ハリーが無言の理由
「なんだ。そんなことか」
ハリーは私にそう言った。私は、え? と思う。どうしてハリーはそんなに落ち着いていられるのかしら? 私は本当に悩んでいる。私は悪役令嬢、この乙女ゲームの世界に転生している。まあ、このハリーも転生してきたわけだけど。うーん、ハリーの中身の女性は本当に落ち着いているね? 私はいつ破滅するのかでびくびくしているの。
「ボクはヴィクトリアが破滅しないように動いている。心配するな」
そ、そうよね。いくら私が悪役令嬢だからといって、私にはハリーという味方がいる。そういえば、そんな約束をしていたわ。あー、心配して損した! さて、ちょっとこのお茶会で食べようかしら。
「ハリー? 何か食べたいものはあるかしら? 取ってきてあげるわ」
「いらないよ」
「え?」
私はハリーの表情を見る。ちょっと考えているような感じだった。えーと、やっぱり何かあるのかしら? うーん、気のせいかしら? それにしては、ハリーの表情が真剣みたいな感じかな。私は食べ物をお皿に盛り付ける。うーん、なんだろう。ハリーらしくないような気がする。大丈夫だよね、きっと。
続く




