ヴィクトリアって、前世は
私はいま貴族学校の裏庭でひとりぼんやりとしている。あの衛兵のマイケルとメイドのランが楽しそうに話しているのを見てから、私は自分の気持ちがわからなくなっていた。私はマイケルのことが好き。でも、あんなに慌てた様子でメイドがマイケルを連れ出したってことは、つまりそういうことなのだろう。私とマイケルが楽しく話しているのをメイドのランが嫌がったというわけかな? 私はどうしたらいいのだろうか。
そういえば、ハンナとサム王子は何をしているのだろう。私はサム王子に迫られていた。でも、私はマイケルという大切な人がいるので断った。すると、ハンナが実はサム王子のことが好きで。それから、ハンナはサム王子と仲がいいらしい。私は友だちのハンナのことを応援している。だから、ハンナとサム王子には幸せになってほしいのだが、ハンナはこの乙女ゲームのメインヒロイン。私は悪役令嬢。ハンナのゴールの結果によっては、私は破滅をするかもしれない。ハリーから聞いた話だと、サム王子が私を破滅させるつもりらしい。それにしても、ジョンとアランはハンナのことが好きなのに、私はその二人に悪いことをしたかもしれない。私がハンナのことを応援しているばっかりに。
あーあ、私はこのまま破滅するのだろうか?
「あ、ヴィクトリア。こんなところにいたんだ?」
ハリーである。中身は女性で、私と同じようにこの乙女ゲームに転生してきたのだ。しかし、このハリーは誰なのかがわからない。ハリーの中身の女性は、私が誰なのかを知っているみたいだけど。
「ヴィクトリアって、前世はバイクに乗っていたよね?」
「え? なんで知っているの?」
「ふふ、やっぱりね」
えっと、待てよ? どうしてハリーの中身の女性はそんなことがわかったのだろうか? 私には全くわからない。ハリー、この美少年の中身はいったい誰なの? 考えてみるけど私はちょっと疲れているため頭が働かない。うーん、本当にハリーって謎だわ。
続く




