そうだったかしら?
「ラン? そういえば、家の裏庭がどうかなっていてよ? 確認をしてちょうだい?」
私の一言にメイドのランはちょっとだけ動かない。ふふん、私って本当に悪役令嬢ね? もちろん裏庭のことはウソだ。まあ、ランがそういうつもりならば、私は自分の気持ちに正直になりたい。つまり、ランが裏庭に行ったら、私と衛兵のマイケルは二人っきりになれる。さあ、ラン。裏庭に行くのよ。
メイドのランは無言で裏庭の方へ行った。ふう、私って悪い人よね? さて、これで私とマイケルの二人っきり。お互いに見つめ合う。けれども、何を言ったらいいのかしら? 私ってマイケルを大切に思っている。あー、どうしよう? いったい何を話せばいいのかしら? もう、何か言ってよ、マイケル?
「ヴィクトリア様? 裏庭は何も変化はなかったように思いますが?」
「あらー? そうだったかしら?」
もう、マイケルのバカ。せっかく二人っきりになれたのよ? もっと、こう、他に言葉はないわけ? って、マイケルが私に近付いて来た!? えっと、落ち着け私。衛兵のマイケルのことだから、どうせ何もないんでしょう? って、ちょっと近すぎやしないかしら? えっと、ドキドキが止まらないけど。私は言葉が出てこない。マイケルの顔をずっと見ていたいから。
続く




