第一話 とある仮置き場での電話
ごきげんよう。こんにちは、またはこんばんは。ふ、と思い付いたノンフィクションストーリーを書いて行こうと思います。
これは、実体験を基にしたものでありますが、人物、団体、名称等は架空の物となって居ますがご了承下さい。
それでは、一件目の出来事。
それは、もう直ぐ雪が降るのではないかと言う時期の出来事でした。
あの時の私の立ち位置は、現場代理人の代理と言うべき立場でしょうか?
現場代理人とは、物凄く簡単に言ってしまえば、その現場における社長の代理みたいなものと思って貰えば良いです。
本来この現場代理人になるには各種技能が必要になるんですが、私も一応これに該当する様でしたので、代理人の代理と言う形で現場の指揮を執っておりました。
何故代理人の代理かって? まぁ、語るも涙……と言う程の事でもなく、単に直属の上司が辞職した事により、私が該当する現場を引き継いだだけの事になります。
ともあれ、まぁ何とか少ない人員で現場の切り盛りをしていたんですよ。ええ、二人の後輩を率いる形だったので、自然と自覚が湧いたのだと思います。
ま、特に忙しくはなくかなり穏やかな現場で、元請けの親方も大らかな人でしたので、のんびりまったり仕事をしていた訳です。
え、何の仕事。で御座いますか。そうですね、当方はまぁ楽しい仲間がぽぽぽぽーんな県に住んでおりまして、その現場は、まぁあれです。所謂アレですよあれ。黒い袋に──おっと誰か来たようだ。
とまぁ、そんな現場の受け入れ業務でした。荷が来たら下ろして積み重ねる。
そんな簡単なお仕事でした。ええ、とっても簡単でした。だから私にでも現場代理人が務まると会社も判断したんでしょうね。
実際問題としては、朝来て危険予知活動の用紙を記入して、打ち合わせをして作業開始。
終業時は戸締り火の始末をして終わるだけ。まぁ本当にこんな感じで御座いました。
──あの電話が来るまでは。
それは、午前の部が終了してお昼休みの事です。時刻は、昼の十二時十五分ごろだったと思います。
昼のミーティングを元請けとするので、私の昼は、他の技能者と比べて少しずれるんですよね。
で、その日も例に漏れず遅めのお昼を取って今した。おにぎりをもぎゅもぎゅと頬張っているのですが、少し強めの塩が良いアクセントになって居ます。グゥレィトォ。
で、美味しいわぁと思いながら食ってましたら、突然電話が鳴るんですね。飯中に誰やコラ。と言う感じでディスプレイを見れば、会社の次長からでした。
めんどくせーな、しゃあない出るか。とお口もぐもぐしながら電話に出たんです。
「もふぃもふぃ? ふぁんすか?」
「あぁ、お昼中に済まないね。明日の事で相談だったんだが……」
ここで私も、飲み込んでから喋れば良いと思うんですが、気にせず出ました。わざとです。
そう、飯中に電話かけてくんじゃねぇよ、と言う皮肉を込めた対応でした。凄いでしょう?
「ふぁふぃふぁ?」
「……待ってるから飲み込みなさい」
「…………あい、なんスか?」
流石にもぐもぐしながらに呆れた声色でしたので、飲み込んで受け答えするのですが、まぁそれは不機嫌そうな声が自然と出ましたよ。
私の唯一の楽しみであり、至福のひと時である昼食の邪魔をする者は、誰であろうと死すべし。慈悲は無い。
「あぁ、明日なんだけどね。君の現場で何人か人を使ってくれないかね?」
あー成程。そう言う電話か。そう思った俺は少し考えたふりをしつつ──。
「いいっすけど、一体何をするんですか?」
思いっ切り含みを込めた回答をした訳です。普段、この資格を持つ技能者が必要だ! 何とか融通してくれ。と言っていても知らんぷりなのです。
こんな時、この日からすれば明日は第二土曜日。一応会社カレンダーでも休日の筈なんですよね。まぁ、契約方式がちょっとアレなんで、仕事を斡旋しようと経営陣は必死なんですよ。
「それは君が考えてくれ……」
「考えてもなんもないっすよ。一体何をするんすか?」
「それを考えるのが職長の仕事だろう! 何かあるだろう、何か……」
と、こんな応対をしている訳です。ぶっちゃけ、この対応はわざとです。何故かと言えば、実際に何の仕事も無いのは間違いないんです。だって、明日は第二土曜日なのですから。
「だからー文字通りなんもないんです。明日、この現場は休みなんですって。それなのに人を寄こして、一体何をさせるんですか? って意味なんですが?」
「は? え? えぇぇぇ? や、休みなのか?」
そこで初めて合点がいったのでしょう。がっかりしたような声色になりましたね。
ま、可哀相とも思いませんが。普段散々人も寄こさず、こんな時ばかり人を押し付けられて、誰が素直にハイワカリマシター何て言う物かよ。
「ええ、休みっすよ。ま、俺は来ないんで、誰か寄こしたかったら送っても良いですよ? 鍵も開いてないから誰も居ませんがね。はっはっは!」
「はぁ、分かった。手間をかけたな」
「あいあい、今度から飯中は勘弁して下さいっすよー」
そう言って電話を切りました。相手からの反応も待たずにね。え、次長相手にその態度大丈夫なん?
って思われる方もいるでしょうが、基本私誰にでもこんな感じです。その方法が私的に間違って居る、遅い、この方が安全だ。と思ったら目上だろうが、役職だろうが関係なく食って掛かります。
本当に間違って居たら窘められますし、そうやって意見も出さなければ経験になりませんのでね。いるんですよ、ともかく怒って分からせれば良いと思って居る人。
ただ、無暗矢鱈に怒鳴られ叱られるだけでは人は育たないと、この身を持って知ったのです。年下や部下は不満のはけ口じゃねぇよ。
ま、お陰で誰にでも物怖じせずに意見を出せるようになりましたし、現在は登録機械土工基幹技能者と言う事で各種マネジメントもさせられているので、まぁやりたくはないですが本当に管理者の一端になってしまったんですよね。
──不幸な事に。
ま、ともあれ我が社ではこんなんが日常であります。世の中にはもっとすさまじい会社もあるんでしょうけど、まぁ私は今の所此処で良いやと思って居ます。
責任を持って仕事をするのは良いんですが、何があったから責任を取れは違うと思うんですよねー。