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追憶のサンイチイチ・後編

 一先ずラーメン屋を後にした俺と親父だが、帰り道に近くのスーパーによる事となった。

 実はこのスーパーは、母が元々務めていたお店であり、店長やその家族とは顔見知りである。

 

 その為、俺もこの店でよく買い物をしているのだが、割とサービスしてくれるのが有難かったものだ。

 しかし──この店も、大地震の余波で凄まじい惨状となって居る。


「あ、店長さん」

「ユウキ君か? お仕事の帰りか、それとも復旧の何か?」

「いえ、まだそう言った話は……まぁ、ともかく。何かカップ麺、あれば買わせて下さい。親父、ラーメンラーメンうっさくて」


 そんな惨状の中、店長さんと遭遇したので安否確認と合わせての会話。

 まだ電気は不通の状態であったが、このスーパー向かいの建設現場事務所さんから、投光器付きの発電機を借りて、仮営業を行っているそうだ。


「ああ。んじゃこっちに……流石に店舗内には入れないから、外で販売していてね。けど、まぁ……」


 と、俺にカップ麺を手渡しながら、暗い表情の店長さん。言葉尻から、何となく俺も察してしまった。

 正直、素人目に見ても被害状況を考えると、再開はまず無いレベルの物だった。


「……いえ、仕方ないですよ。ともかく、カップ麺どうもでした」


 取り合えず、人は無事だったというのが救いだと思う。先の話も暗くなりそうだったから、話は軽くで切り上げて家路に就く。

 車の燃料ゲージ、残り一本。本当なら今日仕事帰りに入れる予定だったので、最悪のタイミングとなってしまったが、こればかりはどうしようもない。


 そんなこんなで帰宅した訳だが、親父は家に入って水を汲もうとして、電気が付かないだの、懐中電灯で照らしながら水が出ないだの大騒ぎ。

 一先ず俺が組んで置いた水を沸かして居るが、何で沸かしておかないんだと宣う始末だったりする。


「…………はぁ」


 と言う具合に溜息を付く。嵐の様な親父旋風が去って行き、一気に疲れが回って来た感じだ。


「ともかく、現状確認っと……」


 しかし、疲れたと言ってもすぐに寝れる状況ではない。俺が親父の相手をしている間、母さんと弟が何とか寝床を作っていた。

 一応四人寝るスペースは確保したが、親父はこんな所で寝れるかと言って、自室へと戻って行った。


 いや、耐震性を考えるとこの倉庫の方が良いだろうと思ったが、思うにとどめたのはここだけの話。

 まぁ、四人分のスペース。三人で使えるのは正直助かるのだが。


 ☆    ☆    ☆


「……いるんだなぁ」


 さて、寝床の準備も終わり時間は夜の十時を過ぎた辺りになる。

 携帯は不通、停電も解消されていないが、電池式の時計やラジオは動くので災害の情報に聞き耳を立てていたが、そこで火事場泥棒に注意。的な事を言っていた。


「んー……念の為、エアガンの準備でもしておくか。無いとは思うが、万が一の時に仕えるかも知れん」


 と言う訳で、俺はサバイバルゲームをして居た事も有り、電動、ガス、エアの三種のトイガンを保有していた。

 実際に殺傷能力はないが、少なくともこの暗がりで『散弾銃を構えて、動くな』と言えば、張子の虎程度の役割はしてくれるだろう。


「ちょっと、そんなもの……」

「あぁ、BB弾は込めてない。こんな所に来るとは思わないけど、一応な」


 ま、どちらにしても地震の被害を受けた建物も、現在避難場所となっているこの倉庫も、簡単な鍵でしか施錠出来ない。

 都会のマンションにあるオートロックなんて素晴らしい機能は、この片田舎では備えて居る筈も無いのだ。


「そんな訳で、夜の見張りをやって置く。正直全然眠くないし、折角のガソリン等も抜かれる訳にも行かないからな」


 そう。車上荒らしなんかも火事場泥棒に含まれているのだ。弟は既にガソリンの給油を終えているので、それを抜かれると色々困るのだ。


「……そうなったあんたを止められないのは分かってるよ。お母さんは寝るから、程々にね」

「おう」


 因みに、寝ずの番をした訳だが……特に何事もなく朝を迎えたが、弟を送り出した所で凄まじい眠気が襲ってきた。

 多分、あれだけ色々活動していて、緊張の糸が切れた為だろう。開けない夜は無いんだな、と思いながら、やっと眠りに就けた──。





 一先ず、これが約10年前。当時の一日の行動記録となります。

 あの時、何をどう。そして何が正解で、何が最適解だったのかは未だに分かりません。


 少なくとも、気丈に振る舞い続けれた。みんながみんな混乱している時って、一人冷静な人が居るだけで、途轍もない安心感に包まれた経験がありました。

 そんな経験から、拙いながらに俺も務めて冷静に色々立ち回った、と言う状況を書き記したのですが、如何でしたでしょうか?


 行動としては、先ず、身を護る。落ち着いたら、火の元。ブレーカーの確認。前編でも書きましたが、ブレーカーが上がったまま通電すると、そこから火災になる可能性があります。

 阪神淡路大震災の火災は、この辺が原因とも言われてますので、ご注意を。


 次は、生活必需品。食料、水。今はAmazonの様なサイトで、保存食を手軽に手に入れる事が出来ます。

 作中、前編で水の確保を書きましたが、場所や配管によって出ない場合もありますので、過信は禁物です。


 最後となりますが……地震大国日本。次は南海トラフ、でしたか。もしもの時の備え、備蓄。あって損はありません。

 自然災害はいつ起こるか予測が付きませんが、決して慌てず行動して下さい。

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