。
熱いうちにお好みで砂糖かハチミツでいただくのだ。
ちなみに私は何も付けないのが好きだった。
ちょっと補足すると、我が家のフレンチトーストは、フライパンで焼くバージョンと油で揚げるバージョンがあるが、それぞれ良さがあってどちらが好きかは日によるとしか言えない。
そして先月のこと、そんなフレンチトースターな私の耳に飛び込んできたのは、最近フレンチトーストブームだというニュース。
ものすごい違和感だ。
考えてみて欲しい。最近白飯がブームだと言われたらどう思うだろう?
私が感じた違和感はそれだ。フレンチトーストは家で食べるから美味しいのであって、わざわざ外食で食べるようなものではないと思っている。
高級懐石でいつも食べているひじきの煮つけが出てきたら少しがっかりする感じと言えば伝わるだろうか? ひじきやフレンチトーストを貶めているわけでは断じてなく、家で食べたいと言うだけの話。
とはいえ、わざわざ商品化するなら相当自信があるのだろう。番組でもめちゃくちゃ美味しいと褒めちぎっていた。
よろしい、食べてみようじゃないか。
週末、近くのサイゼリ○へ行った。なぜモ○バーガーに行かないのか。簡単な話だ。モ○バーガーは絶対に高いに決まっているからだ。庶民の味方サイゼリ○万歳!!
しかし、現実は厳しかった。
……なんだと!? フレンチトーストが400円!?
あり得ない……私の1週間分の朝食代に匹敵するではないか。自分で作れば、この3倍の量が半分以下のコストで作れると考えると戦慄せざるを得ない。
メニューを呆然と眺めながらすばやく計算をする。せいぜい200円ぐらいだろうと思っていたので、これでは完全に予算オーバーだ。
せっかくフレンチトーストとドリンクバーで疲れを癒そうと思っていたのに……。
泣く泣くご自慢のフレンチトースト400円のみをオーダー。
ドリンクバー? 問題ない。サイゼリ○には美味しい水がある。
さて……一体どんなお味なのか、お手並み拝見といこうか。
……なんだこれは?
食べた感想を正直に言えば、普通だった。ものすごーく普通だ。なんというかインパクトがない。
美味しいか美味しくないかで言われれば美味しいかもしれないが、外や余所で食べた中ではマシな方だと思うが、また食べたいと思うかと言われれば、富豪になったらね、と答えるしかない。
やはり、母の味というのは超えられない壁なのだとつくづく思う。
久しぶりに母の作ったフレンチトーストが食べたくなった。そんな日曜の午後。
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最後にフレンチトーストの由来が面白いので少しだけご紹介しますね〜。
まず名前にフレンチと付いているので勘違いしやすいのですが、フランス料理にフレンチトーストなるものは存在しないのです。自分の国名を料理名につけませんよね普通。そもそも英語ですし。
フランスではパン・ペルデュ「pain perdu=失われたパン」と呼ばれている料理がフレンチトーストに当たります。古く硬くなって食べごろが失われたパンを、卵などの力でよみがえらせるというわけです。
じつにお洒落な名前ですよね~。
日本では主に食パンを使いますけれど、バゲットやブリオッシュを使うのがフランス流なのです。
フレンチトーストの源流は古くは4~5世紀のローマの料理書にも出てくるほど古く、世界各地に似たような料理が存在するのですが、卵は使わず硬くなったパンをミルクに浸して食べるという素朴なもの。いわゆるミルクトーストですね。
卵を使う方法は、14~15世紀のドイツやイタリアの料理書にみられるそうなので、この辺りがフレンチトーストの直接の先祖だと思われます。
では、フレンチトーストの名前の由来は? となりますが、実は有力な説が二つあります。
一つは、元々アメリカでは、ドイツ系移民がこの料理を作っていたので、ジャーマントーストと呼ばれていたのですが、第一次世界大戦時に敵国となったことから、呼び名をジャーマンからフレンチに変えたとする説。
これは他の料理でも実績がありますし、比較的最近も、フランスと険悪になった時期、フレンチフライをフリーダムフライに変えたお国柄でもありますから、かなり説得力があります。
日本でも明治期はジャーマントーストと呼んでいたようですので、戦後フレンチトーストに変わったことを考えると、我が国でフレンチトーストと呼ぶのはアメリカの影響で間違いなさそう。
ちなみにドイツではフレンチトーストのことを、アルメ・リッターと呼びます。
言葉の響きめちゃくちゃかっこいいんですけど、意味は「貧乏騎士」
……甘いはずのフレンチトーストになぜか塩味が感じられます。
そして、もう一つは、1724年ニューヨーク州オールバニの酒屋店主「ジョーゼフ・フレンチ」という人が名付けた食べ物だから「フレンチトースト」だという説。
まさかの人名来た。フレンチさんなのにアメリカ人とか、大阪さんなのに関西人じゃなかったときぐらいの衝撃。
実際のところは、二つの説、それぞれが混ざり合って定着したのだと思いますが、フレンチトースト呼びは、基本日米だけで、世界各国呼び方が違いますから、旅行の際はご注意あれ〜。ある程度通じるとは思いますけどね。
最後に一つだけ言っておきたい。
フレンチトーストに新しいふわふわのパンを使うのは邪道ではないだろうか。
もはや風味も食感も失われたパンに命と活力を吹き込む。
それこそがフレンチトーストの王道であり醍醐味なのだと私は信じてやまないのだ。