第二話 とある呟きを比喩してみる
一部フィクション、及び創作を加えてあります。
私の名前は山森空像。何処にでもいる外回りの営業マンだ。
この職業も相まって、私の趣味の一つは食べ歩きとなっている。
昼食の時間の他、休日も外食をしに出掛けるがここでよく使うのが、呟くを意味するサイトにおける募集である。
ハッシュタグ、と呼ばれる物で募集をかければ、近隣の美味しいお店をポンポンと上げて来るので非常に助かっている。
──あんな情報が来るまでは、だが。
その日、私はハッシュタグを使い募集を掛けた。内容は、近隣の美味しい洋食店のハンバーグ。
するとしばらくした後、ポコポコと集まる美味しい洋食店の情報。私は小躍りしながら喜んだ。
何せ、この洋食店は私が知らない物が多く、穴場、隠れ家的な美味しい店もあると言うのだ。
食べ歩きをしているとは言え、全てをカバーするにも至って居ないので正直助かる。
取り合えず情報をくれた人々にお礼をの返信を返しつつ、これで来週いっぱいは美味しいハンバーグが食えるなと思って居た所で、ポコンとスマホに通知が届いた。
「ん? ああ、呟きからの通知か。えー何々……美味しいエビフライを出す店? え?」
通知に届いた内容を口に出して読んで、文字通り素っ頓狂な声を出してしまったと思う。
私が募集を掛けたのは、洋食店。カテゴリーがハンバーグだったのだが。
「んー。募集要項にない物か。にしても、よりにもよってエビフライ、か……」
食べ歩きが趣味となった私だが、それでも入念に調べて食べに行って居る。
何故なら、私は甲殻類アレルギーを持っているからだ。
昔給食でエビフライが出た時も、アレルギーがあるからと断ったが理解されずにと言う事もあったので、高校に進学するまで酷い目に遭ったのは覚えている。
「あの時は親の介入で何とかなったが、今は我が身は自分で守るしかない。よし、申し訳ないがこの人には断ろう。えっと……申し訳ないですが、『甲殻類』はちょっと。と」
取り合えずスマホの画面をポチポチとタップして、謝辞を伝える呟きを返す。ここでエビと打たずに、甲殻類と書いたのには意味がある。
大体の人は察してくれるが、果たして……すると数分もしない内に返信が届く。この人結構ヘビーな呟きユーザーかな?
「早いな。で、内容は……ハァ!? ちょ、おいおい。『食わず嫌いは駄目ですよ』ってこっちはアレルギー持ちなんだがな。しゃあない……えーと」
内心で悪態をつきながらまたポチポチとスマホをタップして文字を入力して行く。
正直パソコンでカシャカシャ打った方が速いのだが、出先なので仕方なくである。
「よし。『甲殻類アレルギー持ちなので、食べれないのです。情報提供感謝、申し訳ない』これでよかろう。ふぅ……」
今度こそ大丈夫だろうと、一件目に紹介のあったお店の情報を見る。ネットで引っ張って来た電話番号を確認し、お店にコンタクトを取るべくメモをしていた。
電話越しに口頭でアレルギーの情報を調べようとした所で、再び通知。同じ人からだ。
「返信か。えー何々……『アレルギーは甘え。俺の紹介した店に行けないのか』……ダメだこれ、話にならんわ」
そこに来て、初めて私は怒りを覚えた。確かにアレルギーに理解の無い人は一定数要る。
実際にそれで死にかけた事が何度もある。恐らくこの返信をしている人も同類だと思う。
「ま、コイツは放置だな。アレルギーが甘え? ざけんじゃねぇ! こっちは生きるか死ぬかの世界なんだよ」
と言うリアルな呟きを吐きながら、スマホを操作し一件目のお店へと電話をした。
店主さんもアレルギーに理解がある人であったのは、やはり食に精通しているからだろう。
そこで一先ず、美味しいハンバーグを食べる事で私の怒りは収まった。
同時に教訓も残す事になったが、まぁ致し方あるまい。
「アレルギーと言う項目を隠してたのも悪いけど、募集要項は意味があってやっているものだと、思い付いて欲しい物だな……」
募集要項は、理由があって募集をしているものだ。
決して食わず嫌いだとか言われる物ではない。
例えどんなに美味しい料理であろうと、それが万人に受ける訳では無い。
今回はアレルギーと言う事もあったので断った訳だが、今後もこの様な事は続くのだろう。
食は人とは切って切り離せない物だけに、もう少し考えたい物である。
前書きにもあります通り、一部フィクションを加えた作品として書いてみました。
さて、これは実体験を元に書き上げましたが、一体何を比喩していたか分かりましたか?
因みに、創作に当たる部分はアレルゲンに関して。実際に筆者は食物アレルギー『は』持って居ません。
まぁ、このアレルギーもある言葉の比喩でもあるのですがね。
それでは、また適当に思い付いたら書こうと思います。
答えが分かった人は、是非とも感想欄に書いてみて下さい。