まさかのマイケル
えっと、私には大切な人、マイケルがいるから断っただけなのに、なにこのどよめきは? あれ、サム王子が泣きそうな表情になっている? ボソボソと聞こえる言葉には、あれが悪役令嬢、というものが。うーん、ちょっと状況がまだわからないけど。うーん、どうしましょ?
「ヴィクトリア? どうしてサム王子の恋人にならないのかしら?」
え? お母様がそう言った。
「私は大切な人がいるので」
そう言ってみたら、今度はハリーがこう言う。
「つまり、ボクと手を組んでいるから、サム王子と恋人にならないんだよね?」
ちがいます。私は衛兵のマイケルのことを大切に思っているのよ? えっと、周りがざわざわとしている。どうしましょ? なんだか、ものすごい勘違いをされているような。でも、この思いは言えない。まさか、令嬢の私が衛兵のマイケルのことを大切に思っているだなんて。
「ヴィクトリア様、行きましょう」
「え?」
そうマイケルに言われて、私は手をつながれて歩き始める。え、えっと? マイケル? なにこの胸のときめきは? 私、大切な人と手をつないでいるの? 私は自分でもわかるくらいに顔が真っ赤になった。えー?! 嬉しいけど、みんなの前で手をつながれて歩くなんて!? 夢みたいです! マイケル、かたすぎる人だけど、意外と積極的なのね?
続く




